2008年7月17日 (木)

アメリカばんざい crazy as usual

若いアメリカ新兵やイラク戦争帰還兵とその家族の姿、国家に従順な新兵を育成するブートキャンプにスポットを当てたドキュメンタリー作品。

藤本幸久監督は日本の報道で曝されることのなかった真実と実態に迫るべく渡米し、これらを鋭く抉り出すことに成功した。

本作で映し出されるのは、イラク戦争帰還後にPTSDで苦しむ若い元兵士、入隊を逃れるためにドラッグに手を染めて中毒になった者、ホームレスになった元兵士、劣化ウランで被爆したことによって重病で苦しんでいる元州兵等々。悲惨かつ恐ろしすぎる実態の数々には酷く驚愕させられるばかりだ。これぞまさにアメリカ社会の病んだ一部分である。

中でも一番注目したいポイントはブートキャンプの実態だ。ブートキャンプと言えば、昨年大ブームとなったダイエットエクササイズ“ビリーズブートキャンプ”を真っ先に連想してしまう。本作で紹介される実際のブートキャンプは、若き海兵隊入隊者が必ず受ける軍事訓練であり、これが想像を絶するほどの過酷で厳しすぎる世界だ。二日間不眠不休で訓練に取り組み、教官からは大バッシングを喰らわせられるというまさに奈落の底と呼ぶに相応しいものであり、観る者に対しても厳しさと恐ろしさを実感させる。ビリーズブートキャンプのように励ましやほのかな優しさは一切ない真実のブートキャンプを観ていると、日本の若者がやるとすればすぐに逃げ出す者が続出するのではないかと思えた。

本作は、アメリカ社会の病んでしまった部分をしっかりと理解できる教材だ。

【65点】

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2008年6月12日 (木)

悪名 (1961)

朝吉(勝新太郎)とモートルの貞(田宮二郎)という二人のヤクザがタッグを組んで悪辣なヤクザたちを相手に大暴れする姿を描いた大映製作の全十五作にも及ぶ人気任侠アクションシリーズの記念すべき第一弾作品。原作は、様々な新聞や雑誌で連載された今東光の同名小説である。監督は、田中徳三。

本作の魅力は、何といっても勝扮する昔気質で義理人情を重んじる一方で見かけによらず酒が飲めなくて涙もろいという大阪は八尾の村上朝吉親分と田宮扮する近代的でドライな雰囲気のモートルの貞というまったく対照的な二人による息ピッタリのコンビぶりである。上方のお笑い演芸に通じる掛け合いの面白さと武器を使わずにしっかりと体を張って魅せつけるアクションが観る者を魅了させる。第一弾である本作では、朝吉と貞は当初は敵対関係ということで二人が激しいバトルを繰り広げるシーンが観られる。このバトルの後に貞が朝吉の凄さに参ってしまうと同時に人柄に惚れ込んで弟分となり、最強タッグが誕生する。

脇を固める役者たちも素晴らしい。ヒロインでヤクザたちの手によって離島の遊郭に売り飛ばされてしまう遊女の琴糸役の水谷八重子(当時は水谷良重)をはじめ、モートルの貞の親分で後に彼と袂を別つことになる吉岡組長役の山茶花究、十分の貫禄で観る者を圧倒させる女親分役の浪花千栄子、朝吉と恋仲になるお絹役の中村玉緒というようにそれぞれが好演している点も見所である。

シリーズ化するにつれて娯楽映画としての面白さが段々とパワーアップし、朝吉とモートルの貞(第三弾以降は、貞と瓜二つの弟の清次)のボケとツッコミ風の会話とアクションはもちろんのこと、カレーライスを美味しそうに食べる朝吉、本作の代名詞の一つでもある河内音頭、関西ならではのお笑いタレントの出演が印象深い。

本作は、13年後に東宝で『悪名縄張り荒らし』としてリメイクされ、朝吉役には勝が再び登板し、モートルの貞を北大路欣也が演じた。また、2001年には朝吉役に的場浩司、モートルの貞役に東幹久で二度目のリメイクがなされた。

【85点】

悪名 DVD 悪名

販売元:ポニーキャニオン
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2008年3月25日 (火)

赤い荒野

島根県は三瓶高原を舞台に7年ぶりに帰郷した元ヤクザのジョー(宍戸錠)が親友の矢崎(小高雄二)が経営する牧場を乗っ取ろうとする暴力団の小池組と戦う姿を描いた和製西部劇アクション。

作風は本場アメリカ製西部劇のテイストをそのまま取り入れており、衣装や音楽までもがウエスタンスタイルで拘り抜かれている。

とにかく宍戸錠の格好良さが全面に押し出されており、彼が魅せつける体を張ったアクションが最大の見所となる。冒頭から馬にまたがって勢い良く突っ走り、一人で数名の敵にパンチとキックを喰らわせ、拳銃もぶっ放して大暴れ。粋なセリフ回しは歯切れが良くてシビレさせてくれるし、彫が深い独特なマスクからは男臭さと情熱さをギラギラと感じさせる。とにかく男性ウケする格好良さが魅力的だ。

ロケーションを巧く活かせた映像作りは抜群に良い。特に青空に映える虹、牛がいっぱいの牧場、緑いっぱいの草原といった具合に三瓶高原の長閑で清々しい大自然をアピールしているという感じだ。鮮やかで美しい映像がアクションを楽しむための箸休めとして観る者に安らぎを与えるのである。

脇役の南田洋子、笹森礼子、小高雄二、東野英治郎、加藤武、内田良平、杉山俊夫らのキャラクター設定もしっかりとなされており、皆がそれぞれの役柄を好演していることも印象深い。

本作は、西部劇好きの宍戸錠にとっては嬉しい作品であることに違いはないだろう。これぞ“元祖スキヤキ・ウエスタン”に相当する一本だ。

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