« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »

2009年12月

博徒無情

日活の清純派女優であった松原智恵子。そんな彼女を東映の藤純子(現・富司純子)、大映の江波杏子に対抗するべく仁侠映画の柱として売り出そうと企画し、主演させた作品で監督は斉藤武市。

堅気の加代(松原智恵子)は、若い博徒の村次(渡哲也)に惚れ込んでいた。村次はかつて世話になった箱田屋という旅館の親分が殺害されたことで仇の大寺組長(高品格)の命を狙う。だが、子分の門太(近藤宏)の片腕切断だけに終わり、村次は重症を負った状態で逮捕、投獄される。加代は極道渡世に身を置き、幾度も面会を重ねては村次の出所を待ち続ける。

松原智恵子によるアクション、賭場での壷振りは描かれず、片腕門太の妻と子の償いのために芸者として稼いだり、その様子を良く思った敵対する大寺組の客分・竜吉(露口茂)との絡みがメインに描かれる。中でも中盤以降で観られる竜吉と抱き合った加代がかんざしで刺し殺そうとするが思い留まるシーンは、緊迫感を張り巡らせた印象深い名シーンの一つだと言える。

松原が仁侠映画ならではの活躍を魅せないため、渡哲也と『昇り竜』二部作で主演を張った扇ひろ子が見せ場を披露しており、これらが大きな見所となる。渡は序盤での大寺組長仇撃ちシーンでも長ドスを使って立ち回りを魅せつけてくれたが、クライマックスでは大寺組に単身で乗り込み、数名の組員を相手に壮絶なバトルを繰り広げる。扇も粋な啖呵を切ってアクションを魅せつけてくれるが、驚くべき面白さが隠されている。それは、彼女の役名が関東桜組々長の桜勝美という『昇り竜』二部作とまったく同じで、キャラ的にもまったく変わりがないことなのである。

それにしても最初の渡と松原の会話、渡主演の日活ニューアクションの代名詞的作品である『無頼』シリーズを少し彷彿させる。

【65点】

| | コメント (0) | トラックバック (0)

早射ち無頼 大平原の男

宍戸錠が主役を張った和製西部劇アクションで監督は、野口博志。宍戸が早射ちガンマンに扮した日活無国籍アクションの隠れた傑作の一つ。

拳銃名手の元ヤクザ錠次(宍戸錠)は、足を洗う世話をしてくれた恩人の岸本(東野英次郎)に恩返しをするべくある地方の駅に降り立った。しかし、岸本は鉄道工事の利権争いに巻き込まれており、地元の暴力団である坂口一家の手によって事故死に見せかけて殺害された。やがて錠次は、汚いやり口の坂口一家と対決するべく再び拳銃を手にして戦いに挑む。

夜の暗い森で坂口一家の連中が鉄道工事監督官を殺害するシーンの直後、連中を相手に錠次が軽く撃ち合うのが最初の見せ場。錠次は、一家のナンバー2的存在である木津(高品格)の手に弾丸をヒットさせる。これ以降も錠次の早射ちガンマンぶりが観られるのかと思えたが、ヤクザ稼業から足を洗ったと言って拳銃所持を封印してしまうため、ガンファイトは観られない。だが、クライマックスの見せ場ではしっかりとガンファイトを披露してくれる。錠次は敵に腕と足を撃たれて負傷しながらも連中を一撃ヒットさせて蹴散らす。

アクションよりもドラマ描写に比重を置いている。錠次のヤクザ時代の仲間であった信二(青山恭二)は、恋人の紀子(松原智恵子)がいながらも坂口一家と密接に関わっている。そんな信二を錠次が改心させようとする男同士の友情を感じさせるドラマは、印象深くて面白い。

【60点】

| | コメント (1) | トラックバック (0)

戦闘機対戦車 (日本未公開※TV映画)

第二次世界大戦末期の北アフリカ戦線はドイツ軍の勢力が弱まり、敗戦に近づいていた。その頃、ちょっと頭がイタいドイツ将軍バイムラー(ロイド・ブリッジス)はパンツァー戦車を手に入れ、飛行が不可能となってしまった連合軍のP-40戦闘機を狙って部下を指導し、執拗に追跡する。

TV映画である本作は、舞台が砂漠に限定され、登場人物も少数という具合に低予算であることが丸分かり。劇中に登場するパンツァー戦車が実は米国製シャーマン戦車であることも予算の都合上なのである。だが、決して侮ってはならない傑作という感じで仕上がっている。それは、そんな低予算を逆手に取ってアイデアに創意工夫を凝らせたことが大きな一因だ。戦闘機と戦車が地上で対決するという構図を重点的に捉え、戦闘機は片翼が破損、戦車はヘンな将軍にコントロールされているというお互いにハンディキャップを取り入れた基本設定が面白さに活かされているのである。

