2009年12月 9日 (水)

イングロリアス・バスターズ

クエンティン・タランティーノ監督が『キル・ビル』製作の頃から構想を描いていた異色の戦争アクション。

1941年。ナチス占領下のフランス田舎町。家族を“ユダヤ・ハンター”と呼ばれる冷血漢のランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)に虐殺されたユダヤ人女性のショシャナ(メラニー・ロラン)。彼女は、三年後に劇場支配人をやりながらもナチス一掃という復讐計画を進めていた。同じ頃、アルド中尉(ブラッド・ピット)率いるユダヤ系アメリカ人中心の連合軍特殊部隊“イングロリアス・バスターズ”がナチス兵を次々と虐殺しては血祭りに上げていた。そんな中、彼らはショシャナの劇場でナチスの国策映画「国民の誇り」プレミアム上映会である作戦を実行するべく動き出す。

『地獄のバスターズ』(76、日本未公開)等の戦争映画に影響を受けたタランティーノ監督は、兵士が戦場で撃ちまくり、戦闘機が飛び回り、戦車が大砲をブッ放すというありきたりで単純な戦争モノとして仕上げなかった。

冒頭で観られる洗濯物として干されている白いシーツの向こう側からナチス兵の軍用車が近づいてくるシーンは、タランティーノ監督お気に入りのマカロニウエスタンの雰囲気が味わえる。その後はショシャナの復讐劇がストーリーの主軸になるが、これまたタランティーノ監督らしい持ち味であることがわかる。中盤あたりからはスパイ映画の要素も取り入れてしまい、最後には大掛かりなアクションを魅せつけてくれる。他にもコメディー要素や過激なバイオレンス描写を取り入れて面白い作風に仕上げている。

ナチス兵の頭皮をナイフで剥ぎ取るという酷な残虐さを魅せつけたり、バットで頭を殴り回したりという具合にバイオレンス度は、かつてのタランティーノ作品と比較するとかなりパワーアップしている。また、アクションに関してもマシンガンをガンガンブッ放して見応え抜群の壮絶なシーンに仕上げ、ラストでは大爆破シーンも用意されている。タランティーノ監督の腕前が更にアップしていることがわかる一方で大掛かりな見せ場を魅せつけることに成功したのである。

他にもいつも通りの過去の作品へのオマージュや既存の楽曲を巧妙に使用したり、独特の会話劇を魅せつけたりとタランティーノ節が全開だ。

【85点】

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2009年11月16日 (月)

ウェイヴ

ドイツのある高校で教師ベンガー(ユルゲン・フォーゲル)は、独裁政治の特別授業を担当することになる。ベンガーは自ら指導者となり、独裁制の体験学習を実行する。最初はやる気のなかった生徒たちも次第に魅了され、学校外でも様々な活動をやらかしていく。その活動は、ベンガーの予想を遥かに超越するほどエスカレートしていく・・・・・・。

1967年、アメリカで実際に起きた事件を現代ドイツに置き換えた心理系サスペンス・スリラー。本国ドイツでは、08年度の興行成績一位を記録した。

生徒たちが独裁体験に魅了されてチーム名(ウェイヴ)やロゴ、敬礼ポーズ、全員白いワイシャツを着用のルールを決め、結束力を強めていく。ロゴステッカーを街中の建物に貼りまくっていくシーンは、本作の見所である集団狂気の恐ろしさを感じさせる。だが、スピーディーかつテンポの良い描写からは、恐ろしさと同時に面白さも漂わせる。集団狂気の恐ろしさは、後半の水球部の試合シーンでも描かれ、最後の集会シーンでピークに達する。そして、衝撃的なラストが待ちうける。

一見、重苦しさや圧迫感が感じられるようだが、いざ観てみるとエンターテイメントとして楽しめる作品に仕上がっていてその面白さも味わえる。それは、青春映画のテイストをしっかりと取り入れたことだと思える。高校生たちの野外パーティー、演劇練習、部活動(水球部)の練習と試合、パンクファッションのヤンキーとのケンカといった描写が印象的だ。それにしても本作に登場する高校生たちは、飲酒、喫煙、ドラッグを平然とやっているワルばかりだ。こちらも印象深い。

