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2009年7月30日 (木)

ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式

ハウエルズ家のお葬式で繰り広げられるドタバタ騒動を『スターウォーズ』シリーズの人気キャラヨーダの声でお馴染みのフランク・オズがブラックユーモアいっぱいに描き、さらにハートフルな温かさを取り入れた傑作コメディー。

冒頭にてハウエルズ家の父の遺体が他人と間違われて送られてくる。この時点で軽く笑わせてくれる。

その後、主人公であるハウエルズ家の長男ダニエル(マシュー・マクファディン)の従妹マーサ(デイジー・ドノヴァン)と弁護士をしている真面目な婚約者サイモン(アラン・テュディック)がマーサの弟トロイ(クリス・マーシャル)を迎えに行く。トロイは薬学部の学生であるが、実はドラッグ製造に励んでいる悪いヤツでこの日も友人に売るためのドラッグを準備していた。マーサは緊張しているサイモンにドラッグを安定剤と間違えて飲ませてしまったのである。これがハウエルズ家のお葬式をハチャメチャにしてしまう原因となってしまう。個人的には、このドラッグの存在は、本作を面白くさせるための活性剤だと言いたい。とにかくラリってしまったサイモンが面白さを存分に盛り上げてくれる。しかも思う存分に笑わせてくれるのである。サイモンの活躍ぶりは注目すべき最大のポイントであり、これだけでも見る価値は大きい。

続いて笑わせてくれるのは、ダニエルの友人である汗かきの心配性ハワード(アンディ・ナイマン)と強気で常に不機嫌な車椅子に乗ったアルフィー叔父貴(ピーター・ヴォーン)だ。この二人による汚くて下品なやりとりがおバカコメディーとしての面白さを一段と弾き出す。強烈なインパクトを与えてくれること間違いなしだ。

他にもダニエルと弟で人気作家のロバート(ルパート・グレイヴス)による兄弟口論や謎の参列者である小人男ピーター(ピーター・ディンクレイジ)を巡ってダニエル、ロバート、ハワード、トロイが繰り広げるドタバタも印象深い。

本作は、笑いを満喫させるべくストーリーを簡素化させたことと登場人物を個性豊かなキャラクターとして設定した上に複雑さを感じさせないようにしたことが功を奏でたのである。

それにしても本作で描かれるお葬式は“ちょっとおかしな”どころではない。“かなりおかしすぎる”と言った方が妥当だ!!

【80点】

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2009年7月28日 (火)

コネクテッド

かなり面白かったハリウッド製サスペンス映画『セルラー』(04)を香港映画界がリメイクした。ちなみに香港映画がハリウッド作品をリメイクしたのは、本作が初めてとの事だ。監督は、娯楽アクション映画を多数手懸けているベニー・チャン。

ロボット設計士のグレイス(バービー・スー)は、6歳の一人娘ティンティンを学校に送り出した帰り道に謎の一味に車で追突され、そのまま拉致監禁されてしまう。グレイスは一味の隙を狙って粉砕された携帯電話の修復を試み、配線を接触させて何とか発信した。繋がった相手はアボン(ルイス・クー)という気が弱くて冴えない日々を送っている負け犬経理マン。グレイスのSOSをイタズラだと思っていたアボンは、あまりにも真剣に訴えていることから素直に聞き入れ、救出するべく孤軍奮闘することになる。

事件の巻き添えを喰らったアボンがこれをきっかけに負け犬からヒーローへと変貌していく姿が見所の一つである。メガネヅラのいかにも好青年という感じのヒーローとはかけ離れている容姿の彼は、一人息子ギットとの約束すらロクに守れず、会社では暴力団まがいの取立て業務を仕方なくやっているようなダメ男。そんな彼がカーチェイスをやらかしてみたり、電話会社で発砲騒動を引き起こして指名手配されてしまったりと奔走していく中で徐々に強い男へと成長していく。最終的には犯行グループに堂々と挑戦する勇者となっている。

香港映画ということでお馴染みのアクションシーンには全力が注がれている。ティンティンが犯行グループに拉致されてから開始するカーチェイスは、本作で描かれているアクションシーンの中では最大の見せ場であると同時に最大の売りモノである。クラッシュや横転はもちろん、アボンがハンドルを握る車が缶ジュースを積載したトラックに突っ込んで辺りが缶ジュースまみれになったりという具合に迫力満点でなおかつ観る者の脳裏に焼きつくような強烈な描写に仕上がっていて面白さを存分に堪能できる。他にも車が崖から落下、銃撃戦、香港映画らしい格闘シーン、残酷なバイオレンスが観られ、どれをとっても印象深い。