本作が面白いのはアイデアだけではない。戦争アクション映画ということでそれ相応の見せ場を用意しており、これに関しては非常に好意的でポイントはかなり高い。前半で戦車による砲撃や戦闘機のミサイル投下による爆破、軍用トラックの炎上が観られる。これらのアクション演出は、低予算のショボい出来栄えでもなければ大作のようなド派手な出来栄えでもない。それでもそれなりの迫力を出すことに成功しており、面白さを感じられる作りになっている。低予算でも努力して頑張っていることが分かり、大いに感心させられるアクション描写だ。

アクションシーンの後は眼目である戦闘機対戦車になるが、これが劇中のセリフにあるように“鬼ごっこ”のような感じがする。サスペンスの味付けでギリギリの緊迫感をほんのりと漂わせて描かれている。

終盤あたりでバイムラー将軍のクレイジーぶりが遺憾なく発揮させられ、これがまた面白さを存分に味わえる。とにかくロイド・ブリッジスの鬼気迫る演技が最高に魅力的で印象深い。

登場人物に女性が一人も出てこない上に男たちも近年の大作映画で見かけるようなイケメンとは違った男臭い連中ばかり。しかも戦闘機と戦車ときたものだから明らかに男性をターゲットに絞った男ウケする作品である。かつて日本で本作がTV放送された際、当時の中高生男児にとっては大変興味深い作品であったことだろうと簡単に想像できてしまう。

とにかく世間の評価も高く、現在でも傑作B級映画として語り継がれている本作は、超オススメやぞっ!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

監獄島

アメリカの人気プロレス団体WWEの製作(正確に言えばWWEフィルムズ)第三弾作品でスコット・ワイパー監督がメガホンを取ったB級娯楽アクション。

コンラッド(“ストーン・コールド”スティーヴ・オースティン)ら十名の死刑囚が絶海の孤島に集められることとなった。それは、この島で制限時間30時間以内に九名を殺害して生き残った一名が自由の身になるという殺人ゲームを行うためであった。また、その模様はインターネット番組で生中継される。十名は30時間後に爆破する時限爆弾を足首にセットされ、ヘリに乗せられて孤島付近の海に突き落とされる。だが、その内の一名は誤って陸地に突き落とされてしまい、即死亡する。九名のアウトローたちによるデス・バトルの火蓋が切って落とされる。

“ストーン・コールド”スティーヴ・オースティンと言えば、プロレスラーとしては日本でも人気が高く、現在は事実上引退しているが、WWE時代は現在は映画スターとして大活躍中のザ・ロック=ドウェイン・ジョンソンと並ぶ看板レスラーとしてリング上で缶ビールを一気飲みする姿等が印象的だった。また、若手時代は日本にも来日し、武藤敬司(彼にも『光る女』という相米慎二監督作品で映画主演の経験あり)とも一戦を交えた。役者としては、TVドラマ『刑事ナッシュ・ブリッジス』の刑事役でデビューを果たした(ちなみに日本でレスラーがTV刑事ドラマの刑事役でレギュラー出演と言えば、菅原文太主演『警視庁殺人課』の剛竜馬。)。その後、WWEのドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・マット』に顔を出し、レスラーが大挙出演するリメイク版『ロンゲスト・ヤード』に出演した経験があるが、主演は本作が初なのである。

内容は単純明快な筋書きであり、設定は『バトル・ロワイアル』+『デス・レース』という感じ。見せ場は当然の如く肉弾戦だ。オースティンらガタイのゴツい男が一対一でぶつかり合う模様をキャメラはアップで捉える。これが迫力を感じさせると同時にやたらと揺れ動くため、闘いの情熱すら感じられる。オースティンのプロレス技を少しだけ活かせた格闘アクションは、レスラーとしてのオースティンのキャラを反映させているため、ファンにとっては嬉しく思えるはずだ。また、ド派手な爆破シーンもいくつか用意されているため、見応えのあるアクション作品として仕上がっている。他にも黒人女が男のタマを蹴り上げるという痛々しいバイオレンスや極悪非道な残虐さも味わえる。これぞアウトローたちによるアウトロー映画だと言っても良いだろう。オースティン以外のキャラも注目度が高い。ヴィニー・ジョーンズ扮する英国精鋭部隊出身のマクスターリーが悪役らしさを発揮し、日本人役者マサ・ヤマグチ扮するサイガが得意とする格闘技を披露したりと好印象だ。

肉弾戦を描く一方で番組製作スタッフたちの苦悩や葛藤等の描写やちょっとした社会派テイストも取り入れられているため、これらのシーンも要注目だ。メディア社会の悪の部分を浮き彫りにして観る者に考えさせるというシリアス要素を取り入れたことは、ポイントが高く、単純なアクションに仕上げても良い所をあえて内容のある作品に仕上げていることがわかる。

本作は孤島をリング代わりにした九名参加バトルロイヤル戦だ。しかも、ノールールの殺し合いというハードコア・デスマッチの要素を超越させてだ。とにかくB級アクション好きはもちろん、プロレス格闘技ファンも必見の一作だ。

【75点】

監獄島

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »