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2009年3月30日 (月)

トワイライト~初恋~

若い女性を中心に世界中でベストセラーとなったステファニー・メイヤー原作の小説三部作の第一作目「トワイライト」をキャサリン・ハードウィックが映像化。

アリゾナに越してきた17歳の女子高生べラ(クリスティン・スチュワート)は、同級生の色白でミステリアスな雰囲気を漂わせる美少年エドワード(ロバート・パティソン)に出会い、好意を寄せる。だが、彼の正体は人間とともに生活できるように訓練された特殊なヴァンパイアであった。あることをきっかけに彼に助けられたべラは、彼が凄まじいパワーを発揮するできることを目撃し、その正体を探り出そうと接近するが・・・・・・。

高校生の学園生活を描く青春ドラマ、少し風変わりでおとなしい女子高生と美少年系ヴァンパイアとの禁断の恋愛ドラマ、ファンタジーといった三つのテイストが味わえる。

今までにヴァンパイアをネタにした作品は数多く作られてきた。そのほとんどがホラー作品だったり『ブレイド』シリーズや『アンダーワールド』シリーズのようなヒーロー系アクション作品であったが、本作は普通の女子高生とヴァンパイアの悲壮感を漂わる恋愛模様を中心に描いたものである。かつてのヴァンパイア作品と違う点は、まずはヴァンパイアたちの見た目がごく普通の人間と同じであることだ。次は、ヴァンパイアならではの人間の首を噛みついて吸血するシーンは観られるものの流血を強調したり牙を向いたりコウモリに変身したりといった定石通りの描き方がされていないことだ。とにかく本作は、ヴァンパイア作品としては新味なのである。ヴァンパイアが超能力を発揮させたり、仲間内で草野球をしたりといったユニークな描写も印象深くて面白いポイントだと言える。

ラストでは、エドワードと敵対するヴァンパイア一族の一人とのバトルを描いたアクションシーンが用意されており、大きな見所の一つとなっている。このバトルでは、二人のヴァンパイアは武器等を一切使用せず、超能力によるパワーだけで戦う。なかなか迫力を発揮させており、ファンタジーの要素を持った作風にマッチした描き方となっている。その上、面白さも十分に味わえるので良い。

既に続編の製作も決定しており、今後の展開が気掛かりとなる。

【70点】

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2009年3月28日 (土)

ザ・バンク 堕ちた巨像

ドイツはベルリンに存在する国際的な大銀行IBBC。経営破綻したこの銀行にはマネーロンダリング、武器密輸といった違法取引の疑いがある。インターポール捜査官サリンジャー(クライヴ・オーウェン)と検事補ホイットマン(ナオミ・ワッツ)が共同で捜査に乗り出し、ベルリン、リヨン、ミラノ、ニューヨーク、イスタンブールへと次々と国境を越えて追跡していく。だが、証人は次々と殺害され、証拠も消されてしまう。

エリック・ワレン・シンガーが1991年に破綻したBCCI銀行のスキャンダルにインスパイアされて脚本を書いた。この緻密な脚本によって描かれたサスペンス描写は、硬質で骨太な感じが強く、かなり渋いイメージだ。さらに、リアリティーを追求したことによって重厚な風格を漂わせる。また、刑事映画としてもまとまっており、なかなか面白く仕上がっている。中でもある事件現場のホテル屋上で発見された犯人の足跡から義足の方番が割り出されるシーンは、かなり印象的だ。このスリリングな描写は、観る者をハラハラさせると同時に大きな衝撃を与えてくれる。

本作はアクション映画としての一面も持っており、中盤以降に大掛かりな見せ場が用意されている。それは、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の館内で入場客を巻き添えにしてのデンジャラスな大銃撃戦だ。サリンジャーが握るマシンガン、義足の暗殺者コンサルタント(ブライアン・F・オバーン)の命を狙うべく続々と現れるヒットマンの銃が弾丸をこれでもかと言わんばかりに炸裂させ、ガンガンと銃声を唸りまくらせる。戦場と化した館内はメチャクチャになってしまう。ダイナミックに描かれたこのシーンはまさに壮絶的であり、最高の面白さを味わえること間違いなしだと言い切れる。クライヴが『シューテムアップ』(07)に続いて凄まじいガンアクションを魅せつけてくれたのである。

