2009年10月19日 (月)

アドレナリン:ハイ・ボルテージ

ヘリコプターから落下して死んだはずの殺し屋チェリオス(ジェイソン・ステイサム)は、中国マフィアたちの手によって心臓を奪われ、代わりに機械の人工心臓を埋め込まれてしまう。チェリオスは、人工心臓のバッテリーが切れそうになると常に自身の身体を充電しながらも心臓を取り戻すべく突っ走り、敵を追い詰めて行く。

ハイテンションなおバカ系アクション・コメディー『アドレナリン』の第二弾。前作以上におバカのボルテージはアップしており、クレイジーかつデンジャラスに仕上がった。

とにかくインパクトが強過ぎる描写がこれでもかと言わんばかりに連打される。チェリオスが敵の尻穴にショットガンをブチ込み、中国人娼婦リア(バイ・リン)が男の股間を自転車で何度も叩きつけたり、顔面タトゥー野郎が自身の両乳首をナイフで削ぎ落としたりといった描写は、正気の沙汰ではない。ブッ飛んでいるとしか言いようがない。しかも、観ていてかなり痛々しい。

そして、今回もチェリオスとイブ(エイミー・スマート)の公然セックスが観られるが、これもまた前作以上にレベルアップしている。競馬レース場にて馬が走っているど真ん中で二人は堂々とやってしまう。大勢の観客はレースよりも二人の本番行為を大いに楽しみ、大盛況となる。競馬場がリアルポルノ場になってしまう描写は、おバカの限度を超越している。しかもボカシまで施されているのだから、これぞハードコア・ポルノだ。とにかく凄すぎる。日本AV男優のカリスマ加藤鷹サンがこれを観たら舌を巻いてしまうこと間違いなしだと思える。エロ描写の最大の見せ場はこのシーンであるが、他にも裸体を曝け出した女たちがやたらと登場し、無駄なエロさが追求されている。これが本作の持っているB級感覚を一段と高めていると言える。

本作はおバカさばかりが取り柄ではなく、アクション、バイオレンスの面でもしっかりと面白く仕上がっていると言い切れる。ステイサムが繰り広げる殴る蹴るといった格闘アクションや序盤のストリップ劇場や後半の屋外プールでの大銃撃戦は、アクション映画としての面白さを存分に味わえるので良い。しかも、前述した裸体女が銃をガンガンブッ放すのだから、クレイジーなB級アクションとして仕上がっている。狂ったおバカさだけが目立つばかりではなく、アクションや痛々しいバイオレンスもしっかりと機能しているのが本作の良きポイントだ。

映像面でも前作同様に趣向が凝らされており、今回もスクリーンからアドレナリンが放出されているような感じがするキレ味抜群の映像作りが魅力的だ。しかも、この映像が作品のテンポを良くしていると言える。

とにかく最初から最後まで狂った面白さがフルスロットルの本作。作り手も遊び心を活かし過ぎて悪ノリし過ぎていることがしっかりと伝わってくる。ここまでして荒唐無稽、破天荒をやり切っているのだから、観る者もバカになって思う存分に楽しまなければ損だと言いたい。

もし第三弾が作られるのなら、個人的には是非ともやって頂きたい。今回はR18+だったが、第三弾はX指定で大ハードなおバカ、クレイジー、荒唐無稽を魅せて欲しいものだ。もちろん、アクションもカーチェイスや大爆破を取り入れてシリーズ最大の面白さを発揮して頂きたい。

【75点】

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2009年10月11日 (日)

狼の死刑宣告

チャールズ・ブロンソン主演の“デス・ウィッシュ”シリーズの第一弾でブロンソン映画の傑作として未だに人気の高い『狼よさらば』(74)の原作は、ブライアン・ガーフィールドの同名小説であり、その続編に当たる「Death Sentence」はシリーズの原作として映像化されなかった。だが、ブロンソン亡き後に映像化がやっと実現したのである。監督は、年一回のペースで世に送り出されている『ソウ』シリーズの生みの親であるジェームズ・ワン。

投資会社勤務のヒューム(ケビン・ベーコン)は、ごく普通の真面目なサラリーマンであり、妻と息子二人の四人家族で幸せな生活を送っている。ある日、ヒュームはホッケーの試合を終えた長男ブレンダンを車に乗せて帰路に向かっている途中にガソリンが少なくなり、スタンドで給油をするが、その時、武装したギャング団がスタンドを襲撃する。ブレンダンはヒュームの目の前で首を刃物で切られてしまい、病院に搬送したものの死亡。連中は逮捕されたが、ヒュームは刑罰内容に納得できず、法の裁きを断念。ブレンダン殺しの張本人は釈放されてしまう。怒りに怒りを重ねたヒュームは、警察や法律といった手段を一切使わずに自らの手で連中を蹴散らすことを決意。復讐に燃える一匹狼となったヒュームの孤独な戦争が始まった。