劇中で描かれるウェイヴの活動は、独裁国家と同時にカルト教団にもかなり近いモノがあった。

【70点】

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2009年10月19日 (月)

アドレナリン:ハイ・ボルテージ

ヘリコプターから落下して死んだはずの殺し屋チェリオス(ジェイソン・ステイサム)は、中国マフィアたちの手によって心臓を奪われ、代わりに機械の人工心臓を埋め込まれてしまう。チェリオスは、人工心臓のバッテリーが切れそうになると常に自身の身体を充電しながらも心臓を取り戻すべく突っ走り、敵を追い詰めて行く。

ハイテンションなおバカ系アクション・コメディー『アドレナリン』の第二弾。前作以上におバカのボルテージはアップしており、クレイジーかつデンジャラスに仕上がった。

とにかくインパクトが強過ぎる描写がこれでもかと言わんばかりに連打される。チェリオスが敵の尻穴にショットガンをブチ込み、中国人娼婦リア(バイ・リン)が男の股間を自転車で何度も叩きつけたり、顔面タトゥー野郎が自身の両乳首をナイフで削ぎ落としたりといった描写は、正気の沙汰ではない。ブッ飛んでいるとしか言いようがない。しかも、観ていてかなり痛々しい。

そして、今回もチェリオスとイブ(エイミー・スマート)の公然セックスが観られるが、これもまた前作以上にレベルアップしている。競馬レース場にて馬が走っているど真ん中で二人は堂々とやってしまう。大勢の観客はレースよりも二人の本番行為を大いに楽しみ、大盛況となる。競馬場がリアルポルノ場になってしまう描写は、おバカの限度を超越している。しかもボカシまで施されているのだから、これぞハードコア・ポルノだ。とにかく凄すぎる。日本AV男優のカリスマ加藤鷹サンがこれを観たら舌を巻いてしまうこと間違いなしだと思える。エロ描写の最大の見せ場はこのシーンであるが、他にも裸体を曝け出した女たちがやたらと登場し、無駄なエロさが追求されている。これが本作の持っているB級感覚を一段と高めていると言える。

本作はおバカさばかりが取り柄ではなく、アクション、バイオレンスの面でもしっかりと面白く仕上がっていると言い切れる。ステイサムが繰り広げる殴る蹴るといった格闘アクションや序盤のストリップ劇場や後半の屋外プールでの大銃撃戦は、アクション映画としての面白さを存分に味わえるので良い。しかも、前述した裸体女が銃をガンガンブッ放すのだから、クレイジーなB級アクションとして仕上がっている。狂ったおバカさだけが目立つばかりではなく、アクションや痛々しいバイオレンスもしっかりと機能しているのが本作の良きポイントだ。

映像面でも前作同様に趣向が凝らされており、今回もスクリーンからアドレナリンが放出されているような感じがするキレ味抜群の映像作りが魅力的だ。しかも、この映像が作品のテンポを良くしていると言える。

とにかく最初から最後まで狂った面白さがフルスロットルの本作。作り手も遊び心を活かし過ぎて悪ノリし過ぎていることがしっかりと伝わってくる。ここまでして荒唐無稽、破天荒をやり切っているのだから、観る者もバカになって思う存分に楽しまなければ損だと言いたい。

もし第三弾が作られるのなら、個人的には是非ともやって頂きたい。今回はR18+だったが、第三弾はX指定で大ハードなおバカ、クレイジー、荒唐無稽を魅せて欲しいものだ。もちろん、アクションもカーチェイスや大爆破を取り入れてシリーズ最大の面白さを発揮して頂きたい。

【75点】

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2009年10月11日 (日)

狼の死刑宣告

チャールズ・ブロンソン主演の“デス・ウィッシュ”シリーズの第一弾でブロンソン映画の傑作として未だに人気の高い『狼よさらば』(74)の原作は、ブライアン・ガーフィールドの同名小説であり、その続編に当たる「Death Sentence」はシリーズの原作として映像化されなかった。だが、ブロンソン亡き後に映像化がやっと実現したのである。監督は、年一回のペースで世に送り出されている『ソウ』シリーズの生みの親であるジェームズ・ワン。

