2009年10月28日 (水)

クラッシャーカズヨシ~怒る~

一般劇場公開はおろか、ソフト化すら不可能という絶滅危惧のブッ飛びインディーズ・カルト・特撮ヒーロー作品『クラッシャーカズヨシ』の完結篇。絶妙な音声模写と度が過ぎた下ネタで笑いを誘うものまね芸人レイパー佐藤こと佐藤文則が前作同様に監督、脚本、編集、撮影を担当。

今回は四章に分けられた構成。相変わらずのクエンティン・タランティーノ監督もブッ飛びのやり過ぎパロディー、オマージュ満載。TV特撮ヒーロー番組を意識した作り方でオリジナルCMやCM前のアイキャッチまで取り入れたまさに全四話のTVドラマスタイルだ。自主映画ならではの低予算の手作り感を魅せつけてくれる。『僕らのミライへ逆回転』のジャック・ブラックとモス・デフが製作する自主映画(『ラッシュアワー2』や『ライオンキング』等を手作りリメイク)を思わせてくれるのだ。中でもオリジナルCMは面白可笑しい。実在する病院や旅館、挙句の果てには本作のグッズ(フィギュアと栄養ドリンク)であったりと誠にユニークでクスッと笑わせてくれる。栄養ドリンクは、誰もが知っているような某ビタミンC炭酸飲料のビンに“クラッシャーC”という紙(しかも普通に手書き!!)を貼っているだけ!!このようなグッズCMこそ特撮番組の世界を感じさる。グッズに関しては、ドリンク以外の主題歌CDやフィギュア、缶バッジは存在した。しかも、上映会場で販売されていたのである。CDは、現在でもネット販売されている。自主映画でグッズまで出している作品と言えば、この『クラッシャーカズヨシ』と未公開の最低Z級映画『恐怖!キノコ男』ぐらいだろう。

前作も自主映画にしては豪華かつ異色のキャスティングであったが、今回もこの点はお変わりなしだ。主演の酒井一圭をはじめとする特撮ヒーロー番組出演役者を中心にエスパー伊東、電撃ネットワークから南部虎弾、ダンナ小柳、ギュウゾウの三人、ユリオカ超特Q、アントキの猪木といったお笑い勢、プロレスラーの飯伏幸太、河崎実監督、映画評論家の有村昆、「放送禁止映像大全」の著書で知られるUMA研究家の天野ミチヒロ、熟女AV女優の神田つばき、ミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシシェ)という具合に特撮、お笑い、サブカルが融合したキャスティングは、実に魅力的でこれだけでも面白く思える。ちなみに、第四章でエンディングテーマ「炎」が使用されているが、歌っているのは、アニソン界のカリスマ宮内タカユキである。これは、本格的だ!!

見所は、ちゃんこ屋我王の社長(酒井一圭)がクラッシャーカズヨシに変身して十三人の敵対するクラッシャーとの闘い。ただ、それだけ!!ユルい格闘アクション、戦隊モノのクライマックスで観られるような巨大ロボと巨大怪獣の決闘さながらのバトルを堪能すべきだ。今回は、CGを取り入れたことによって特撮らしさがパワーアップしたことが好ポイントの一つだと言える。バトルシーンで個人的に特筆したいポイントは、プロレスラー飯伏幸太と友井雄亮との公園での野外格闘技戦だ。このシーンでは、飯伏のレスラーらしさを存分に発揮させていることが素晴らく、ムーンサルトプレスをはじめとする技には感心させられた。格闘技アクション映画の面白さを感じさせる良いシーンではあるが、バトル終了後のレフェリー役の芸人インタレスティングタケシの噛んでいる上にグダグダ感たっぷりのセリフ(この芸人、滑舌の悪さをウリにしている)が観る者を脱力させ、笑わせてくれる。笑わせてくれると言っても、当然爆笑ではなく失笑だ!!