ラストは、サリンジャーが自身の正義感で法の枠を超えた戦いに単独で挑む。彼の人間としての、捜査官としての魅力がラストスパートに向けて一気に燃え上がる。その姿は、無精ヒゲが引き立てる男臭い風貌と相俟って非常に男らしくてカッコいい。

【70点】

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2009年3月27日 (金)

いとしい人

オスカー女優へレン・ハントの記念すべき監督デビュー作であり、主演、脚本、製作の四役を務めた意欲作。

39歳の小学校教師エイプリル(ヘレン・ハント)は、年下の同僚ベン(マシュー・ブロデリック)と結婚してから10ヶ月目に突入。早く出産したいと思っているエイプリルは、ベンから突然の離婚を申しだされてしまう。さらに、その翌日に養母が他界し、人気TVタレントのバーニス(ベット・ミドラー)が実母だと名乗ってエイプリルの前に現れる。

結婚、離婚、恋愛、仕事、妊娠、出産といった女性が生きていく上での問題をテーマにした中年女性のラブロマンスをほのかなコメディーテイストを取り入れて描いている。

様々な問題による悩み多き中年女性エイプリルをヘレン・ハントが等身大で演じる。大人になりきれない元夫ベン、騒々しい実母バーニス、そして新しい彼氏となるエイプリルの生徒の父親で作家のフランクリン(コリン・ファース)といった三人がエイプリルに絡み、彼女を複雑な思いにさせたり、時には良い思いをさせたりする。

エイプリルを含めた四人の主要キャストの中でもベット・ミラー扮するバーニスの存在が一番大きく、本作の特色であるコメディーテイストの面白さをしっかりと昇華させている名キャラクターである。彼女が名優スティーブ・マックイーンが夫でエイプリルの実父と言うシーンは、「絶対ない」とわかっていても興味をそそられてしまい、強く印象に残る。

本作はシリアスな一面が描かれており、そのイメージが強いがためにコメディーテイストを取り入れてもその要素がやや弱く感じてしまい、思い切って笑えない。エイプリルという崖っぷち女の苦悩はリアルに描かれ、この描写の方が強く印象に残ってしまう。彼女が幸せを求めて一歩前進しようとする前向きな姿勢が描かれ、これが現代の悩み多き女性に対するヒント、メッセージとして用意されている点は好意的でポイントは大きいと言える。

【65点】

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2009年3月23日 (月)

フロスト×ニクソン

ウォーターゲート事件が原因で自ら大統領を辞任したリチャード・ニクソンをコメディアン出身のイギリス人司会者デヴィッド・フロストがTV番組でインタビューし、事件の真実を探り出す。

全米中が大注目した伝説的なTVインタビューとその舞台裏を中心に描いたロン・ハワード監督作品。

本作のオリジナルは舞台劇。フロスト役のマイケル・シーン、ニクソン役のフランク・ランジェラ、脚本のピーター・モーガンは舞台版と同じなのである。

見所はやはり二人のトークバトルであり、これはまさにインタビューという名の格闘技なのである。全米進出を狙う野心的な挑戦者フロストと世間から汚職政治家のレッテルを貼られた悪役ファイターのニクソン。両者の言葉と意地がぶつかり合う二時間四本勝負の激闘は緊張感が漂い、観る者をグイグイと惹きつかせる。一日目の二時間でフロストはニクソンの“口撃”に丸め込まれ、何も言わせてくれないというピンチ状態に立たされる。二日目、三日目が過ぎ、最終ラウンドの四日目。フロストが強敵ニクソンを倒すべく一番聞き出したいウォーターゲート事件に関する質問を全力を尽くして喰らわせる。試合終了後、熱いバトルを繰り広げた二人のファイターはお互いを認め、讃えあう。

今日のプロレス、K-1、総合格闘技、プロボクシングがショー的要素が強く思えることと同じように本作で描かれている二人のトークバトルは、ニュース・報道番組をショーと化させているのである。とにかくスポーツの格闘技と同じ匂いが漂い、これが最大の醍醐味だと言えるのである。

格闘技さながらの面白さも良いが、サスペンスタッチのドラマ描写、ほのかなコメディーテイストといった面白さも十分に味わえるのである。

【75点】

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2009年3月21日 (土)

『映画秘宝』5月号に寄稿

本日発売の『映画秘宝』5月号(洋泉社)に先日、当サイトにて紹介した『カブキマン』のコラムを書きました。

私が大学一年の頃に『映画秘宝』を初めて知り、他の映画雑誌にない独特の内容にハマり、現在に至るまでこの雑誌の大ファンなのです。人から「好きな映画雑誌は何?」と質問されると迷わず「『映画秘宝』!!」と口にするほどです。

そんな『映画秘宝』に執筆ができるとは、夢にも思っておりませんでした。とにかく嬉しくてたまりません!!超最高です!!

