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2008年4月

THEM ゼム (正体不明 THEM ゼム)

02年にルーマニアで実際に起きた事件に基づいたサスペンス・スリラー作品。

02年10月7日、ルーマニアはブカレスト郊外。大自然に囲まれた平穏なこの町の屋敷で仲良く暮らすフランス人学校教師クレモンティーヌ(オリヴィア・ボナミー)と夫である作家リュカ(ミヒャエル・コーエン)がある夜、突然、正体不明の謎の集団に襲撃されるハメに・・・・・・。

襲ってくる相手が正体不明の連中ということが本作のミソである。実話を基にしているのでモンスターや幽霊ではないということは既に分かりきっているのでその正体とはいったいどんな奴らなのかということに興味を抱いて最後まで楽しみたい作品である。

舞台となるブカレスト郊外の大自然の景観は、殆どと言ってもいいほど曇った状態でジメジメした湿っぽさがスクリーンから伝わってくる。これだけでもかなり薄気味悪い。屋敷内で展開される襲撃と決死のサバイバル描写は、暗すぎる映像と音楽を抑えた演出で緊迫感を巧く醸成し、必要に応じて使用されるショッキングな効果音が恐怖感を煽り立てる。これらの演出は、まさにこの手の作品では定石通りとなっているが、しっかりと効果を発揮している上に面白く出来ているので素直に良いと言いたい。また、手持ちカメラによるカメラワークがスリルを感じさせ、画面のブレからも恐怖を感じさせると同時にリアリティーをも産み出している。

ラストでこの事件の結果を簡単に説明するテロップが流れる。意外な結果ではあるが、劇中で描かれたことが真実であることを観る者に納得させる。

上映時間が77分ということで観やすいという感じではあるが、多少寄り道をしてもたついている部分もあるのであっという間の77分とは言えないのが少々残念だ。それでも多忙を極めているホラー好きや寝る前にまだ時間があるのでちょっと刺激が欲しいという方にはオススメできる作品だと思う。

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阿修羅/ミラクル・カンフー

実際に両腕と両足が無いというサリドマイド児(アザラシ肢症とも言う)の二人の男が力を合わせて悪のボスと闘う姿を描いたトンデモナイ台湾製B級カルト・カンフーアクション。

カンフーの達人リー(シェン・サン・ツェン)は、悪党リン(リー・チュアン・ケン、この男がこれまた目の下がケロイド状で脊椎が港湾状態になっている!)の手によって両腕を切断されてしまう。一方、チャン(カン・チャオ・ミン)はリンの子分であったが、ある事をきっかけに彼の怒りを買ってしまい、両足に毒薬をかけられ、萎えさせられてしまう。ある日、リーとチャンは偶然に出会うが、元々二人は敵対関係ということでいがみ合うが、体が柔軟すぎる老人に説得され、二人はこの老人の下で拳法修業に精を出し、リンに復讐を挑む。

序盤では明らかに身体障害者差別と言ってもいいような酷いシーンが観られる。特にリーが定食屋で食事をする際、店員が鶏モモ焼きを食べさせようとするがおちょくってなかなか食べさせず、それを見ている客たちも馬鹿にしているかのように爆笑し、挙句の果てには店の用心棒にボコボコにさせられてしまう。このシーンは、リーと同じような人から観れば、かなりお気の毒であり、健常者から観ても良心が痛むことだろう。そして、空腹に堪えかねたリーは、犬餌である飯粒を食うが、犬に激しく吠えられたことで諦め、ついに豚小屋に侵入して豚餌を食う。実に過激な描写だ。また、リーとチャンの修業シーンも興味深いが、これも人によっては身体障害者虐待とも思えるだろう。

酷いシーンばかりが取り沙汰される作品ではあるが、リーとチャンが協力して驚くほどの凄いカンフーで敵をビシバシと蹴散らすシーンは、胸のすくような面白さを感じさせられる。特にリーが屈辱的な目にさらされた定食屋の店員と用心棒を二人でボコボコにするシーンは、実に気持ちが良く、爽快感すら覚えてしまう。ラストでリーとチャンがリンと壮絶な激闘を繰り広げるが、このシーンで観られる二人の合体技が最大の見所となり、これがまた面白いのである。