70年代前半から80年代半ば頃に多数製作されたヴィジランティ系アクション映画の雰囲気を再現させた本作は、単純明快でわかり易い上にかなり面白く仕上がっている。しかも男心を存分にくすぐらせてくれるのだからこんな作品を待っていたという男性には、持って来いだ。

内容は、まさに『狼よさらば』に似通っている点も観られるが、アクション映画としての魅せ方は非常に秀逸であり、ド派手な爆破や激しいカーチェイスはないものの面白さをしっかりと味わえるように作られていることが何よりも良い。

ヒュームが一人殺すと自身に危険がじわじわと迫り、それが更なる悲劇を招いてしまう。その後は面白さがヒートアップしていく。ブレンダンの革ジャンを着込み、頭を刈り、身も心も傷ついた復讐の狼、鬼、戦士として敵を追い求め、ショットガンで蹴散らしていく。ここで描かれる銃撃戦は、これぞスーパー・バイオレンス・アクションと呼ぶに相応しい描き方であり、強烈さを遺憾なく発揮している。しかもこれがかつての勧善懲悪系アクション映画のようにスカっと良い気分にさせてくれる。とにかく細かいことに拘ったり、ゴチャゴチャとツッコミを入れたりせずに素直に受け入れて楽しむべきだ。ようは、理屈抜きに楽しんだ者勝ちということなのである。

アクションやバイオレンスも良いが、ケビン・ベーコンの姿も最高だ。先般公開された『96時間』も娘を拉致して傷物にした敵を相手にリーアム・ニーソン扮する元凄腕スパイのオヤジがハイテンションに大暴れするというアクション作品だったが、本作のケビンの暴走オヤジも良い味を発揮している。アクション面は、リーアムのオヤジは元凄腕スパイということでハードに描かれたが、本作のケビンのオヤジは普通の真面目なリーマンということで派手さは抑え目で丁度良い感じであるもののそれにしても少しやり過ぎているという感じもする。男臭さの面では、リーアムよりも遥かにケビンの方が勝っている。眉間にシワを寄せ、次第に寡黙な男へと変貌していく模様は、真の男への成長なのだ。しかも敵連中を蹴散らしていく姿からは、鶴田浩二や高倉健が活躍した一連の東映任侠ヤクザ映画や『ローリング・サンダー』(77)のウィリアム・ディヴェインを彷彿とさせ、これが面白さの一つだと捉えることもできる。とにかくアクションスターではないケビン・ベーコンのアウトロー系アクション映画のアンチヒーローは最高だと言いたい。

古き良き時代の男性向け娯楽アクションの復活というべき本作は、アクション映画好き男児にはオススメだ!!と言うよりも絶対に観るべきだと言いたい!!

【75点】

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2009年9月13日 (日)

アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ

生身の肉体だけで障害物をスピーディーに乗り越えていくフランス発のスタント・パフォーマンス“パルクール”に格闘技要素を加えて魅せつけた新感覚アクション『アルティメット』の続編。監督はパトリック・アレサンドランが担当。

パリ郊外の犯罪多発地帯バンリュー13地区にて警官射殺事件が発生する。これを機に政府は地区の一掃計画に乗り出す。しかし、それは秘密保安介入局長官ガスマン(ダニエル・デュバル)が仕組んだ陰謀であった。これに気づいたレイト(ダヴィッド・ベル)は、麻薬所持の濡れ衣を着せられて投獄されているダミアン刑事(シリル・ラファエリ)を脱獄させ、地区の様々なギャングたちとこの巨悪に挑む。

今回もビルとビルの間を飛び跳ねたり高所から地面に着地したりといった超人的な神業が披露される。これらのパフォーマンスアクションは、前作同様にスタント、ワイヤー、CGを一切使っていないのである。前作及び本作の最大の見所と言えば間違いなくこのアクションであり、これだけでも観る価値は大いにありと言っても良いほどだ。

他にもダミアン刑事役のシリルが魅せつける格闘アクションも印象深い。数名の敵を華麗なる打撃で蹴散らす姿は、『トランスポーター』シリーズのジェイソン・ステイサムと良い勝負という感じであり、観る者を良い気分にさせてくれる。また、レイトによるダミアン脱獄作戦の直後に観られるビル内の廊下を車で激走してそのまま窓を突き破ってダイブするシーンもインパクトが大きくて忘れられないほどの印象を与えてくれる。

ダミアン&レイトの最強タッグをサポートするギャング連中も面白さを昇華させている。中でもエロカッコ良さとアウトロー的魅力が絶妙にミックスされた中国系マフィアの女ボスであるタオ(エロディー・ユン)の存在は大きく、彼女が魅せつける格闘アクションは注目度が高い。他のギャング連中も個性的なキャラクターではあるが、タオに比べるとやや薄弱な感じがする。漫画に登場するようなビジュアルのギャング連中の存在は、作品が持つ荒唐無稽さをより一層高めており、これが面白さに繋がっていると捉えることができる。

【70点】

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2009年9月12日 (土)

男と女の不都合な真実

TVプロデューサーのアビー(キャサリン・ハイグル)は頭もキレ、仕事でも腕が立つ美女。だが、恋愛面では完璧な男を求めていることが原因でご無沙汰状態。ある日、彼女は隣に住む医者コリン(エリック・ウィンター)に出会う。イケメンで誠実な人柄の彼は条件にピッタリだが、なかなか良い関係を築けない。そんな折、アビーは上司から恋愛相談番組の名物恋愛カウンセラーのマイク(ジェラルド・バトラー)とチームを組むようにと依頼される。下品極まりない下ネタが売りのマイクがコリンとうまくいけるようにするための男女間の凄まじい本音や恋愛テクをアビーに指導していくが・・・・・・。

下ネタで笑いを誘うラブコメディーである本作は、とにかく露骨な性関係の言葉が飛び交う。だが、下ネタだけが取り柄のおバカ作品作品にならないようにやり過ぎることなく、恋愛映画らしい描写をしっかりと描き、下ネタギャグも笑えるギャグとして成立させていることが良く、しかもかなり面白い。中でも野球観戦デートのシーンや会食シーンでのアビーが穿いているバイブ付下着によるおバカな下ネタギャグは強烈なインパクトを与えてくれること間違いなしであり、そのあまりの過激さにヒヤヒヤさせられる。他にもエレベーターのドアでのベタなギャグも良い。

主人公アビーがTV番組プロデューサーということでその仕事ぶりや生放送番組の舞台裏が垣間見ることができ、笑える下ネタギャグの次に興味深いポイントだと言える。

本作は明らかに女性よりも男性にウケるラブコメディーだと言っても良いだろう。成人男性はハラハラドキドキしながらもニヤニヤ笑って存分に楽しむべきだ。

【75点】

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2009年6月13日 (土)

女刑務所 白昼の暴動 (ケージド・ヒート 女囚物語)

強盗に失敗したジャッキー(エリカ・キャビン)は車椅子の女マックィーンが所長を努める女刑務所にブチ込まれる。サディスティックな医師による電気ショック療法をはじめとする様々な暴力が女囚たちを苦しめるこのム所から脱獄するべくジャッキーは姉貴的存在のマギー(ファニタ・ブラウン)と共謀する。

70年代に量産された女囚映画の傑作的作品。監督は後に『羊たちの沈黙』(93)でオスカーを獲得するジョナサン・デミで本作がデビュー作である。オスカー監督がこのような作品を撮っていたということに驚かされるが、日本のメジャー監督がポルノ映画で場数を踏んでいたことを考えるとさほど驚くことではないのである。

ジャッキーと仲間の男が強盗をやらかし、警官が発砲して追跡するシーンで始まる。ノリの良いアクションという感じで描かれているのでこのまま女囚映画ならではの見せ場も面白く描かれると思っていたらそんなに面白さは味わえないのである。女囚映画のツボは押さえられてはいるものの、描き方がかなりあっさりとしているため、同ジャンルの“イルザ三部作”や『残酷女刑務所』を観た方にとっては少し物足りないだろう。女囚たちのオールヌードが堪能できるシャワーシーンの多用は良いが、パツキン美女の美裸体は皆無、シャワー室でのタイマン勝負が服を剥ぎ取るキャットファイトではない、電気ショック療法による拷問も印象が弱いという感じだから全体的に平凡だ。この手の作品ならではのエログロナンセンスな悪趣味らしさを存分に発揮していれば面白く仕上がっていただろう。逆にこのような描写が苦手だと言う方にとってはこの程度で十分かも知れない。

ラストの銃撃戦は西部劇風の仕上がりでかなり気合が入っており、面白さをしっかりと味わえるのが何よりも良い。このラストで本作が秘めている面白さが一気に爆発したのである。

とにかく本作は悪趣味系女囚映画ではなく、B級セクシーアクションという感じの女囚映画だ。

【45点】

Photo

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2009年3月27日 (金)

いとしい人

オスカー女優へレン・ハントの記念すべき監督デビュー作であり、主演、脚本、製作の四役を務めた意欲作。

39歳の小学校教師エイプリル(ヘレン・ハント)は、年下の同僚ベン(マシュー・ブロデリック)と結婚してから10ヶ月目に突入。早く出産したいと思っているエイプリルは、ベンから突然の離婚を申しだされてしまう。さらに、その翌日に養母が他界し、人気TVタレントのバーニス(ベット・ミドラー)が実母だと名乗ってエイプリルの前に現れる。

結婚、離婚、恋愛、仕事、妊娠、出産といった女性が生きていく上での問題をテーマにした中年女性のラブロマンスをほのかなコメディーテイストを取り入れて描いている。

様々な問題による悩み多き中年女性エイプリルをヘレン・ハントが等身大で演じる。大人になりきれない元夫ベン、騒々しい実母バーニス、そして新しい彼氏となるエイプリルの生徒の父親で作家のフランクリン(コリン・ファース)といった三人がエイプリルに絡み、彼女を複雑な思いにさせたり、時には良い思いをさせたりする。

エイプリルを含めた四人の主要キャストの中でもベット・ミラー扮するバーニスの存在が一番大きく、本作の特色であるコメディーテイストの面白さをしっかりと昇華させている名キャラクターである。彼女が名優スティーブ・マックイーンが夫でエイプリルの実父と言うシーンは、「絶対ない」とわかっていても興味をそそられてしまい、強く印象に残る。

本作はシリアスな一面が描かれており、そのイメージが強いがためにコメディーテイストを取り入れてもその要素がやや弱く感じてしまい、思い切って笑えない。エイプリルという崖っぷち女の苦悩はリアルに描かれ、この描写の方が強く印象に残ってしまう。彼女が幸せを求めて一歩前進しようとする前向きな姿勢が描かれ、これが現代の悩み多き女性に対するヒント、メッセージとして用意されている点は好意的でポイントは大きいと言える。

【65点】

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2008年12月 5日 (金)

エグザイル/絆

舞台は中国返還が迫るマカオ。香港マフィアのウー(ニック・チョン)は、ボスのフェイ(サイモン・ヤム)を裏切って逃走し、今では妻と赤ん坊と暮らしている。ウーの家の前に四人の男が現れる。フェイにウーの殺害を命じられたブレイズ(アンソニー・ウォン)とタイ(フランシス・ン)とウーを守ろうとするキャット(ロイ・チョン)とファット(ラム・シュ)。ウーと四人の男たちは、少年時代から仲が良く、共に過ごしてきた仲間であった。五人が揃ったときに凄まじい銃撃戦が繰り広げられるが・・・・・・。

監督はジョニー・トー。同監督の『ザ・ミッション/非情の掟』(99)の主要キャストを再結集させ、監督は正式的な続編ではないものの続編を意識して製作したと言う。

本作の驚くべきポイントは、脚本がまったくないということだ。その上に撮影スケジュールも決まっておらず九ヶ月の歳月を掛けて完成させたのである。ストーリーは二転三転するが、これは恐らく脚本なしの監督の気ままな思いつきによるものだと捉えることができる。

アクション映画としての見せ場は、やはり随所に散りばめられた銃撃戦だ。特に中盤あたりで観られる多数のマフィアたちが発砲し、スローモーションで描いた華麗なる銃撃戦絵図はスタイリッシュな映像がさらに洗練されてカッコよさをグンとアップさせた上に芸術的な銃撃戦とも思えるような出来栄えとなっている。銃撃戦の数々はとにかく観る者を圧倒させ、存分に楽しませてくれること間違いなしだ。

男たちの絆と運命といった主たるテーマの描き方にも面白さが感じられる。特にウーが死んでからブレイズ、タイ、キャット、ファットが漂流するが、ここで観られる軽いワルふざけは学生時代のバカ騒ぎを思わせ、ユーモアな描き方が微笑ませてくれる。彼らが本当に昔から仲が良かったことや今でも少年時代の心を持ち合わせていることを証明しているようだ。また、このシーンは風景と見事にマッチしていてノスタルジックな雰囲気がとても味わい深い。

かつてのマカロニウエスタンやバイオレンス・アクション仕立ての西部劇の名作『ワイルドバンチ』(69)を意識した作風は、本作が描く男の絆というテーマに相応しい。これぞ男の美学、男気映画の傑作と言い切れる作品だ。

【70点】

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2008年11月20日 (木)

ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動

ウガンダ北部のパトンゴ避難民キャンプで暮らす子供たちが年に一度だけ開催される全国音楽大会に向けて練習する姿と大会終了後までを記録したドキュメンタリー作品。

アチョリ族が暮らすウガンダ北部。そこは、20年以上に渡って反政府武装組織LRA(神の抵抗軍)による殺戮、襲撃が住民たちを恐怖のドン底に陥れ、多くの避難民を生み出してきた。特に幼い子供たちは、LRAの連中によって拉致され、少年兵や慰安婦にさせられていた。この非人道的かつ残酷な真実をドミニク、ナンシー、ローズの三人の少年少女にスポットを当てて浮き彫りにしていく。

本作の主役である彼らは、皆同じようにLRAによって恐怖の目に晒され、心に深すぎる傷をつけられ、人生の一部を痛めつけられた。彼らの口からは想像を絶するようなトンデモナイ残酷実体験が語られる。深刻な顔をアップで捉え、暗い曇り空で覆われた大自然を映し出したりと彼らの暗い過去を映像でもしっかりと伝えている。これらが観る者の良心を痛ませ、辛さと悲しさが心を疼かせる。