『クラッシャーカズヨシ』と言えば、特撮ヒーローのパロディーやオマージュが取り入れられているが、今回は他にも任侠ヤクザ(富司純子の東映『緋牡丹博徒』シリーズや江波杏子の大映『女賭博師』シリーズのような女壷振師モノ)、プロレス格闘技(アントキの猪木、飯伏幸太の活躍)の要素や『絶叫計画』シリーズ風コメディ(『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップ扮するジャック・スパロウや『北の国から』の田中邦衛、『冬のソナタ』のぺ・ヨンジュン)の要素も取り入れられている。中でも異色なのが、ドキュメンタリーを取り入れたことだ。撮影中に酒井がジャンプして着地した際に右足首を骨折するというアクシデントが発生し、救急車で運ばれる模様が映し出される。DVDの特典映像として使われるようなシーンを本編中に使い込んでいるのがこれまた面白い。しかも、単なるドキュメント映像として終わることなく、糸を括りつけた模型救急車が宙を舞うという子供向けファンタジック・コメディーに仕上げて面白可笑しく魅せつけているのがこれまた良い。佐藤監督は酒井の怪我を「『仮面ライダー』で主役の藤岡弘が怪我したようなもの」と捉えているが、個人的には『特捜最前線』で主役の二谷英明が北海道のロケ先でスキーをしている最中に首を骨折したことや『西部警察』で石原裕次郎が撮影終了直後に解離性大動脈瘤で倒れて慶應病院に搬送されたことを思い出した。

とにかく超低予算の自主映画を逆手にとり、芸人としての感覚、映画や特撮番組のファンとしての感覚、遊び心を活かせて作り上げた大人になりきれない大人のための特撮ヒーロー作品だと言いたい。

【70点】

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2009年9月28日 (月)

斬り込み

後に日活ニューアクションの旗手として様々な傑作を世に送り出していく澤田幸弘の監督デビュー作。

川崎の郷田組のチンピラ四人衆である直人(藤竜也)、雅美(沖雅也)、次郎(岡崎二朗)、猛(藤健次)がバーで関東連合会の組員をイザコザの末に刺殺。これを機に郷田組は連合会の圧力に屈して傘下団体となってしまう。四人衆は椿会長(青木義朗)の言いなりになった郷田組の若頭・花井(郷鍈治)の非情な命令で先代組長で隠居の身である政次郎(中村竹弥)を殺害したりと散々利用された挙句に猛、次郎、雅美、花井の妻・朋子(扇ひろ子)までもが連合会の手によって殺害される。一方で政次郎を慕っていた新(渡哲也)は、自身の組を連合会に潰されたことから復讐のチャンスを狙って花井、直人と合流し、猛の葬儀に乗り込み、連合会側にケリをつける。

当時の同趣向の作品と言えば、組長や幹部クラスが主人公のモノが多かった。本作では、若いチンピラたちにスポットを当てており、音楽も鏑木創によるジャズテイストのロックを巧妙に駆使して若者向け作品に仕上げている。これが当時では珍しくて新鮮な感じであり、日活ニューアクションの傑作として現在でも語り継がれていく作品になるきっかけとなった。

チンピラ四人衆の焦り、鉄砲玉としての存在の空しさがクローズアップされ、その悲哀さが十分に伝わってくる。これが本作の大きな特徴の一つだと言える。一方で次郎と集団就職のために田舎から川崎に出てきた真弓(青木伸子)との青春ドラマさながらの良い雰囲気のシーンでは、次郎が抱いている明るい夢と希望が浮き彫りにされており、観る者にとってはかなり好ましく思えることだろう。

アクション映画としての見せ場もしっかりと用意されており、デビュー作にしてインパクト大の格闘・斬り合いアクションを澤田監督はダイナミックに魅せつけた。中盤での佐伯港運への殴り込み、クライマックスの葬儀場での連合会壊滅は、実に面白く仕上がっいる。

本作は、渡哲也が主演ではあるものの出番は比較的少なめだ。劇中で藤竜也扮する直人は渡が演じる主人公であったが、渡はTVドラマ『花と竜』に出演していたため、スケジュール的に直人役は難しかった。そのために急遽脚本が書き直され、復讐に燃える男・庄司新という新たなキャラクターを登場させ、これを渡扮する主人公として重要なポイントに登場させた。出番は少なめながらも渡の存在は作品を引き締めており、素晴らしいアクションを魅せつけたりと非常に良い活躍ぶりだ。とにかく本作が面白く仕上がったのは、渡哲也のおかげでもあると言い切れるのだ。

【75点】

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2009年4月20日 (月)

狂った野獣

舞台は京都。銀行強盗をミスしたサブ(川谷拓三)とトシ(片桐竜次)が路線バスをジャックする。人質となる様々な乗客の中には、視覚障害が原因でプロドライバーの道を閉ざされてしまった宝石強盗犯の伸(渡瀬恒彦)もいる。バスはパトカーや白バイに追われながらも突っ走る。

深作欣二監督と渡瀬恒彦のタッグで生み出された和製カーアクションの傑作『暴走パニック 大激突』(76)の影響を受けたかのような形で中島貞夫監督が撮り上げた本作は、主演の渡瀬をはじめ、ピラニア軍団ばかりのキャストと派手なカースタントといった共通点が多い。

当時の外国映画ではカーチェイスを売りモノにしたアクション作品が多く量産され、日本でもこれに便乗して本作と『暴走パニック~』を生み出したと捉えられる。

序盤はバス内での密室劇を魅せつける。乗客たちの豊かな個性を浮き彫りにしているのがミソであり、これが面白さを増している。ブチギレする二人の犯人と乗客らが繰り広げるアナーキー、パニックをコミカルな雰囲気を少々交えて描く。特に自己主張して騒ぎまくる若い女、このような状況にも関わらずラジオの競馬中継に熱中する土木作業員、不倫関係にある教師と教え子の母がこれを機に不仲になったりといった様々な人間模様が印象深くて面白い。

後半は、見せ場のカーアクションをしっかりと魅せつける。追ってくるパトカーは横転、クラッシュ、爆破炎上し、バスは養鶏場に突っ込んで車内がチキンまみれになったりする。中島監督のパンチの効いた迫力満点のアクションシーンは、観る者にインパクトを与えられるような描き方となっており、作り方の巧さに関しても思わず舌を巻くほどだ。カーアクションならではのスリルとスピード感も存分に味わえ、まさに痛快だ。

渡瀬恒彦が本作のために大型特殊免許を取得し、自身が握るハンドルでバスを見事に横転させたのである。渡瀬を慕うピラニア軍団の川谷拓三、志賀勝、野口貴史もこの危険なスタントに付き添ったのである。

全国区になる前の笑福亭鶴瓶、要注意歌謡曲としても知られる自身の持ち歌「小便だらけの湖」を熱唱する三上寛といった端役の存在は、今となっては非常に貴重だ。

78分という短い上映時間内に面白さを存分に凝縮させているのでアッと言う間に時間が過ぎてしまう。

【85点】

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2009年4月 1日 (水)

五人の賞金稼ぎ

貧しい人々のために医療院を開設し、病人を診察している医師兼賞金稼ぎの錣市兵衛(若山富三郎)は、野州黒羽領の若い百姓から領主の大関佐渡守(小池朝雄)による悪政に百姓たちが苦しんでいるため、一揆に力を貸して欲しいと依頼された。市兵衛は、女忍者の陽炎(真山知子)、居合術の達人・弥太郎(大木実)、手裏剣の達人・隼人(北村英三)、淋病持ちの九内(潮健児)を引き連れて村に赴き、悪代官一味との攻防を繰り広げる。

『賞金稼ぎ』三部作の第二弾である本作は、シリーズ最高傑作の呼び声が高い異色の時代劇アクションである。監督は、集団劇を得意とする工藤栄一。彼ならではの持ち味と従来の時代劇作品では観られなかったマカロニウエスタン風の荒唐無稽なハードアクションを追求した見せ場が眼目である。

前半で大掛かりな見せ場が用意される。百姓たちが立てた砦に市兵衛らが手回し式マシンガンを設置し、攻めかかって来る大勢の領主部隊をこれでバタバタと撃ち倒す。その後、このマシンガンを奪うべく領主の家老・主水(中谷一郎)がラッパ隊という三人組(伊吹吾郎扮する片目が潰れた音平をリーダーに福本清三扮する小笠、宍戸大全扮する源造)を雇う。暗い夜の竹薮で市兵衛らがラッパ隊と戦うシーンが第二の見せ場となる。クライマックスの最後の見せ場は、圧巻の一言に尽きる。領主側が市兵衛らに対抗するべく大砲を用意し、最終決戦の火蓋が切って落とされる。撃ち放たれた砲弾が辺りを次々と爆破炎上させ、砦の一部がダイナミックに崩れ落ちるという豪快なアクション演出が観る者を圧倒させる。市兵衛らも負けじとマシンガンで応戦し、凄まじい攻防戦が描かれる。迫力満点のアクションシーンが連続される中、九内の持病を活かせた下ネタ系ギャグが描かれ、笑わせてくれる。余裕を持った演出が妙味だと言える。最後は、市兵衛が刀で敵を次々とぶった斬りにする。若山ならではのパワフルな殺陣もしっかりと描かれている点も良い。

漫画チックでケレン味たっぷりの本作は、後に若山が主演する『子連れ狼』シリーズの予兆すら感じられる。

【80点】

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2008年12月27日 (土)

片腕マシンガール

北米で和製バイオレンス系アクション作品を輸入しているビデオメーカー“メディア・ブラスターズ”が井口昇監督を迎えて製作したB級バイオレンスアクション作品で“TOKYO SHOCK”と称されるアメリカ出資の日本映画の記念すべき第一弾作品。

バスケットボールが得意な今時の女子高生・日向アミ(八代みなせ)は両親を亡くし、弟のユウ(川村亮介)とごく普通の生活を送っていた。ある日、壮絶ないじめに遭っていたユウは、友人の杉原タケシ(秀平)とともにいじめ連中の手によって高所から飛び降り自殺に見せかけて殺害される。怒りが頂点に達したアミは、ユウのノートに記載されている“殺したいヤツのリスト”から服部半蔵の血を引く暴力団組長・木村龍二(島津健太郎)の息子・翔(西原信弘)が主犯格であることを割り出す。翔の家に向かったアミは、龍二と妻・スミレ(穂花)と多数の部下たちに捕らえられ、残酷極まりない拷問を喰らいに喰らった挙句に片腕を失ってしまう・・・・・・。

かつてはゲテモノ系AVを撮っていた井口監督によるスプラッター描写を全面に押し出して超ハードな悪趣味テイストを発揮させた演出が大きな魅力だと言える。冒頭から血飛沫が飛び散りまくり、ほとんどのシーンが血まみれ大流血の血生臭い残酷描写がてんこ盛りなのである。

とにかく荒唐無稽な作風は、漫画チックでケレン味がたっぷりな点が面白い。明らかにクエンティン・タランティーノ監督作品、タランティーノとロバート・ロドリゲス監督の『グラインドハウス』をモロに意識しているようにも思える。アミの片腕マシンガンとタケシの母・ミキ(亜紗美)の片脚チェーンソーは、ロドリゲス監督作品『プラネット・テラーINグラインドハウス』を彷彿させ、女性主人公が復讐に挑む姿はタランティーノ監督作品『キルビル』二部作と同じである。さらに外国映画でありがちな間違った日本のイメージが取り入れられている。これが面白さをパワーアップさせると同時にB級感覚とマニアック感覚を醸成させている。

本作の面白さは血まみれやアクションだけではない。アミの片腕天ぷら、翔に対してヘマをやらかした板前のエンコ(指)巻き寿司、スミレのドリラー式ブラと言ったユニークな珍ネタの存在も忘れられない。これらは、一度観ると忘れられないほどの強烈なインパクトを与えてくれるのである。このように観る者を飽きさせないような工夫を施した魅せ方は大いに認めたい。

娯楽に徹底し、B級及び悪趣味テイストをとことん追求した結果、狂気に満ち溢れてしまった作風となった本作。97分という上映時間は、この手の作品には適しているとも言える。グロテスクな残酷描写が大の苦手という方には最初からオススメしないが、B級映画マニア、アクション映画ファン、スプラッター系ホラー映画ファンの男性方には思いきってオススメしたい。

勢いを失い、本当に面白いと思えるような娯楽映画を作れなくなった現在の日本映画界は、本作を見習うべきだと私は言いたい。なぜなら、本作には60年代から70年代の情熱的で本当に面白いと思える娯楽映画と同じ匂いを感じられるからである。

本作公開から約二ヵ月後に公開された“TOKYO SHOCK”シリーズ第二弾『東京残酷警察』は、本作で特殊造型を務めた西村喜廣が監督をはじめ一人八役を担当し、本作を超える程の大流血、クレイジーぶりを発揮させることに成功したのである。

【80点】

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2008年12月15日 (月)

子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる

「漫画アクション」にて1970年から1976年に渡って連載された小池一雄原作の同名時代劇漫画の実写化作品で後に五本の続編が製作・公開された。

公儀介錯人(幕府公認の斬首役人の意)である拝一刀(若山富三郎)は、妻と一族を殺害された上に公儀反逆の汚名を着せられる。それは、一刀の要職を奪い取りたいと思っている裏柳生のボスである柳生烈堂(伊藤雄之助)の策略であった。その時から冥府魔道に生きる一刀と幼子・大五郎(富川晶宏)のさすらいの旅が始まった。そんな二人に次々と柳生の刺客が襲い迫り、壮絶な激闘が繰り広げられる。

本シリーズの面白さは、何と言っても一刀を演じる若山の衝撃的な殺陣と彼に斬られた者が噴水のような血飛沫を吹き飛ばすというスプラッター風味のバイオレンス描写だと言い切れる。この第一弾では、TV刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(72~87)の山さんでお馴染みの露口茂の首が吹っ飛び、ラストでは斬られた両足だけがつっ立っているという強烈な描写が一度観ると忘れられないのである。従来の時代劇作品では観られなかったこのような描写が実に異色さを増しており、多くのファンを惹きつけた上に現在でも伝説として語り継がれているのである。

他にはセクシーな見せ場をしっかりと用意していたりというように娯楽性をしっかりと追求し、大人の味と呼ぶに相応しい出来栄えとなっている。

監督は大映映画の名匠・三隅研次。彼を迎えたのは、若山直々の依頼だったとのことである。主演の若山に関しては、本人が原作者である小池に直接「俺を主役にしてくれ!」と頼み込み、ご自慢の刀裁きを魅せつけて主役の座を勝ち取ったのである。最近では、ハリウッドのアクションスターであるスティーブン・セガールが小池に「オオカミをやりたい!」と頼み込んだらしい。

本シリーズは、海外でもファンが多い。アメリカではロジャー・コーマンの手によってこの第一弾と第二弾『三途の川の乳母車』(72)のバイオレンスシーンを編集したものを『Shogun Assassin』というタイトルで1980年に公開した。これがクエンティン・タランティーノを中心にフランク・ミュラー、マリオ・ヴァン・ピーブルズらに多大な影響を与え、さらには80年代にハリウッドで量産されたスプラッター系ホラーにも影響を及ぼしたのである。

【80点】

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2008年11月11日 (火)

カラテ大戦争

東坊徹源(大滝秀治、モデルは大山倍達)が創設した極限流空手(もちろん極真空手)。その師範である大神達矢(真樹日佐夫)は、日本空手協会(通称:日空協)の荒木会長(安部徹)と政治家の相馬(金子信雄)による企てである空手世界進出の先兵として香港のカンフー、タイのムエタイに挑戦する。

原作は、月刊少年マガジンにて連載されていた梶原一騎と極真空手創始者である大山倍達の「世界ケンカ旅行~空手戦争」。本作で梶原は製作にも携わっている。

東映の空手アクション作品と香港カンフー作品の影響下で松竹と三協映画(創設者の一人が梶原)が協同製作した格闘技系スポ根ドラマ。

主演は梶原の実弟であり、極真空手のプロで作家の真樹日佐夫。彼を主役に据えたのは、恐らく空手の凄さをリアルに追求して描きたかったからだろうと考えられる。現在ではVシネマ作品をメインに多数出演しているが、本格的な演技は本作が初めて。彼のセリフは、なんと声優によって吹き替えられていたのである。これも本作の凄いポイントだ。

見所は、大神の修行シーンや格闘シーンであるが、特に格闘シーンにおいてはスローモーションで克明に描いてみたりといった魅せ方に工夫されているものの東映の空手アクション作品のようにアクション面に重点を置いていないこともあってやや平凡だと思える。それでも最大の見せ場である対カンフー戦や対ムエタイ戦は格闘技のショー的要素がしっかりと追求されているため案外楽しむことができる。

ドラマ描写はかなり陳腐なものであり、大神と東坊の娘・礼子(夏樹陽子)の一連の絡みは特にそうだと言っても良いだろう。中でも大神がムエタイの猛者・キングコブラとの一戦(本当に戦ったとのこと)の前夜に突然、礼子から貧乳を曝け出して「抱いて」と言われて夜を共にするシーンは失笑モノだ。

劇中に中国からの出稼ぎでクラブ歌手をやっている陳鈴蘭という女性が登場する。演じている白泳泳は、なんと梶原の元妻なのである。しかも「カンフーエレジー」という歌まで披露しているのである。とにかく彼女の活躍ぶりも注目ポイントだ。

【45点】

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2008年7月29日 (火)

ゴキブリ刑事

暴力団すなわち“ゴキブリ”を非情な手段で蹴散らそうと奮闘する鳴神涼刑事(渡哲也)の姿を描いたハードボイルドタッチのポリスアクション。

原作は新岡勲の同名劇画であるが、映画の方は原作の設定や作風等に捉われずに独自の世界観を形成させた。

鳴神刑事を演じるのは渡哲也。刑事役と言えば渡哲也というイメージが強い。そんな彼が初めて本格的な刑事役を演じたのが本作であり、非情さをとことん発揮させたダーティーでアウトロー丸出しの一匹狼刑事を好演した。渡哲也=刑事役だけでなく渡哲也=角刈り+レイバンのサングラスというヴィジュアル的なイメージも本作で確立され、石原軍団ファンの間では本作は後に渡がTVドラマで演じる『大都会』(76~79)の黒岩頼介刑事や『西部警察』(79~84)の大門圭介刑事の原点だとよく言われている。また、渡が鳴神刑事を超えるほどのアウトロー刑事である黒岩竜を演じる東映映画『やくざの墓場 くちなしの花』(76)ともリンクされている。鳴神刑事役は、企画段階では藤岡弘、が演じる予定だったらしい。原作のイメージを考慮すれば藤岡が相応しかったかもしれないが、今となっては渡が演じて良かったと言い切れる。もしも藤岡が演じていたら、TVドラマ『特捜最前線』(77~87)のアウトロー的な情熱さを感じさせる桜井哲夫警部補(時には警部であったり)の原点とも捉えることができてそれはそれで面白く思えたことだろう。

製作に石原プロが関わっていることもあってご自慢のアクションシーンを存分に堪能できる。『大都会』や『西部警察』ほどのド派手な描き方ではないもののダイナミックで見応えのある面白いシーンに仕上がっているので素直に良いと言える。

バイオレンスの面でも強いインパクトを与えるシーンが幾つか観られる。中でもこれは絶対に必見と言えるシーンが二つある。まずは、鳴神と後輩刑事の武井(地井武男)が三人のチンピラヤクザを逮捕して取調べをするが、これが人権無視のハチャメチャ行為であり、観ていてかなりハラハラさせられる。次に苅谷俊介扮するチンピラヤクザが床屋で散発している時に鳴神が突然現れ、このチンピラに熱湯シャワーとトニック剤をぶっ掛けて軽くいたぶり、挙句の果てには剃刀で片眉を剃り落としてしまうというシーンは一度観たら忘れられないほどの強烈な描き方となっている。

後に続編も製作され、第二弾『ザ・ゴキブリ』(73)は若干スケールアップされているので本作よりも面白い作品に仕上がっている。第三弾『ゴキブリ IN U.S.A』という企画があったものの結局は実現されることはなく、二部作で打ち止めとなってしまったのである。

【80点】

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2008年7月21日 (月)

侠客道

関西のある街で任侠道を全うする昔気質の暴力団石田組と悪辣な暴力団寺光組が対立していた。寺光組は大組織の城西会をバックにつけ、石田組を吸収して更なる勢力の拡大を狙うが、組長の石田(石丸健二郎)と若頭の伊吹(安藤昇)はこれに大反対。抗争は更にヒートアップする。そんな折、かつて石田の世話になった検察官の中上(天知茂)が東京から来阪するのだが・・・・・・。

本作は、スーツ姿で拳銃を主な武器とする現代ヤクザの抗争劇をアクション色を押し出して描いているが、基本となっているフォーマットは従来の任侠ヤクザ映画のテイストである。

元ヤクザの映画スターとして有名な安藤昇。ヤクザ時代の安藤は従来の任侠ヤクザの堅苦しく思えるしきたりに捉われず、粋なファッションセンスに拘る一面があったりといった時代の最先端を行く異色のヤクザとしてカリスマ的な存在であった。そんな安藤が本作では任侠ヤクザならではの掟に忠実で義理人情に厚い侠客を好演。衣装は、安藤のイメージを崩すことのないようにシンプルな黒スーツをしっかりと着させた上で侠客らしくするために着物を着させている。イメージ通りとは違った安藤の姿が興味深く、これが魅力の一つとなっている。

脇を固める役者たちのキャラクター設定及び描写が強く印象に残り、これがまた面白い。まずは一番の重要人物である天知茂扮する検察官の中上は、かつて石田に大学卒業の面倒まで見てくれたにも関わらず、娘の織江(小畠絹子)に求婚した際に組員の手によって小指を切断された一件でヤクザを腹の底から嫌って再会した伊吹や石田を煙たがり、暴力団壊滅だけを目標に突っ走る。次の重要人物は、小池朝雄扮する石田組組員の北見だ。ある事がきっかけで石田組から敵対する北見組に寝返り、石田をドスで刺殺し、その後は寺光組の傘下団体として自身の組織を創設しようとする。この二人の男がストーリーを面白くさせていると言っても良いだろう。

鈴木則文監督の演出が結構気が利いているので観ていて普通に面白く思える。寺光組々員が車に乗って銃を乱射しながら石田組事務所を襲撃し、その際に伊吹がガソリンを撒いて車を炎上させるシーンにはじまり、街での両組織の大バトルシーン、北見組発会式に乗り込んだ伊吹が寺光(渡辺文雄)と北見の命を取るクライマックスといった見せ場作りは巧く、アクションとバイオレンスの面白さを存分に満喫できる。特にクライマックスで伊吹が北見らを追い詰めるシーンのカメラが伊吹の目線で捉えているというような工夫を施した映像作りも評価すべきポイントだ。鈴木監督ならではのナンセンスなコメディーテイストやセクシーサービスは味わえないが、これらをふと思わせるようなシーンは多少は観られる。

安藤昇の異色的な魅力がとことん発揮されている本作。劇中では安藤歌唱の同名タイトルの主題歌が聴けるが、これがまた男の中の男らしさを感じさせてくれる。CD化されていないため、本編で存分に味わうことをオススメしたい。

【75点】

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2008年6月19日 (木)

広域暴力 流血の縄張

警察の暴力団取締りが強化される中、関東桜田会は解散する。だが、下部団体の中でも昔気質な特色を持つ大野木一家はこれに異議を唱えた。その間に関西連合会が東京進出し、大野木一家は数々のトラブルに巻き込まれる。その後、両組織は和解して手打式を行ったが、式の終了後に開かれた総長賭博によって大野木一家は借金を背負うハメとなる。大野木一家の幹部である勇治(小林旭)と代貸の矢頭(中丸忠雄)は、金策に奔走するのだが・・・・・・。

小林旭が当時の日活の新たなる路線“ニューアクション”に挑戦した一本。前年に公開された旭主演の同ジャンル『縄張はもらった』(68)同様に暴力団組織の集団抗争を描いている。本作はアクションシーンがかなり控えめであり、その分ストーリー展開に比重が置かれている。しかし、このストーリーが少々ややこしさを感じさせるのがマイナスだ。やはりこの手の作品は、見せ場となるアクションを多めに用意して魅せつけてくれる方が面白いのである。

主演の小林旭が助演の中丸忠雄に喰われてしまっている部分が多いということが旭ファンにとっては少々残念だと思えるだろう。旭が印象に残るほどの大活躍をするのは、やはり後半のアクションシーンだと言える。また、ニューアクションの人気者である藤竜也と岡崎二朗が中盤までにフェードアウトしてしまう点も残念だ。

夜の新宿の街並の活写、旭のエンコ(小指)詰めシーンの巧妙な照明の使い方、女二人による熱気溢れるレズビアンシーンといった長谷部安春監督の冴えた演出は、高く評価したい。

本作は、『広域暴力』シリーズの第一弾作品として企画されたが、シリーズ化が実現することはなかった。後年に旭が東映で主演を張った『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』(75)もこれと同じような結果となってしまったのだ。両作品の他の共通点を挙げると、人気役者の途中フェードアウト(『京阪神殺しの軍団』では伊吹吾郎が!!)とアクションを期待して観ると肩透かしを喰らわせられることだ。

【50点】

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2008年4月 4日 (金)

怪奇!!幽霊スナック殴り込み!

浅草のスナックのオーナーであるユキ(タナダユキ)の夫(みうらじゅん)は、新宿の暴力団関係者を殺害したため刑務所に服役している。所内で夫が関係者からの報復を避けるべく司法当局と取引をしたユキは、ある暴力団に接近したことによってピンチに陥る。そこへ所内で夫と同房だった着流し姿の侠客(島口哲朗)が現れ、ユキを救うために立ち上がる。さらには幽霊三人組まで登場し、凄まじい戦いが繰り広げられることとなる。

杉作J太郎率いる男の墓場プロダクションによる製作第二弾作品。第一弾『任侠秘録人間狩り』(06)同様に杉作監督の人脈を活かせた濃厚なキャストがかなり異色で面白い。主演は、『タカダワタル的』(03)、『百万円と苦虫女』(08)の女流映画監督のタナダユキ。脇を固めるのはリリー・フランキー、みうらじゅん、横山剣(クレイジーケンバンド)、山田五郎、大槻ケンヂ、フィッシュロックを確立させた森田釣竿船長率いる漁港、内藤研(東映のB級作品で活躍した内藤誠監督の実子)、ハリウッド映画『キル・ビル』(03)で出演兼殺陣指導担当の島口哲朗(剣伎衆かむゐ)といったいかにもサブカルチャーを匂わせるようなクセのあるメンツが大集合。中でも田原章雄(日頃は女性向け週刊誌の編集を担当されている)扮するヤクザは、イカツすぎる風貌と威勢の良いセリフ回しでかなり印象的だ。また、監督もチョイ役で出演し、本人役で登場する横山剣との絡みは実に面白く、笑わせてくれること間違いなしでこれも最大の見所だと言える。

映像は観るからに最近のTVの深夜ドラマのような感じで出来栄えはいかにも低予算の自主製作作品ではあるが、魅せるところはしっかりと魅せつけ、観る者を楽しませるための工夫が施されている点は実に良く、従来の娯楽映画の面白さをしっかりと追求していることを実感させてくれる。任侠ヤクザアクションとホラーを組み合わせ、なおかつコメディーのテイストを取り入れた内容は実に気楽であり、78分という短めの上映時間もこの手の作品に相応しい。とにかく暇つぶしには持って来いの作品である。

オープニングとエンディングに流れるクレイジーケンバンド歌唱の「まっぴらロック」と劇中に登場するふんどし一丁で「レロレロ~」とつぶやく幽霊が忘れられない・・・・・・。

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2007年7月16日 (月)

ごろつき

当時流行していた“スポ根”モノと仁侠映画のテイストを織り交ぜた痛快娯楽アクション。

炭鉱夫の勇(高倉健)は、キックボクサーを目指して幼馴染の一郎(菅原文太)と共に上京。昼はジムで練習に明け暮れ、夜は上京したての頃にお世話になった昔気質のテキ屋の親分、浅川(石丸健二郎)の紹介で流しとして歌う。だが、浅川親分と一郎が新興暴力団の唐沢組長(渡辺文雄)に殺されるハメとなる。堪忍袋の尾が切れた勇は復讐心を燃やし、ドスを片手に殴りこむ。

高倉健が炭鉱夫やキックボクサーというこれまでに演じることのなかった役柄に挑戦。だが、結局はこれまで通りのヤクザ役同様の描き方となるが、キックボクシングの世界チャンピオンが侠客顔負けの殴りこみをかけるというアイデアは、正直面白いと言っても良い。

巨匠マキノ雅弘の遊び心が伺える演出も面白さの一つである。流しの手伝いをする勇と一郎が客のリクエストに応えて「網走番外地」や「唐獅子牡丹」を歌うシーンや当時の人気キックボクサーで“キックの鬼”こと沢村忠のカメオ出演、勇が犬の睾丸にサロンパススプレーをぶっ掛けるというナンセンスなギャグといったツボを押さえた見所を散りばめているのである。

主題歌「望郷子守唄」は、本作の4年後(72年)に同名タイトルの作品(もちろん健さん主演)が製作・公開され、こちらの主題歌としても使用された。

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