本作は、81年に松田優作主演作『ヨコハマBJブルース』の併映として公開された。88年には、にっかつ(現・日活)よりビデオがリリースされた。だが、このビデオは既に廃盤であり、なおかつ入手困難でもある。国内のネットオークションではかなりの高値で取引されるかなりレアな商品である。そして、本作は今となっては伝説的な珍作として多くの人々に語り継がれている。本国では二本の続編とTVドラマ版も製作され、DVDに関しても全三作がしっかりとリリースされている。日本でのDVD化は今のところかなり厳しそうだ。どうしてもDVDで観たいという方は、輸入版を取り寄せるしかないだろう。

日本公開時のキャッチコピー「やればできる!」は確かに言えているが、そんなことよりも作品の問題性や話題性ばかりに注目したくなる。

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マッドボンバー

愛娘をドラッグで亡くし、妻と離婚した男(チャック・コナーズ)は、社会全体を恨んで自作の時限爆弾で学校等を爆破させた。ある夜、彼が病院を爆破させるために忍び込んだが、聾唖の女性患者をレイプしていた暴行魔に二度目撃される。事件担当の警部(ヴィンセント・エドワーズ)は、二人の犯人を容赦なく追い詰める。

爆弾魔、暴行魔、警部の三人の行動を描くが、中でも主役の爆弾魔が強烈なインパクトを残す。道端でゴミを捨てた男に厳しく注意し、スーパーのレジ係の女や喫茶店のウェイトレスに対しても容赦なくクレームを突きつける。彼の行為は正当的ではあるが、かなり厄介なクレーマーという感じである。社会に疎外された男の描き方としては相応しいキャラクター描写であり、メガネ面で神経質そうな表情でこの役柄を演じたチャック・コナーズも見事だ。特に彼が自宅で爆弾を製造する姿を観れば孤独感と病的な感じがじっくりと伝わってくる。暴行魔の異常な性癖や警部のやや荒っぽい捜査方法も印象的であり、とにかく三者のキャラクターの設定と描写が良い。

監督は巨大生物をネタにしたB級パニック作品をお得意とするバート・I・ゴードンで彼にとっても本作はキャリアの中では異色と呼ばれている。観るからに低予算という感じで爆破シーンも良くも悪くもないごく普通の出来栄えだ。それでもサスペンス描写は魅せ方が巧く、先述した三人のキャラクターの描写も巧いのでこれが観る者を作品の世界にグイグイと惹きつけるのである。爆破アクションや復讐系バイオレンスとして楽しむことも良いが、サスペンスの味わいを堪能したい作品だ。

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片腕ドラゴン

香港のカンフーアクション映画スターであるジミー・ウォングが監督、脚本、主演の一人二役をこなしたカルト的人気を誇る傑作。

師匠を殺され、右腕を切断された男ティンロン(ジミー・ウォング)が左手を岩をも砕く鋼鉄のように鍛え上げて復讐に挑む姿を描く。

とにかくカンフーアクションの見せ場が多く散りばめられている。その内容は漫画チックで荒唐無稽ではあるが、観る者を飽きさせず、細かいことを考えずに楽しむことができる。

また、敵のボスが世界の武道の強豪を雇うが、そのメンツが個性的に描かれていて面白い。日本の沖縄武術の達人に柔道家、インドのヨガマスター、気功使いのラマ僧コンビ、タイのムエタイコンビがカンフーに挑み、異種格闘技戦の面白さを味わえる。これだけは格闘技ファンにはオススメしたくなる。特にインドのヨガマスターの珍妙な攻撃はまさにユニークであり、一度観れば忘れられないほどの強いインパクトを与える。沖縄武術の達人とラマ僧コンビの相性の悪さも印象的だ。

テーマソングにあの『黒いジャガー』(71)のテーマソングがそのまま使用されていることにも驚愕させられる。しかも劇中でも頻繁に使用されている。これが無断使用ということもファンの間ではよく知られていることだ。

三年後には正式な続編『片腕カンフー対空とぶギロチン』(75)が製作され、両作ともクエンティン・タランティーノ監督に大きな影響を与えたことは有名な話である。

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怪奇!!幽霊スナック殴り込み!

浅草のスナックのオーナーであるユキ(タナダユキ)の夫(みうらじゅん)は、新宿の暴力団関係者を殺害したため刑務所に服役している。所内で夫が関係者からの報復を避けるべく司法当局と取引をしたユキは、ある暴力団に接近したことによってピンチに陥る。そこへ所内で夫と同房だった着流し姿の侠客(島口哲朗)が現れ、ユキを救うために立ち上がる。さらには幽霊三人組まで登場し、凄まじい戦いが繰り広げられることとなる。

杉作J太郎率いる男の墓場プロダクションによる製作第二弾作品。第一弾『任侠秘録人間狩り』(06)同様に杉作監督の人脈を活かせた濃厚なキャストがかなり異色で面白い。主演は、『タカダワタル的』(03)、『百万円と苦虫女』(08)の女流映画監督のタナダユキ。脇を固めるのはリリー・フランキー、みうらじゅん、横山剣(クレイジーケンバンド)、山田五郎、大槻ケンヂ、フィッシュロックを確立させた森田釣竿船長率いる漁港、内藤研(東映のB級作品で活躍した内藤誠監督の実子)、ハリウッド映画『キル・ビル』(03)で出演兼殺陣指導担当の島口哲朗(剣伎衆かむゐ)といったいかにもサブカルチャーを匂わせるようなクセのあるメンツが大集合。中でも田原章雄(日頃は女性向け週刊誌の編集を担当されている)扮するヤクザは、イカツすぎる風貌と威勢の良いセリフ回しでかなり印象的だ。また、監督もチョイ役で出演し、本人役で登場する横山剣との絡みは実に面白く、笑わせてくれること間違いなしでこれも最大の見所だと言える。

映像は観るからに最近のTVの深夜ドラマのような感じで出来栄えはいかにも低予算の自主製作作品ではあるが、魅せるところはしっかりと魅せつけ、観る者を楽しませるための工夫が施されている点は実に良く、従来の娯楽映画の面白さをしっかりと追求していることを実感させてくれる。任侠ヤクザアクションとホラーを組み合わせ、なおかつコメディーのテイストを取り入れた内容は実に気楽であり、78分という短めの上映時間もこの手の作品に相応しい。とにかく暇つぶしには持って来いの作品である。

オープニングとエンディングに流れるクレイジーケンバンド歌唱の「まっぴらロック」と劇中に登場するふんどし一丁で「レロレロ~」とつぶやく幽霊が忘れられない・・・・・・。

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ヴェラクルス

革命の真っ只中のメキシコにやって来た元南軍兵士トレイン(ゲイリー・クーパー)は、エリン(バート・ランカスター)というアウトローと知り合い、行動を共にする。やがて、二人はメキシコ軍に雇われ、伯爵夫人をヴェラクルスの港まで送るための護衛を引き受ける。しかし、夫人が乗車する馬車には高額な金貨が隠されていることを知ったエリンたちは、金貨強奪を画策する。

ゲイリー・クーパーとバート・ランカスターという二大スターがW主演を務めた本作は、二人の対照的な演技による競演が見所だ。渋味を漂わせた控えめながらもやるときはしっかりとやるクーパーと白い歯を剥き出しにした笑顔が時折怪しげでフットワークの軽やかさを魅せつけるランカスターという具合に静と動をはっきりとさせた人物描写が面白い。特筆すべきポイントは、ランカスターがクーパーを喰ってしまったと言っても過言ではないほど美味しい所を持っていってしまったことだ。西部劇ならではのガン裁きは二人とも決まっているが、ランカスターの背面撃ちの方が遥かに印象的であったり、ラストシーンにおいてもクーパーに美味しい所を持たせながらも結局はランカスターがそれ以上にいい所を持っていってしまったりという具合だ。

男性向け娯楽アクション作品を得意とするロバート・アルドリッチ監督の演出はダイナミックなタッチで見せ場となるアクションシーンも勢いと迫力を存分に感じさせ、その出来栄えは実に上出来だと言える。

他にも後に大スターとなるチャールズ・ブロンソン(チャールズ・ブチンスキー名義で出演)やアーネスト・ボーグナインも端役で出演しており、ド派手な活躍はしていないが目を凝らして注目していただきたい。

本作は後のイタリア製西部劇すなわちマカロニ・ウエスタンの予兆を感じさせるような作風だ。『夕陽のガンマン』(65)は本作の影響を大きく受けていると言われている。また、高倉健の『網走番外地/望郷篇』(65)も本作の影響を軽く受けているようだ。

ヴェラクルス DVD ヴェラクルス

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