投資会社勤務のヒューム(ケビン・ベーコン)は、ごく普通の真面目なサラリーマンであり、妻と息子二人の四人家族で幸せな生活を送っている。ある日、ヒュームはホッケーの試合を終えた長男ブレンダンを車に乗せて帰路に向かっている途中にガソリンが少なくなり、スタンドで給油をするが、その時、武装したギャング団がスタンドを襲撃する。ブレンダンはヒュームの目の前で首を刃物で切られてしまい、病院に搬送したものの死亡。連中は逮捕されたが、ヒュームは刑罰内容に納得できず、法の裁きを断念。ブレンダン殺しの張本人は釈放されてしまう。怒りに怒りを重ねたヒュームは、警察や法律といった手段を一切使わずに自らの手で連中を蹴散らすことを決意。復讐に燃える一匹狼となったヒュームの孤独な戦争が始まった。

70年代前半から80年代半ば頃に多数製作されたヴィジランティ系アクション映画の雰囲気を再現させた本作は、単純明快でわかり易い上にかなり面白く仕上がっている。しかも男心を存分にくすぐらせてくれるのだからこんな作品を待っていたという男性には、持って来いだ。

内容は、まさに『狼よさらば』に似通っている点も観られるが、アクション映画としての魅せ方は非常に秀逸であり、ド派手な爆破や激しいカーチェイスはないものの面白さをしっかりと味わえるように作られていることが何よりも良い。

ヒュームが一人殺すと自身に危険がじわじわと迫り、それが更なる悲劇を招いてしまう。その後は面白さがヒートアップしていく。ブレンダンの革ジャンを着込み、頭を刈り、身も心も傷ついた復讐の狼、鬼、戦士として敵を追い求め、ショットガンで蹴散らしていく。ここで描かれる銃撃戦は、これぞスーパー・バイオレンス・アクションと呼ぶに相応しい描き方であり、強烈さを遺憾なく発揮している。しかもこれがかつての勧善懲悪系アクション映画のようにスカっと良い気分にさせてくれる。とにかく細かいことに拘ったり、ゴチャゴチャとツッコミを入れたりせずに素直に受け入れて楽しむべきだ。ようは、理屈抜きに楽しんだ者勝ちということなのである。

アクションやバイオレンスも良いが、ケビン・ベーコンの姿も最高だ。先般公開された『96時間』も娘を拉致して傷物にした敵を相手にリーアム・ニーソン扮する元凄腕スパイのオヤジがハイテンションに大暴れするというアクション作品だったが、本作のケビンの暴走オヤジも良い味を発揮している。アクション面は、リーアムのオヤジは元凄腕スパイということでハードに描かれたが、本作のケビンのオヤジは普通の真面目なリーマンということで派手さは抑え目で丁度良い感じであるもののそれにしても少しやり過ぎているという感じもする。男臭さの面では、リーアムよりも遥かにケビンの方が勝っている。眉間にシワを寄せ、次第に寡黙な男へと変貌していく模様は、真の男への成長なのだ。しかも敵連中を蹴散らしていく姿からは、鶴田浩二や高倉健が活躍した一連の東映任侠ヤクザ映画や『ローリング・サンダー』(77)のウィリアム・ディヴェインを彷彿とさせ、これが面白さの一つだと捉えることもできる。とにかくアクションスターではないケビン・ベーコンのアウトロー系アクション映画のアンチヒーローは最高だと言いたい。

古き良き時代の男性向け娯楽アクションの復活というべき本作は、アクション映画好き男児にはオススメだ!!と言うよりも絶対に観るべきだと言いたい!!

【75点】

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2009年9月13日 (日)

アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ

生身の肉体だけで障害物をスピーディーに乗り越えていくフランス発のスタント・パフォーマンス“パルクール”に格闘技要素を加えて魅せつけた新感覚アクション『アルティメット』の続編。監督はパトリック・アレサンドランが担当。

パリ郊外の犯罪多発地帯バンリュー13地区にて警官射殺事件が発生する。これを機に政府は地区の一掃計画に乗り出す。しかし、それは秘密保安介入局長官ガスマン(ダニエル・デュバル)が仕組んだ陰謀であった。これに気づいたレイト(ダヴィッド・ベル)は、麻薬所持の濡れ衣を着せられて投獄されているダミアン刑事(シリル・ラファエリ)を脱獄させ、地区の様々なギャングたちとこの巨悪に挑む。