そんな彼らも音楽とダンスに打ち込んでいるときはかつての悲惨な出来事を忘れ、笑顔でいることができる。木琴の腕前に大きな自信を持つドミニク、殺された父に歌の才能を認められたローズ、ダンスを得意とするナンシーが全国大会優勝に向けて厳しい練習に一生懸命励む。これは、身も心もボロボロになった彼らが人生の汚点を晴らすためでもある。同時に大会に出場し、練習の成果を発揮して優勝することで将来の夢を大きく切り開いていくためでもある。大会で良い結果を迎えるラストは、本当に清々しくて気持ちの良いシーンだ。彼らにとっては音楽とダンスが唯一の癒しの手段ということと不幸すぎる出来事を経験したことを覆したいという思いがあったからこそ厳しい練習に耐えることができ、よって良い結果を勝ち取り、一つの大きな幸せを掴むことができたと考えられる。

ちなみにこの大会で北部の最大危険地帯であるパトンゴの学校が出場したのはこれが初めてであり、記念すべき出来事であった。最後にマイナスイメージで捉えられていたパトンゴの子供たちでもこんなに素晴らしいことができるのだと自信を持って語るシーンは、観る者に大きな勇気と希望を与えてくれる。

とてつもなく辛い思いをしている人は、好きなことに打ち込んで素晴らしい結果を導き出し、今後の人生を大きく切り開いてみてはどうだろうか・・・・・・。本作はそんなことをメッセージとして伝えているのである。

【85点】

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2008年9月29日 (月)

愛に向って走れ

エディ(ジョン・シュナイダー)は、船を買うための金と息子の病気の治療費を稼ぐためにフロリダからテキサスに越し、前職よりも給料が良い油田に就職する。一生懸命に働いていた彼は、現場監督と地元警察が組んで不正に給料を天引きしていることに腹を立てて対立し、その上に無実の罪を着せられて投獄されてしまう。面会に訪れる愛妻と逃亡計画を企てたエディはついに脱獄し、妻子が待つメキシコ国境を目指して逃走を続ける。逃走途中で暴行されているテキサス州知事の姪ジリー(リー・パーセル)を助ける。ジリーが助けてくれたお礼としてエディの逃亡に協力するということで二人で目的地へと向うが、敏腕刑事マーザック(カーク・ダグラス)が執拗に追い詰める。

日本では劇場公開後、何度もTVの洋画劇場で放映された作品である。アクション映画ではあるもののロードムービーの要素を強く押し出しているのが特徴的である。80年代の作品であるものの作風からは70年代の低予算娯楽アクション作品の雰囲気がほんのりと漂ってくる。これが魅力の一つとも言えるのである。

アクション映画としては地味な感じであり、変に期待しすぎると肩透かしを喰らわせられること間違いなしだと言える。それでも決して面白くない作品ではないことだけは事実だ。エディが逃走の途中で男二人と女一人の三人組にいたぶられるサディスティックなバイオレンス描写やラストのカーチェイスといった印象的な見せ場を用意していることによって面白くなっていると捉えることができるからである。特にカーチェイスが一番面白さを満喫できるシーンである。使用されるアップテンポなBGMが場面と良くマッチしており、ごく普通だと思えるようなシンプルなカーチェイスにスピード感とテンポの良さを醸し出させて面白さをグッと引き出しているのである。この音楽と場面の抜群の絡み合いが最後の最後で大味の面白さを堪能させてくれると同時にクライマックスに相応しいシーンに仕立て上げることに成功しているのである。

本作は、今となっては古き良き時代のB級娯楽アクション映画としての面白さを存分に味わえる作品だ。何度もTVで放映されたということに関しても観れば納得できるだろう。

【60点】

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2008年9月22日 (月)

アイアンマン

マーベル社の人気アメコミ作品が待望のスクリーンデビューを果たした。

実業家兼天才的発明家のトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)は、米政府とのパイプ役である大企業スターク・インダストリーズのCEO。彼は新兵器の実験をするべくアフガニスタンに訪れていたが、そこで武装テロ集団に襲撃され、拉致されてしまうが、同じく拉致されていたインセン医師(ショーン・トーブ)の手によって命を救われる。テロ集団に兵器製造を命じられた二人は、その目を盗んで最強のパワードスーツを完成させ、これを装着したトニーはテロ集団を蹴散らして脱出に成功する。その後、自社が製造した兵器がテロ組織に使用されている事実を知ったトニーはショックを受け、テロに苦しむ人々を助けたいという一心で新たなるパワードスーツを製造し、テロ集団に挑むのだが・・・・・・。

監督はジョン・ファヴロー。彼は役者としても知られているが、ファンタジックなコメディー作品を得意とし、様々なヒット作を生み出してきた。本作でも彼ならではのコミカルな描写が観られ、これが面白くさせるためのスパイスとしてしっかりと活かされている。