また、サスペンスとしても緊迫感がしっかりと醸成されており、事件が一件落着したかと思うと意外な展開を魅せつけてまだ終わっていないという一筋縄ではいかないストーリー運びに驚愕させられてしまったりというように観る者を思う存分楽しませてくれる。

オリジナルのストーリーを忠実に踏襲しながらも主人公アボンを子持ちにしたりと設定を少し変更したことによって最後には感動が味わえる後味の良い作品へと仕上がったのである。

オリジナル版にも引けを取らない最高傑作だと言いたい。

【80点】

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2009年7月25日 (土)

屋根裏のポムネンカ

女性を中心に可愛らしさと癒し効果のある作風で支持されているチェコ製アニメの待望の最新作が本作だ。

ボロい屋根裏に使われなくなった古いトランクがある。その中には様々なおもちゃが暮らしている。中でも人形のポムネンカは大の人気者。ある日、ポムネンカは悪の親分フラヴァに拉致されてしまう。彼女を救出するべく仲間たちが立ち上がり、屋根裏の果てに存在する悪の帝国へと乗り込む。

ポムネンカを取巻く仲間たちがユニークであり、キャラクターの個性がしっかりと描かれている。鼻が鉛筆で耳がボタンでできているシュブルト、眠気と食欲は人並みのクマのぬいぐるみのムハ、ドラゴン退治に熱中しているマリオネットのクラソン。この三キャラクターの活躍ぶりは、とても愉快であり、観る者を存分に楽しませてくれる。

登場するキャラクターは皆ガラクタで作られている。使い古しの用済みであるガラクタを使って面白いモノを作るというアイデアは素晴らしく、そこから「モノを大切にする心」や「リサイクルの重要さ」といったことが感じられる。監督のイジー・バルタは本作のために集めたガラクタを敢えて汚してみたという。その結果、アンティーク・コレクションのような味わい深さを一段と引き出すことに成功したのである。

映像表現にも拘りが感じられ、同趣向の作品と一線を画した作り方が面白いと言える。単なる人形アニメだけでなく2Dの線画アニメや生身の人間が登場する実写も取り入れられているのである。

その他の印象深いシーンと言えば、クローゼットから溢れ出すシーツでできた波を本物の水による波と同じように魅せたり、実写だったら間違いなく気持ち悪いと思える虫軍団がゾロゾロと壁を這い回るシーンだ。

【70点】

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2009年7月24日 (金)

ポー川のひかり

『木靴の樹』(78)で知られるエルマンノ・オルミ監督が劇映画最後の作品としてメガホンをとった作品。

イタリアのボローニャ大学。夏期休暇中で人気がない校内の歴史図書館にて大量の古文書が太い釘で打ち抜かれているのを守衛が発見する。容疑者として浮かび上がったのは、将来を嘱望された若き哲学科の主任教授(ラズ・デガン)だった。教授は前日の学年末の授業を最後に突然姿を消して車でポー川に辿り着き、川岸にある朽ちかけた小屋を発見してそこに住み着いた。やがて、教授はその風貌から村人たちに“キリストさん”と呼ばれ、交流を深めていくのであったが・・・・・・。

序盤での“古文書大量虐殺”をサスペンスタッチで描いてこの奇妙な事件を観る者に興味を抱かせ、作品の世界へと引き込ませる。その後は、メイン舞台となるポー川周辺の風景描写を鮮やかな美しさで魅せつけたり教授と村人たちとのダンスパーティーや語らいといった交流が好印象を与える。

本作はイエス・キリストの寓意を潜めた宗教色のある作品であるが、小難しいことを考えさせたりプロパガンダ要素を強く押し出してムキになったりしていないことが観易くて良い。サスペンス、芸術性、教授と村人たちの交流を堪能するだけでも十分だと言いたい。

【70点】

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2009年7月17日 (金)

湖のほとりで

北イタリアの小さな村のはずれにある湖のほとりで若くて美しい女アンナ(アレッシア・ピオヴァン)の遺体が発見される。この村の警察署に着任してきたばかりのベテラン警部サンツィオ(トニ・セルヴィッロ)が捜査を進めていくうちに住民たちの人間関係や家族の在り方が明らかとなっていく。

カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『息子の部屋』のナンニ・モレッティオ監督のもとで助監督を担当していたアンドレア・モライヨーリの長編デビュー作である本作は、本国イタリアでは小劇場での公開に始まり、口コミによって240館以上に拡大公開されて大ヒットした。挙句の果てにはイタリアのアカデミー賞と称されるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で史上最多の主要10部門を獲得するという快挙を成し遂げたのである。

刑事サスペンスと人間ドラマの二面性を持っており、どちらかと言えば人間ドラマに比重が置かれている。モライヨーリ監督は、落ち着いた静謐なタッチで登場人物たちが抱えている問題を浮き彫りにしていく。だが、魅せ方やストーリー運びが全体的に淡々とし過ぎているため、地味な小品というイメージのある作風がより一層地味なドラマとして仕上がった。それでも湖の周辺の鮮やかな風景描写は誠に秀逸であり、このようなシーンを多用していれば芸術映画として味わい深い作品に仕上がっていただろう。上映時間を95分にまとめて観易い作品にしたことが最大の救いだとも言える。

個人的には、TV刑事ドラマ『特捜最前線』の地味で盛り上がりに欠ける回のイタリア産と言いたい。

【65点】

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2009年7月13日 (月)

シェイマス

70年代を代表するアクションスター、バート・レイノルズが一匹狼の中年私立探偵をタフガイのイメージを存分に発揮させて演じたハードボイルド系サスペンスアクションの傑作。

パパスという男が妻とともに二人組の武装犯に焼殺された翌日、私立探偵マッコイ(バート・レイノルズ)のもとに大資本家ヒューム(ロン・ウェイアンド)から焼殺犯人とパパスの手元から奪われたダイアモンドの捜索を依頼される。マッコイは調査を進めていくうちに武器密輸に絡む巨大な陰謀が明らかになってくるのだが・・・・・・。

監督はバズ・キューリックでド派手な演出はないもののサスペンスと地味なアクションを織り交えてハードボイルド作品として仕上げた。見せ場のアクションシーンをもっと強化していれば見応えのあるアクション作品として仕上がっていたと思えるが、そこはレイノルズのキャラクターの活かし方で巧くカバーできていた。

見所は、やはりレイノルズの活躍ぶりだ。男臭いレイノルズが敵をボコボコに殴って蹴りを喰らわせる。また、中盤あたりで観られる見せ場では追っ手から逃れるために突っ走り、弾丸を避け、少し高さのある建物からジャンプしたりといった明朗快活ぶりが好印象であると同時に本作で描かれるアクションシーンの中ではかなりテンポが良くて面白さをしっかりと味わえる。終盤あたりではちょっとしたカーアクションも観られ、スピーディーなカーアクション映画に比べるとパワーダウンしているがなかなか面白く描かれているので良いと思える。

レイノルズがビリヤードの玉突き台を寝床にしていたり服を着たままで風呂に入っていたりという風変わりな一面が伺える点も面白可笑しくて印象深い。

【60点】

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2009年7月 5日 (日)

ノウイング

1959年、アメリカはマサチューセッツ州にある小学校で子供たちは創立記念日の式典で未来を予想した絵を描き、これをタイムカプセルの中に入れて校内の地面に埋め込んだ。五十年後の創立記念日にタイムカプセルが発掘され、宇宙物理学専門の大学教授ジョン(ニコラス・ケイジ)の息子ケレイブ(チャンドラー・カンタベリー)が絵画を持ち帰るが、これが絵ではなく、無数の数字が羅列された奇妙なメモだった。ジョンはこれに興味を示し、“299691101”という数字に目を留める。ネットで調べたところ、この数字は9・11世界同時多発テロの日付と2996人の犠牲者であることに気づき、記載されている他の数字を調べると、妻が死んだ原因であるホテル火災事件も浮上してきた。そして、これらの数字が過去の大惨事とこの先に起こる大惨事を予知するものだと気づくのだが・・・・・・。

アレックス・プロイヤス監督のディザスター超大作は、様々なジャンルの要素が取り入れられており、映像面でも凄まじい魅力を発揮させており、先が気になってやまないサスペンスタッチのストーリー展開で観る者をグイグイと引き込み、存分に楽しませてくれる。