今回もビルとビルの間を飛び跳ねたり高所から地面に着地したりといった超人的な神業が披露される。これらのパフォーマンスアクションは、前作同様にスタント、ワイヤー、CGを一切使っていないのである。前作及び本作の最大の見所と言えば間違いなくこのアクションであり、これだけでも観る価値は大いにありと言っても良いほどだ。

他にもダミアン刑事役のシリルが魅せつける格闘アクションも印象深い。数名の敵を華麗なる打撃で蹴散らす姿は、『トランスポーター』シリーズのジェイソン・ステイサムと良い勝負という感じであり、観る者を良い気分にさせてくれる。また、レイトによるダミアン脱獄作戦の直後に観られるビル内の廊下を車で激走してそのまま窓を突き破ってダイブするシーンもインパクトが大きくて忘れられないほどの印象を与えてくれる。

ダミアン&レイトの最強タッグをサポートするギャング連中も面白さを昇華させている。中でもエロカッコ良さとアウトロー的魅力が絶妙にミックスされた中国系マフィアの女ボスであるタオ(エロディー・ユン)の存在は大きく、彼女が魅せつける格闘アクションは注目度が高い。他のギャング連中も個性的なキャラクターではあるが、タオに比べるとやや薄弱な感じがする。漫画に登場するようなビジュアルのギャング連中の存在は、作品が持つ荒唐無稽さをより一層高めており、これが面白さに繋がっていると捉えることができる。

【70点】

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2009年9月12日 (土)

男と女の不都合な真実

TVプロデューサーのアビー(キャサリン・ハイグル)は頭もキレ、仕事でも腕が立つ美女。だが、恋愛面では完璧な男を求めていることが原因でご無沙汰状態。ある日、彼女は隣に住む医者コリン(エリック・ウィンター)に出会う。イケメンで誠実な人柄の彼は条件にピッタリだが、なかなか良い関係を築けない。そんな折、アビーは上司から恋愛相談番組の名物恋愛カウンセラーのマイク(ジェラルド・バトラー)とチームを組むようにと依頼される。下品極まりない下ネタが売りのマイクがコリンとうまくいけるようにするための男女間の凄まじい本音や恋愛テクをアビーに指導していくが・・・・・・。

下ネタで笑いを誘うラブコメディーである本作は、とにかく露骨な性関係の言葉が飛び交う。だが、下ネタだけが取り柄のおバカ作品作品にならないようにやり過ぎることなく、恋愛映画らしい描写をしっかりと描き、下ネタギャグも笑えるギャグとして成立させていることが良く、しかもかなり面白い。中でも野球観戦デートのシーンや会食シーンでのアビーが穿いているバイブ付下着によるおバカな下ネタギャグは強烈なインパクトを与えてくれること間違いなしであり、そのあまりの過激さにヒヤヒヤさせられる。他にもエレベーターのドアでのベタなギャグも良い。

主人公アビーがTV番組プロデューサーということでその仕事ぶりや生放送番組の舞台裏が垣間見ることができ、笑える下ネタギャグの次に興味深いポイントだと言える。

本作は明らかに女性よりも男性にウケるラブコメディーだと言っても良いだろう。成人男性はハラハラドキドキしながらもニヤニヤ笑って存分に楽しむべきだ。

【75点】

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2009年6月13日 (土)

女刑務所 白昼の暴動 (ケージド・ヒート 女囚物語)

強盗に失敗したジャッキー(エリカ・キャビン)は車椅子の女マックィーンが所長を努める女刑務所にブチ込まれる。サディスティックな医師による電気ショック療法をはじめとする様々な暴力が女囚たちを苦しめるこのム所から脱獄するべくジャッキーは姉貴的存在のマギー(ファニタ・ブラウン)と共謀する。

70年代に量産された女囚映画の傑作的作品。監督は後に『羊たちの沈黙』(93)でオスカーを獲得するジョナサン・デミで本作がデビュー作である。オスカー監督がこのような作品を撮っていたということに驚かされるが、日本のメジャー監督がポルノ映画で場数を踏んでいたことを考えるとさほど驚くことではないのである。