ということで『映画秘宝』5月号、宜しくお願い致します!!私が書いた『カブキマン』ネタ、興味のある方は、是非ともお読み下さいませ!!

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2009年3月19日 (木)

カブキマン

『悪魔の毒々モンスター』シリーズでお馴染みのトロマ社と日本のTVゲームメーカーで有名なナムコと配給会社ギャガが生み出した国辱系おバカ映画。

日本人一家殺害事件の捜査をしていたニューヨーク市警刑事ハリー(リック・ジアナシー)がある事件をきっかけに“カブキパワー”なるものを授けられてしまい、これが原因でカブキマンというヒーローに変身する能力を身につける。大企業のオーナーで慈善家のレジナルドに化けたイーブルワンを退治するべくカブキマンが立ち上がる。

本作の面白さといえば、やはりおバカと娯楽性に徹したシーンであり、その中でもヘンテコな日本ネタであると断言できる。

まずは、冒頭でアメプロのヒール系レスラーばりのペインティングをした宍戸錠という感じのカブキ一座の座長サトウがカブキパワーを後継者に授けるための準備としてミミズ数匹を手づかみでムシャムシャと食すという悪趣味全開のグロテスクシーンが観られる。上映開始直後にこのようなトンデモナイものを披露してくれる時点で本作はタダモノではない作品であることが確信できる。

次はカブキだ。サトウの後継者となるイチローとその家族は殺害され、後継者欠場のままで予定通りに公演が開始される。ここで面白いのは、その公演のタイトルでその名は“カブキカップル”。「何じゃそりゃ?!」という感じのベタでありながらも不思議なこのネーミングは忘れられないほどの強烈なインパクトを与えてくれる。その内容が興味深いポイントとなる。いざ観ると白塗りの外人による学芸会かコントのような感じでどうみても歌舞伎には見えない。上演中に白塗り連中に紛れ込んだ敵の腹心がマシンガンを大乱射し、サトウは撃たれてしまう。たまたまこれを鑑賞していたハリーがこれを阻止しようと立ち上がって応戦する。そこで死ぬ寸前のサトウとハリーがパニックに便乗させられたかの如くディープキスをしてしまう。なんと、このキスがカブキパワーの伝授だった。これによってハリーはカブキマンに変身してしまったのである。このキスといい、カブキカップルの内容よりも突如勃発した大乱射の方が観客のウケが良い(場内大爆笑!!)という描写が面白すぎるのである。

歌舞伎役者とは程遠く、『デビルマン』か『オレたちひょうきん族』のブラックデビルに近いとも思えるビジュアルのカブキマン。彼が繰り出す必殺技がこれまたベタなのである。日本刀で斬る、宙に浮いた下駄が炸裂、強風を吹かせる大扇子、殺傷能力抜群の無数の割り箸、睡眠作用を発揮する巻き寿司、縄のように縛りつけるソーメンという具合に武器は必ず日本のイメージを強調するアイテムなのである。この小道具の使い方は、面白さを発揮させることに成功しており、凄まじい印象を残す。

