« 2007年7月 | トップページ | 2007年9月 »

2007年8月

摩天楼ブルース

喧嘩が原因で半年間の停職処分を食らった二等航海士のトミー(ジャン・マイケル・ヴィンセント)は、知人に安アパートを紹介してもらい、所在地であるニューヨークはロウアー・イーストサイドというスラム街に辿り着く。美容師のマーシャ(テレサ・サルダナ)に恋をし、住人たちと交流を深めながらも次の船が来るのを待つ。薄汚いが平和なこの街もエンジェル(ルディ・ラモス)率いるソウルというギャング団によって治安が悪化する。市民は、ソウルに対して不安を募らせ、警察も手を焼いている。ソウルの魔の手はトミーにも及び、友人までもが悲惨な目に遭う。ついに怒りを爆発させたトミーは、ソウルの卑劣な行為を阻むために戦いに挑む。

ジョン・フリン監督の地味なバイオレンス・アクション。ストーリーは日本の仁侠映画そのものであり、これは『組織』(73)、『ローリング・サンダー』(77)同様に監督の嗜好が本作でも活かされている。悪の行為に我慢を重ねた主人公が耐え切れなくなって懲らしめに向かうという理屈抜きの勧善懲悪モノは、娯楽アクション映画に適した題材である。そこに恋愛模様や友人たちとの温かさを感じさせるふれあいを存分に取り入れている。アクションやバイオレンスという肝心なポイントがやや控えめに描かれているため、恋愛や友情のイメージが強く感じられる。人間らしい優しさと非人道的な極悪行為を交互に描き善と悪のバランスを平行に保っている。

ジャン・マイケル・ヴィンセントは、本作でも一本気な好青年という印象を与える。彼の初主演作『爆笑トラック’76』(75)で演じたキャラクターとほぼ似通った部分があり、作品内容も日本の仁侠映画を意識しているという部分では同じだ。そんなヴィンセント扮するトミーとテレサ・サルダナ扮するマーシャとの恋愛描写は、実に純粋かつロマンティックに描かれており、女性なら共感を抱くこと間違いなしの微笑ましいシーンである。

ラストはトミーと仲間たちが一致団結してソウルに立ち向かい、恐れ慄いていた住人たちも彼らの勇気ある姿勢に感銘して協力する。そして一人一人の正義と勇気のパワーが実を結んで悪の退治に成功する。すこぶる気持ちの良い余韻が残り、スカッとするラストシーンだ。

東京JAP(現在も一線で活躍している赤坂泰彦がドラムを担当)の同名タイトルのヒット曲は、この作品に影響されたのかとつい思ってしまう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ミネソタ無頼

視力が衰えたミネソタ・クレイ(キャメロン・ミッチェル)は、無実の罪で投獄されていたが、それを知る保安官フォックス(ジョルジュ・リヴィエール)を探し出して無実であることを証明してもらうために脱獄。だが、フォックスこそクレイに濡れ衣を着せた挙句に愛妻を殺害した犯人であることを知る。クレイは失明寸前の状態でありながらもフォックスとその腹心に復讐するべく単独で決闘に挑む。

やはり見所は終盤で観られる暗闇での決闘シーンである。視力が悪すぎるクレイはフォックスの腹心を夜の街に誘い出し、足音と銃の引き金を引く音を唯一の頼りにしてご自慢のガン裁きで敵を蹴散らす。緊張感を巧く持続させたスリリングな描写は、観る者をドキドキハラハラさせる。

暗闇の決闘の後はクレイとフォックスがサシで対決する。クレイの目は盲目寸前となり、見るからに弱々しさと痛々しさを同時に感じる。クレイを最強のスーパー・ヒーローのように描いていない点は、『真昼の決闘』(52)のゲイリー・クーパー扮する元保安官とほぼ似通っている。それでも見事なガン裁きや孤高の一匹狼ぶりからはアウトロー的な魅力が溢れるイイ男という感じで実にカッコいいと思える。主人公の強さと弱さをバランス良く均等に描けているのである。

マカロニ・ウエスタン版『座頭市』と呼ばれる本作は、セルジオ・コルブッチ監督が初めて手掛けたマカロニ・ウエスタン作品であり、彼はその後も『さすらいのガンマン』(66)や『殺しが静かにやって来る』(68)といった同ジャンルの傑作を世に送り出す。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

カザフスタン国営テレビの人気レポーターであるボラット(サシャ・バロン・コーエン)は、祖国の発展のためにアメリカ文化を学ぶという目的で渡米。市民に突撃取材する模様を度が過ぎたおバカなギャグ満載で描いた擬似ドキュメンタリー・コメディー。

下品かつ差別的なギャグが全編に盛り込まれている点が本作の最大の特色である。下ネタによる笑いを理解できない方や差別発言に対してひどく気を悪くする方は観ない方が良いだろう。本作のような異常なナンセンス・ギャグをおバカコメディーと割り切って存分に楽しめる方には良いと思うが、それでも過激な下ネタや差別系ギャグには引いてしまうだろう。

内容はとにかくおバカの限度を超えている。その中でも凄まじいのは中盤以降でボラットが宿泊先のホテルのテレビでドラマ『ベイウォッチ』を観て出演しているパメラ・アンダーソンに惚れ込み、本来の目的をすっぽかしてパメラに会いに向かい、サイン会で本人を襲撃するシーンやボラットの助手がパメラの写真集を見ながら自慰行為をし、それを目撃したボラットが怒り、二人が全裸で大乱闘(ホモ同士による性行為に見せかけた描写も一部あり。)を繰り広げるシーンといった感じでかなりやりすぎているのだ。おバカ加減を徹底追及して描いていることが何よりも凄すぎる。

本作はそんな過激すぎる内容が原因で日本での劇場公開が見送られそうになったが、何とか実現することが出来たのである。おバカコメディー映画ファンにとっては嬉しかったに違いはないだろう。私がファンを代表して配給会社の方々に「ありがとう」と心の底から感謝の気持ちを伝えたい限りだ。

今後も本作を超える過激な作品が公開されることを密かに期待している・・・・・・。

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(完全ノーカット版)髭&MANKINI水着付なりきりBOX (Amazon.co.jp仕様) DVD ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(完全ノーカット版)髭&MANKINI水着付なりきりBOX (Amazon.co.jp仕様)

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2007/12/21
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (1) | トラックバック (12)

« 2007年7月 | トップページ | 2007年9月 »