ジャッキーと仲間の男が強盗をやらかし、警官が発砲して追跡するシーンで始まる。ノリの良いアクションという感じで描かれているのでこのまま女囚映画ならではの見せ場も面白く描かれると思っていたらそんなに面白さは味わえないのである。女囚映画のツボは押さえられてはいるものの、描き方がかなりあっさりとしているため、同ジャンルの“イルザ三部作”や『残酷女刑務所』を観た方にとっては少し物足りないだろう。女囚たちのオールヌードが堪能できるシャワーシーンの多用は良いが、パツキン美女の美裸体は皆無、シャワー室でのタイマン勝負が服を剥ぎ取るキャットファイトではない、電気ショック療法による拷問も印象が弱いという感じだから全体的に平凡だ。この手の作品ならではのエログロナンセンスな悪趣味らしさを存分に発揮していれば面白く仕上がっていただろう。逆にこのような描写が苦手だと言う方にとってはこの程度で十分かも知れない。

ラストの銃撃戦は西部劇風の仕上がりでかなり気合が入っており、面白さをしっかりと味わえるのが何よりも良い。このラストで本作が秘めている面白さが一気に爆発したのである。

とにかく本作は悪趣味系女囚映画ではなく、B級セクシーアクションという感じの女囚映画だ。

【45点】

Photo

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2009年3月27日 (金)

いとしい人

オスカー女優へレン・ハントの記念すべき監督デビュー作であり、主演、脚本、製作の四役を務めた意欲作。

39歳の小学校教師エイプリル(ヘレン・ハント)は、年下の同僚ベン(マシュー・ブロデリック)と結婚してから10ヶ月目に突入。早く出産したいと思っているエイプリルは、ベンから突然の離婚を申しだされてしまう。さらに、その翌日に養母が他界し、人気TVタレントのバーニス(ベット・ミドラー)が実母だと名乗ってエイプリルの前に現れる。

結婚、離婚、恋愛、仕事、妊娠、出産といった女性が生きていく上での問題をテーマにした中年女性のラブロマンスをほのかなコメディーテイストを取り入れて描いている。

様々な問題による悩み多き中年女性エイプリルをヘレン・ハントが等身大で演じる。大人になりきれない元夫ベン、騒々しい実母バーニス、そして新しい彼氏となるエイプリルの生徒の父親で作家のフランクリン(コリン・ファース)といった三人がエイプリルに絡み、彼女を複雑な思いにさせたり、時には良い思いをさせたりする。

エイプリルを含めた四人の主要キャストの中でもベット・ミラー扮するバーニスの存在が一番大きく、本作の特色であるコメディーテイストの面白さをしっかりと昇華させている名キャラクターである。彼女が名優スティーブ・マックイーンが夫でエイプリルの実父と言うシーンは、「絶対ない」とわかっていても興味をそそられてしまい、強く印象に残る。

本作はシリアスな一面が描かれており、そのイメージが強いがためにコメディーテイストを取り入れてもその要素がやや弱く感じてしまい、思い切って笑えない。エイプリルという崖っぷち女の苦悩はリアルに描かれ、この描写の方が強く印象に残ってしまう。彼女が幸せを求めて一歩前進しようとする前向きな姿勢が描かれ、これが現代の悩み多き女性に対するヒント、メッセージとして用意されている点は好意的でポイントは大きいと言える。

【65点】

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2008年12月 5日 (金)

エグザイル/絆

舞台は中国返還が迫るマカオ。香港マフィアのウー(ニック・チョン)は、ボスのフェイ(サイモン・ヤム)を裏切って逃走し、今では妻と赤ん坊と暮らしている。ウーの家の前に四人の男が現れる。フェイにウーの殺害を命じられたブレイズ(アンソニー・ウォン)とタイ(フランシス・ン)とウーを守ろうとするキャット(ロイ・チョン)とファット(ラム・シュ)。ウーと四人の男たちは、少年時代から仲が良く、共に過ごしてきた仲間であった。五人が揃ったときに凄まじい銃撃戦が繰り広げられるが・・・・・・。