全編にヘンテコでバカバカしい珍味が観られ、その面白さが十分に味わえる。カブキマンが途中で変身ミスをしてピエロマンになってしまうという大脱線ぶり。このシーンで観られるカーチェイスとカークラッシュがヘナチョコであるものの車の大爆破だけはアクション映画らしい迫力を存分に発揮した出来栄え。真のカブキマンになるべく修行をするが、まずは逆立ちをしながら米粒を並べるというもの。その米粒が黄色や茶色という観たことも食べたこともないようのなのである。他にも生魚を背中の部分から丸かじり、ハリーとサトウの孫娘ロータスの異常なほど激しく燃え上がるセックス(散々ハリーの顔面を殴ったり股間付近を木刀で叩いたりといったS女ぶりを発揮していたロータスもベッドでは意外と大人しいというギャップも笑える)、敵ボスであるレジナルドのオフィスの一室に徳川家康が持っていたという刀が置いてあり、これが家康死後の1638年に製造されたという日本史の学習不足といったぶっ飛びメニューが観られ、とにかくクレイジーパワーが遺憾なく発揮されている。結果的には、これらの内容がしっかりと面白さを味わえるものに仕上がっているので良いと言える。

ラストは、ロータスがレジナルド一味に拉致され、ハリーがカブキマンとなって彼女を救出するべくレジナルドに挑む。レジナルドは悪霊イーブルワンに変身するが、このモンスターがとにかくグロテスクなビジュアルなのである。イーブルワンの破壊力、攻撃、カブキマンとのバトルといったポイントが気になるのだが、イーブルワンのいい所と言えば、変身のみであとは簡単にやられてしまって終わりなのである。このバトルをしっかりと描けなかったことが大きなマイナスポイントとなるが、ツッコミたくなるような面白さを追求したい方にとっては、これもありだと捉えることができるだろう。

とにかく最初から最後までバカでヘンテコでクレイジーな面白さが味わえる珍品なのである。エロ、グロ、ナンセンスの三拍子が揃い、アクションの面白さも取り入れた娯楽性に徹した作り方は大いに評価したい。

それにしても製作に日本が携わっているにも関わらずここまで日本のイメージをハチャメチャにしているということは、これを逆手にとってウケを狙ったのかも知れない。

【60点】

Photo

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2009年3月12日 (木)

ザ・テイク わいろ (ダーティ・コップ 麻薬マーケットに挑むあぶない刑事)

わいろを受け取っていたダーティーな黒人刑事の活躍を描いたサスペンス系ポリス・アクション作品。

ニューメキシコに派遣されたサンフランシスコのスゴ腕刑事スニード(ビリー・ディー・ウィリアムス)は、麻薬すら扱って土地を牛耳るボスのマッソー(ヴィック・モロー)からわいろを受け取りながらも彼を追跡し、自身に着せられた濡れ衣を晴らすべく奮闘する。

『ダーティハリー』の影響で量産されたポリス・アクションと当時のもう一つのブームであったブラックスプロイテーションが合体。主人公スニードは本家『ダーティハリー』の一枚上手のアウトロー刑事。演じるのは後に『スター・ウォーズ』の続編二作でランド・カルシリアン伯爵を演じるビリー・ディー・ウィリアムス。

監督はロバート・ハートフォード=デイヴィスであり、ジム・ブラウン主演の『スーパー・ガン』(ビデオ邦題『ブラック・ガン』)に続いて再び男臭い風貌の黒人役者を主役に迎えた暑苦しいアクションを魅せつけた。

オープニングクレジットが終わった直後に第一の見せ場が用意される。これがスピーディーに描かれたダイナミックなアクションとして仕上がっている。中盤を過ぎたあたりで第二の見せ場が用意され、第一の見せ場を上回る面白さが堪能できる。この二つのアクション演出は定石通りで新味がないものの悪くはない出来栄えであるため、そこそこ良い評価を与えられる。

問題はわかりにくいポイントが多々あることだ。中でもスニード刑事のキャラクター描写だ。収賄という汚名を返上するべく活躍しているが、そういった説明が不足しているがためにそのまま悪徳刑事のように描かれているのである。デイヴィス監督、レル・ライズマンとフランクリン・コーエンの脚本に大きな瑕疵があると言える。

【40点】

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2009年3月11日 (水)

PVC-1 余命85分 (85ミニッツ PVC-1 余命85分)

2000年にコロンビアで起こった“ネックレス爆弾事件”をモチーフにしたサスペンス・スリラー作品。世界中が注目している新鋭スピロス・スタソロプロスが監督、脚本、撮影の三役をこなし、長編デビューを飾った。

