クラッシャーカズヨシ~怒る~
一般劇場公開はおろか、ソフト化すら不可能という絶滅危惧のブッ飛びインディーズ・カルト・特撮ヒーロー作品『クラッシャーカズヨシ』の完結篇。絶妙な音声模写と度が過ぎた下ネタで笑いを誘うものまね芸人レイパー佐藤こと佐藤文則が前作同様に監督、脚本、編集、撮影を担当。
今回は四章に分けられた構成。相変わらずのクエンティン・タランティーノ監督もブッ飛びのやり過ぎパロディー、オマージュ満載。TV特撮ヒーロー番組を意識した作り方でオリジナルCMやCM前のアイキャッチまで取り入れたまさに全四話のTVドラマスタイルだ。自主映画ならではの低予算の手作り感を魅せつけてくれる。『僕らのミライへ逆回転』のジャック・ブラックとモス・デフが製作する自主映画(『ラッシュアワー2』や『ライオンキング』等を手作りリメイク)を思わせてくれるのだ。中でもオリジナルCMは面白可笑しい。実在する病院や旅館、挙句の果てには本作のグッズ(フィギュアと栄養ドリンク)であったりと誠にユニークでクスッと笑わせてくれる。栄養ドリンクは、誰もが知っているような某ビタミンC炭酸飲料のビンに“クラッシャーC”という紙(しかも普通に手書き!!)を貼っているだけ!!このようなグッズCMこそ特撮番組の世界を感じさる。グッズに関しては、ドリンク以外の主題歌CDやフィギュア、缶バッジは存在した。しかも、上映会場で販売されていたのである。CDは、現在でもネット販売されている。自主映画でグッズまで出している作品と言えば、この『クラッシャーカズヨシ』と未公開の最低Z級映画『恐怖!キノコ男』ぐらいだろう。
前作も自主映画にしては豪華かつ異色のキャスティングであったが、今回もこの点はお変わりなしだ。主演の酒井一圭をはじめとする特撮ヒーロー番組出演役者を中心にエスパー伊東、電撃ネットワークから南部虎弾、ダンナ小柳、ギュウゾウの三人、ユリオカ超特Q、アントキの猪木といったお笑い勢、プロレスラーの飯伏幸太、河崎実監督、映画評論家の有村昆、「放送禁止映像大全」の著書で知られるUMA研究家の天野ミチヒロ、熟女AV女優の神田つばき、ミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシシェ)という具合に特撮、お笑い、サブカルが融合したキャスティングは、実に魅力的でこれだけでも面白く思える。ちなみに、第四章でエンディングテーマ「炎」が使用されているが、歌っているのは、アニソン界のカリスマ宮内タカユキである。これは、本格的だ!!
見所は、ちゃんこ屋我王の社長(酒井一圭)がクラッシャーカズヨシに変身して十三人の敵対するクラッシャーとの闘い。ただ、それだけ!!ユルい格闘アクション、戦隊モノのクライマックスで観られるような巨大ロボと巨大怪獣の決闘さながらのバトルを堪能すべきだ。今回は、CGを取り入れたことによって特撮らしさがパワーアップしたことが好ポイントの一つだと言える。バトルシーンで個人的に特筆したいポイントは、プロレスラー飯伏幸太と友井雄亮との公園での野外格闘技戦だ。このシーンでは、飯伏のレスラーらしさを存分に発揮させていることが素晴らく、ムーンサルトプレスをはじめとする技には感心させられた。格闘技アクション映画の面白さを感じさせる良いシーンではあるが、バトル終了後のレフェリー役の芸人インタレスティングタケシの噛んでいる上にグダグダ感たっぷりのセリフ(この芸人、滑舌の悪さをウリにしている)が観る者を脱力させ、笑わせてくれる。笑わせてくれると言っても、当然爆笑ではなく失笑だ!!
『クラッシャーカズヨシ』と言えば、特撮ヒーローのパロディーやオマージュが取り入れられているが、今回は他にも任侠ヤクザ(富司純子の東映『緋牡丹博徒』シリーズや江波杏子の大映『女賭博師』シリーズのような女壷振師モノ)、プロレス格闘技(アントキの猪木、飯伏幸太の活躍)の要素や『絶叫計画』シリーズ風コメディ(『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップ扮するジャック・スパロウや『北の国から』の田中邦衛、『冬のソナタ』のぺ・ヨンジュン)の要素も取り入れられている。中でも異色なのが、ドキュメンタリーを取り入れたことだ。撮影中に酒井がジャンプして着地した際に右足首を骨折するというアクシデントが発生し、救急車で運ばれる模様が映し出される。DVDの特典映像として使われるようなシーンを本編中に使い込んでいるのがこれまた面白い。しかも、単なるドキュメント映像として終わることなく、糸を括りつけた模型救急車が宙を舞うという子供向けファンタジック・コメディーに仕上げて面白可笑しく魅せつけているのがこれまた良い。佐藤監督は酒井の怪我を「『仮面ライダー』で主役の藤岡弘が怪我したようなもの」と捉えているが、個人的には『特捜最前線』で主役の二谷英明が北海道のロケ先でスキーをしている最中に首を骨折したことや『西部警察』で石原裕次郎が撮影終了直後に解離性大動脈瘤で倒れて慶應病院に搬送されたことを思い出した。
とにかく超低予算の自主映画を逆手にとり、芸人としての感覚、映画や特撮番組のファンとしての感覚、遊び心を活かせて作り上げた大人になりきれない大人のための特撮ヒーロー作品だと言いたい。
【70点】
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