監督はジョニー・トー。同監督の『ザ・ミッション/非情の掟』(99)の主要キャストを再結集させ、監督は正式的な続編ではないものの続編を意識して製作したと言う。

本作の驚くべきポイントは、脚本がまったくないということだ。その上に撮影スケジュールも決まっておらず九ヶ月の歳月を掛けて完成させたのである。ストーリーは二転三転するが、これは恐らく脚本なしの監督の気ままな思いつきによるものだと捉えることができる。

アクション映画としての見せ場は、やはり随所に散りばめられた銃撃戦だ。特に中盤あたりで観られる多数のマフィアたちが発砲し、スローモーションで描いた華麗なる銃撃戦絵図はスタイリッシュな映像がさらに洗練されてカッコよさをグンとアップさせた上に芸術的な銃撃戦とも思えるような出来栄えとなっている。銃撃戦の数々はとにかく観る者を圧倒させ、存分に楽しませてくれること間違いなしだ。

男たちの絆と運命といった主たるテーマの描き方にも面白さが感じられる。特にウーが死んでからブレイズ、タイ、キャット、ファットが漂流するが、ここで観られる軽いワルふざけは学生時代のバカ騒ぎを思わせ、ユーモアな描き方が微笑ませてくれる。彼らが本当に昔から仲が良かったことや今でも少年時代の心を持ち合わせていることを証明しているようだ。また、このシーンは風景と見事にマッチしていてノスタルジックな雰囲気がとても味わい深い。

かつてのマカロニウエスタンやバイオレンス・アクション仕立ての西部劇の名作『ワイルドバンチ』(69)を意識した作風は、本作が描く男の絆というテーマに相応しい。これぞ男の美学、男気映画の傑作と言い切れる作品だ。

【70点】

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2008年11月20日 (木)

ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動

ウガンダ北部のパトンゴ避難民キャンプで暮らす子供たちが年に一度だけ開催される全国音楽大会に向けて練習する姿と大会終了後までを記録したドキュメンタリー作品。

アチョリ族が暮らすウガンダ北部。そこは、20年以上に渡って反政府武装組織LRA(神の抵抗軍)による殺戮、襲撃が住民たちを恐怖のドン底に陥れ、多くの避難民を生み出してきた。特に幼い子供たちは、LRAの連中によって拉致され、少年兵や慰安婦にさせられていた。この非人道的かつ残酷な真実をドミニク、ナンシー、ローズの三人の少年少女にスポットを当てて浮き彫りにしていく。

本作の主役である彼らは、皆同じようにLRAによって恐怖の目に晒され、心に深すぎる傷をつけられ、人生の一部を痛めつけられた。彼らの口からは想像を絶するようなトンデモナイ残酷実体験が語られる。深刻な顔をアップで捉え、暗い曇り空で覆われた大自然を映し出したりと彼らの暗い過去を映像でもしっかりと伝えている。これらが観る者の良心を痛ませ、辛さと悲しさが心を疼かせる。

そんな彼らも音楽とダンスに打ち込んでいるときはかつての悲惨な出来事を忘れ、笑顔でいることができる。木琴の腕前に大きな自信を持つドミニク、殺された父に歌の才能を認められたローズ、ダンスを得意とするナンシーが全国大会優勝に向けて厳しい練習に一生懸命励む。これは、身も心もボロボロになった彼らが人生の汚点を晴らすためでもある。同時に大会に出場し、練習の成果を発揮して優勝することで将来の夢を大きく切り開いていくためでもある。大会で良い結果を迎えるラストは、本当に清々しくて気持ちの良いシーンだ。彼らにとっては音楽とダンスが唯一の癒しの手段ということと不幸すぎる出来事を経験したことを覆したいという思いがあったからこそ厳しい練習に耐えることができ、よって良い結果を勝ち取り、一つの大きな幸せを掴むことができたと考えられる。

ちなみにこの大会で北部の最大危険地帯であるパトンゴの学校が出場したのはこれが初めてであり、記念すべき出来事であった。最後にマイナスイメージで捉えられていたパトンゴの子供たちでもこんなに素晴らしいことができるのだと自信を持って語るシーンは、観る者に大きな勇気と希望を与えてくれる。

とてつもなく辛い思いをしている人は、好きなことに打ち込んで素晴らしい結果を導き出し、今後の人生を大きく切り開いてみてはどうだろうか・・・・・・。本作はそんなことをメッセージとして伝えているのである。

【85点】

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