舞台はコロンビアのクンディナマルカ県郊外。四男一女の武装犯行グループが農園と養鶏場を経営し、平穏な生活を送っているバルデス一家を襲撃。犯行グループは家族全員を拘束し、銃で脅しながら1500ペソという大金を要求する。一家の長であるシモンとその妻オフェリアは金がないことを強く訴えかけるが、犯人たちは聞く耳を持たず、オフェリアの首にコルセット型の時限爆弾を装着して姿を消してしまう。

本作の最大の特徴は、たったの1カットだけで撮影されたということだ。85分の上映時間に一度もカットが入らず、まるまる長回しで撮られていることに驚愕させられる。こうしたことによって劇中で描かれる恐怖、緊迫を観る者がリアルに体験できるのである。

その上にBGMや効果音も一切使用されず、静寂なタッチで描かれる。時折、コルセット型時限爆弾から鳴り響く不気味な金属音が観る者をふと驚かせる唯一の効果音であり、劇中ではオフェリアを脅かして精神面を徹底的に追い詰める。

見所は、簡単にはずすことができない爆弾を国家警察のハイロ中尉が解体するシーンであり、中盤以降はこのシーンに重点が置かれている。現場には十分な解体道具等が一切なく、たった一本のナイフをロウソクの火であぶって爆弾に切り込む。本作の売りモノである緊迫感が遺憾なく発揮されたシーンは、観る者に「解体が成功するか否か」を気掛かりにさせ、釘付けにさせる。

衝撃が待ち受けるラストシーンは、コロンビアがいかに恐ろしくて治安が悪い国であることを物語っていると捉えることができる。

コロンビア映画そのものが珍しいが、作品そのものもかなりの珍品だ。それにしても85分を1カット撮りというのは、かなり大変だったことだろう。少しのミスによってすべて一からのやり直しになるというリスクを背負いながらもしっかりと成功させたスタソロプロス監督の労をねぎらいたい。

【70点】

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2009年3月 2日 (月)

北国の帝王

アメリカ全土が大不況の真っ只中の1933年。失業者は浮浪者と化し、ホーボーと称されて社会ののけ者にされていた。彼らは列車のタダ乗りをして全土を移動していた。だが、彼らは19号列車だけは乗らないようにしていた。なぜなら、そこの車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)は無賃乗車は絶対に許さず、見つけるとすぐにハンマーで殴り殺すという冷酷極まりない男だからである。ホーボーの中に“北国の帝王”と称されるAナンバーワン(リー・マーヴィン)がこの列車のタダ乗りに真っ向から挑戦する。

男性向け映画の巨匠ロバート・アルドリッチとリー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナインという男臭くて武骨な二大スターによる骨太な娯楽アクション映画の傑作だ。

見所はやはりAナンバーワンとシャックの激突だ。はじめのうちは二人の闘いも大した描き方はされないが、ストーリーが進展するにつれて除々にヒートアップし、クライマックスで決死のバトルが繰り広げられる。Aナンバーワンが材木と斧、シャックがハンマーとチェーンという具合に両者が武器を駆使して意地をぶつけ合って闘う姿に目を見張らされ、ハラハラドキドキさせてくれる。この初老のオヤジのバトルをここまでエキサイティングに描いた点は、今観ても珍しく思える。面白く仕上がった点は、二人の役者に男臭さという魅力とインパクトが強い存在感があるからこそだと言っても良いだろう。

男同士の対決をメインに描く一方でAナンバーワンと生意気な若者シガレット(キース・キャラダイン)の友情めいた描写も観られ、これがまた男性向け映画に相応しい。元々は仲が悪かった二人。シガレットは持ち前の達者な口調と若者ならではの生意気さが印象的だ。自分こそが19号列車を制覇し、ナンバーワンになるとほざいてAナンバーワンと共に行動する。この模様をロードムービー風に描いている。そんなシガレットもいざというときにはほとんど何もできず、本当に口だけの男なのである。最終的には、Aナンバーワンから現実を見させるべく目を覚まさせてやるという感じで列車から放り落とされてしまう。劇中では役立たずだったシガレットは、映画を面白くさせるためには結構役立ったのである。

ちなみに本作は、元々はサム・ペキンパーが企画していたが、プロデューサーとのいざこざが原因で降板してしまったのである。ペキンパーが撮っていれば、ラストの見せ場は強烈なバイオレンスを徹底的に追求した凄まじい仕上がりになっていただろう。

【80点】

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