見所といえば、この手の作品ならではの迫力満点のド派手なシーンだ。このアイアンマンは、三度に渡って変化するが、変化するごとにパワーアップし、同時に見せ場となるアクションシーンもレベルアップして面白さが増してくるのである。日本の特撮ヒーロー番組のような感じではあるが、特撮ヒーロー番組やその他のアメコミ作品では変身能力のある者がヒーローに変身するが、このアイアンマンはごく普通の人間が才能を活かしてパワードスーツを製造し、完成したスーツを装着したときにやっとヒーローになれるというものだ。この手作りヒーローという点が新趣向であり、興味深い。そんなアイアンマンの活躍ぶりは、CGを駆使してダイナミックに描き、凄まじいシーンを連打させる。ついつい目を大きく見開いて観てしまうほどアクションシーンは強烈だ。心の底から面白さを実感でき、しっかりと楽しむことができるのが良い。

面白いのはアクションやパワードスーツの製造過程だけではない。トニーが今まで自分がやってきたことは本当に正しいことではないと思って兵器製造を中止させ、テロに苦しむ人々のためにできることをやっていくと誓うが、この心変わりが観ていて気持ちが良く、やっと本当のヒーローになれたのだという実感が湧いてくる。アイアンマンとなってテロリストの極悪行為に苦しめられている父子を救出するシーンは、正義のヒーローらしい定石的な描き方ではあるものの最高に良い印象を与えてくれる。また、トニーはセレブ的な存在であり、彼のリッチな生活ぶりや華やかなパーティーに出席したりというセレブらしさがしっかりと描かれており、これによって高級感を漂わせた格調の高い作品に仕上がっていることがわかる。

脇を固めるのはグイネス・パルトロウ、テレンス・ハワード、ジェフ・ブリッジスといった豪華な芸達者が顔を揃えており、彼らのキャラクター描写もしっかりとなされている。だから、アイアンマンの活躍だけでなく彼らの活躍ぶりも印象的なので注目すべきだと言い切れる。

本作こそ今までのアメコミ系SFヒーローアクション映画とは一味違った面白さを存分に味わえる作品だ。上映時間は二時間を少し越えるが、最初から最後まで様々な魅力や面白さがふんだんに取り入れられているため、退屈さや長さを感じることなく思いっきり楽しむことができる。

ちなみにロバート・ダウニー・Jr.扮するトニーは、先に公開された同じくマーベル社のアメコミ系SFヒーローアクション作品『インクレディブル・ハルク』(08)のラストシーンにも登場している。

本作の続編製作が既に決定しているようであるが、期待を良い意味で裏切れるような最高に面白い作品になることを望んでいる。

【90点】

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2008年9月18日 (木)

ウォンテッド

『ナイト・ウォッチ』(04)、『デイ・ウォッチ』(06)でお馴染みのロシア人監督ティムール・ベクマンべトフがハリウッド進出を果たした作品。原作はあの『マトリックス』シリーズの影響を受けたというマーク・ミラーとJ・G・ジョーンズによる同名の人気コミック。

仕事はうまく行かず、恋人は職場の友人に寝取られるという具合に惨めな青年ウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)。ある日、彼は謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)に出会い、これが彼の運命に多大な変化をもたらせることとなる。

本作の魅力は、何と言ってもブッ飛びまくったド派手なアクションシーンの数々であることに間違いはない。とにかくケレン味たっぷりで視神経を刺激させまくると言っても良い程の迫力満点のアクション描写はまさに新感覚と言える。そして、インパクトが強すぎるシーンがこれでもかと言わんばかりに連打され、様々なシーンが脳裏に焼きついてしまう。特に銃弾がカーブを描いて標的に直撃するシーンは本作を語る上では絶対に外すことができないほどの名シーンであり、これは一度観たら絶対に忘れられないだろう。他にもラストのネズミ軍団が次々と爆破するシーン等の見所が満載であり、少し変わったアイデアを活かせたアクション演出は実に面白いのでそこはしっかりと評価すべきポイントである。とにかく荒唐無稽でややクレイジーな描写がアドレナリン大放出の映像に仕上がっている。

アクション以外にもウェスリーが殺し屋になるための修行を積むシーンのバイオレンスや思わずニヤリとしてしまうようなコミカルな描写が加味されており、これによって面白さが倍増されている。エンターテイメントにとことん徹した作り方であることがわかり、この姿勢を大いに讃えたい。

キャストに関しても最高だと言える。主役であるイギリス人俳優ジェームズ・マカヴォイをはじめアンジェリーナ・ジョリーとモーガン・フリーマンというハリウッド最強の二大スター、さらにテレンス・スタンプ、ラッパーのコモンと芸達者がズラリと揃っており、これだけでも美味しいと思える。中でもアンジー扮するサディスティックな美女の存在がかなり大きく、作品に多大な影響を与えていることは言うまでもない。凄まじいアクションを披露している上にタトゥーが彫り込まれた筋肉質な背中と美尻を一瞬だけ魅せつけるというちょっとしたセクシーサービスまで提供している。さらにマカヴォイ扮するウェスリーをビシビシと痛めつける。これはアンジーファンのM男たちにとっては萌えること間違いなしであり、そういった方は絶対必見だと言い切れる。それぐらいアンジーのキャラクターは凄すぎるのである。