見所は、やはり大掛かりな見せ場だ。まずは、飛行機の墜落シーンだ。斜めに傾いた大きな飛行機がスクリーンを突き破るかのような勢いで迫ってくる。観る者に体感させようとしている感じであり、この迫力に圧倒させられることは間違いなしだと言いたい。墜落後は大爆破!!火だるまになった乗客たちが続々と現れ、さらに驚愕させられる。その次は、地下鉄の電車事故シーンだ。電車が猛スピードで暴走し、構内の人々を飲み込むかの如く次々と引き殺してしまう。この二つの見せ場がパニックアクションとしての威力を最大限に発揮しており、大作映画らしい醍醐味を存分に味わえる。その一方で事故の恐ろしさ、悲惨さもしっかりと感じさせる。

ジョンとケレイブが50年前に数字のメモを書いたルシンダの娘ダイアナとアビーに面会し、太陽のフレアの影響による地球滅亡が直前に迫っている中でも四人で奔走する。ここで親が子に対する愛情を浮き彫りにさせた家族ドラマ的な面白さが観られる。最後には謎と謎が結びつき、さらにクライマックスに相応しい大掛かりなシーンとファンタジックな映像を魅せつけて幕を閉じる。

本作こそ夏休み映画の超大作に相応しい内容だ。

【85点】

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2009年7月 4日 (土)

レスラー

80年代に大活躍したプロレスラーのランディ“ザ・ラム”ロビンソン(ミッキー・ローク)は、今となってはスーパーの惣菜コーナーのバイトで食い繋ぎながらも週末の小規模インディー団体の興行で試合をしている落ち目の中年レスラー。ある日、試合後に心臓発作で倒れたランディは、入院先の病院の医師から「現役続行は危険」と宣告される。娘に嫌われ、愛するストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)にも振られてしまったランディは、再びリングに上がって闘うことを決意する。

80年代のセクシー系イケメン俳優ミッキー・ロークが本作で完全復活を成し遂げた。もともとはニコラス・ケイジ主演の予定であったが、ダーレン・アロノフスキー監督がミッキー主演案を押しまくって登板を実現させた。そのために製作費は削減され、小規模公開となったものの54の映画賞を受賞し、アカデミー主演男優賞にもノミネートされたりとミッキーの演技も高く評価され、大成功を収める結果となった。

プロレス映画である本作は、随所に試合場面を散りばめて娯楽性だけを全面に押し出した単純作ではない。プロレスの試合を描きつつもランディという一人の落ちぶれたレスラーにスポットを当てた人間ドラマが売り物なのである。

プロレス好きならとにかく試合シーンを楽しみたいに違いないだろう。本作で描かれる試合はキャメラが接近していることもあってTV中継以上の迫力が感じられ、面白く仕上がっている。中でもインディー団体ならではのハードコアデスマッチ戦はバイオレンス色が強く感じられ、痛々しさが存分に伝わってくるほど衝撃的な描写となっている。また、本物のレスラーも大挙出演しており、これまたプロレスファンを楽しませてくれる。

特筆すべきポイントは、アメリカンプロレス好きならニヤリとしてしまうシーンだ。ロッカールームにてレスラーたちが試合の打ち合わせをしており、これに関してはWWEファンやここのドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・マット』を観た方にとっては理解済みだと思うが、アメプロは予め用意されている筋書きによって試合が展開され、勝敗も決まっている。スポーツとしてのガチンコ勝負ではなく、ショー的要素を押し出したエンターテイメントスポーツとして理解されているため、“ヤラセ”や“八百長”と罵倒されることなく気楽に楽しまれている。そんな舞台裏をコミカルさを交えて描いている点は、実に面白い。

もう一つの面白いポイントといえば、ランディのキャラクターぶりがミッキーとダブってしまうことだ。80年代は恵まれたが90年代以降は落ち目、月収約六万円、家賃を滞納しながらのトレーラーハウス暮らし、惣菜店バイトという共通点があるのだ。ランディの「80年代最高、90年代最悪」というセリフは、とにかくインパクト大だ。

マリサ・トメイのストリッパーも注目度が高く、美熟女エロスを存分に堪能できる。だが、これが四十代という年齢を感じさせず、若々しく見えるのだから凄いとしか言いようがない。

本作は、久々の男泣き映画だ。とにかくミッキー・ロークの今後の活躍を期待したい。

【85点】

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