ハリウッド製アクションに進化をもたらした一本と言っても過言ではない作品である。今後は、本作と肩を並べるような作品が続々と現れることだろう。そして、本作を超えるような作品の出現にも大きく期待したい。

【90点】

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2008年7月28日 (月)

インクレディブル・ハルク

マーベル・コミックの人気キャラクター「ハルク」を実写化した作品。「ハルク」は、2003年に初めて実写映画化され、今回が二度目となる。だが、本作は2003年版の続編ではなく、キャスト、ストーリー、作風等を一新したまったくの別物である。

科学者ブルース・バナー(エドワード・ノートン)は、元カノのベティ(リブ・タイラー)の父親であるロス将軍(ウィリアム・ハート)のもとで化学実験に取り組んでいたが、研究中の事故によってガンマ線を全身に浴びてしまう。これが原因でブルースは怒りや恐怖を感じて心拍数が200を超えると緑色の巨大モンスター“ハルク”に変貌する身となる。そんなハルクのパワーを利用しようと企む軍と戦うべくブルースは敢えてハルクに変身して激闘を繰り広げる。

監督はアクションを得意とするルイ・レテリエ。彼ならではのアクション描写がセールスポイントとなっており、三つの見せ場が用意されている。まずは、前半のブラジルの工場内でのバトル、次に中盤のヴァージニア大学校内での軍との壮絶なバトル、そしてクライマックスのニューヨーク市街で巨大モンスター化したエミル・ブロンスキー(ティム・ロス)とのモンスターバトルというメニューだ。これらのシーンはとにかく満点の迫力をしっかりと醸し出しており、パワフルかつダイナミックに描かれている。手に汗を握るほどの興奮と刺激を存分に味わうことができ、とてつもないパワーを感じさせてくれる映像が観る者を圧倒させる。特にクライマックスは特撮怪獣映画で描かれるような怪獣同士の対決とほぼ似通っているため、特撮ファンにとっては嬉しく思えること間違いなしだ。とにかく三つの見せ場は最も注目すべきポイントであり、面白さが最大限に発揮されているため目を凝らして観て頂きたい。

アクション以外の面白いポイントと言えば、意外だと思える二人のカメオ出演者である。まずは、ブルースが逃亡先のブラジルで心拍数を上げないための呼吸法を武術家のもとで訓練するシーンがある。この武術家を演じているのは、あの有名な400戦無敗を誇る最強格闘家ヒクソン・グレイシーだ。このキャラクターの描き方は、ヒクソンをそのまま利用したような感じであるため格闘技ファンにとっては必見だと言える。そして、ラストシーンに登場する人物にはかなり驚愕させられる。その人物は、本作と同じくマーベル・コミックが原作の映画『アイアンマン』(08)の主役ロバート・ダウニー・JR.であり、アイアンマンことトニー・スタークそのまんまのキャラクターで登場してロス将軍と絡む。最後の最後にサプライズなプレゼントとしてアイアンマンが用意されたのだから、本作を観たのであれば『アイアンマン』も絶対に観なければいけないと自然にもそう思えてしまう。これに関しては、会社側の戦略の一つとも予想できる。

本作は、最初から最後の最後まで面白さをぎっしりと詰め込んだ超大作娯楽作品だと言いたい。そして、2003年版を観ていない方は、本作を楽しむために無理をしてでも2003年版を見る必要はないということも言いたい。まったく別物の作品だからストレートに本作から観ても全然ありだと断言したい。

【85点】

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2008年6月26日 (木)

エクスタミネーター

ベトナム還りのジョン(ロバート・ギンティ)は、戦地で自身を助けてくれた友人マイケル(スティーヴ・ジェームズ)が街のヤンキーたちの手によって半身不随にされたことにマジギレし、街の悪党どもを戦争の経験を活かして私刑しまくる。

主演のロバート・ギンティとジェームズ・グリッケンハウス監督の名を世間に知らしめた80年代バイオレンスアクションの代表作と言うよりも駄作。

当時、“人肉ミンチ”や“焼きゴテリンチ”といった残酷なバイオレンスシーンが売りモノとして話題を呼んだが、いざ蓋を開けて観るとこれらのシーンはかなり的外れの陳腐な出来栄えだった。冒頭で観られる戦地の捕虜の斬首シーンは、当時は観る者にかなりの衝撃を与えたが、今ではこれを超えるようなシーンはいくらでも存在する。凄まじく酷い魅せ方が出来るようなシーンを巧く活かすことができていないため、肩透かしと空回りの連続という具合だ。グリッケンハウス監督の演出力の乏しさがあからさまになっているのである。

本作で面白いシーンと言えば、まずはオープニングで夜の山を背景に大爆破炎上が起こり、主人公ジョンが吹っ飛んで来るシーンとそれに続いて連打される大爆破シーンだ。爆破アクションだけはパワフルな勢いを感じさせ、かなり見応えがある。次は、ジョンが番犬と悪戦苦闘し、番犬を殺した後に軽く洗顔するが、その顔がいかにも辛さ満点という感じでこれがまた強く印象に残る。

四年後には、再びギンティ主演で続編『エクスタミネーター2』が製作されたが、日本では劇場未公開のビデオスルーとなった。また、テレビ東京は本作と一切関係がないギンティ主演の娯楽アクション作品を洋画劇場で放映する際は、この『エクスタミネーター』の名称を勝手に利用して勝手にシリーズ化させてしまったのである。日本でロバート・ギンティと言えば、“エクスタミネーター野郎”として記憶している方々も少なくはないようだ。

【40点】

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2008年6月24日 (火)

赤い風船

40分の短編作品『白い馬』(52)で世界的に注目を集めたアルベール・ラモリス監督の第二作目でこちらも36分の短編作品。カンヌ国際映画祭の短編作品賞をはじめ、様々な映画賞を獲得した世界的にも名声が高い最高の名作である。そんな本作がデジタルリマスターによってより鮮明な映像へとパワーアップし、2007年に『白い馬』(53年度短編作品賞受賞)とともに再びカンヌ国際映画祭に出品された(監督週間出品として)。同じ作品が二度に渡って出品されるということは、この映画祭においても史上初の出来事だった。そして、2008年にデジタルリマスター化された両作品のリヴァイバル上映が決定し、再び名作が公のスクリーンに帰ってくることとなった。

少年(パスカル・ラモリス)は学校へ向かう途中、街灯に引っ掛かっている赤い風船を見つけ、よじ登って手にする。少年と風船は仲良くなり、風船は少年の後をずっと付いて行く。

監督は『白い馬』の直後に本作の製作に取り掛かり、入念な準備を整えて一年で完成させた。風船を擬人化させるというアイデアは面白いが、映像技術が発達している現在ではこのような作品を製作することは容易なことである。だが、当時でここまで巧く作り上げることができたということには、ひどく驚愕させられた。同時にいかにして演出したのかということもかなり気掛かりとなった。観ていると監督の一年間の苦労がこちらにも伝わってくるのである。

全体的に言えば、詩情豊かに描かれ、パリの街並風景の美しさやファンタジックな要素が魅力的である。鮮やかな美しさで綴られた映像詩だと言える。また、それぞれのカットが芸術写真のような出来栄えで印象深く、これこそ本当の活動写真と呼ぶに相応しい。終盤で悪ガキたちが風船に石をぶつけたことによってしぼんでしまい、さらに悪ガキの一人が片足で踏み潰してしまう。街中の色とりどりの風船が怒って宙を舞い、少年と死んだ赤い風船がいる場所へと向かう。数々の風船が少年にまとわりつき、少年は風船と共に大空へと飛び立つ。このラストで詩的な映像美は最高潮に達すが、“友達である風船の死”というペーソスな雰囲気が織り交ぜられるが、ファンタジックなムードがこの悲しみを優しく包み込む。死んだ風船に代わって少年が天へ召されるかのような描き方はやや酷だとは思えるが、美しさと優しさに満ちたイメージが強く印象に残る。このラストシーンを観ていると監督が五年後に完成させた次回作『素晴らしい風船旅行』(61)の予兆を感じてしまう。

本作の影響を受けた映画人は現在でも数多く存在する。中でもホウ・シャオシェン監督は、2007年に本作にオマージュを捧げた作品『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』を撮り、こちらも2007年度カンヌ国際映画祭に出品され、本作とともに賞賛され、話題を集めた。

私にとっては、デジタルリマスター版が二度目の鑑賞となるのだが、二度観ても映像の美しさと優しい雰囲気に酔いしれてしまった。本作こそ何度観ても良い気分、嬉しい気持ちにさせてくれる作品の代表例だ。今回のリヴァイバル上映で是非ともこの名作を新しい世代にも知っていただききたい。同時に次の世代にも語り継いでいただきたい。36分という短時間だから、暇な方はもちろん、忙しい方にこそ観ていただきたい。

【100点】

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2008年6月21日 (土)

いま ここにある風景

有名なカナダ人の写真家エドワード・バーティンスキーが中国を訪れ、産業発展がこの国にもたらせた巨大な影響を写真に捉える姿を記録した環境問題ドキュメンタリー。

スクリーンに映し出されるバーティンスキーの写真の数々。人類が造り出した病的なモノを捉えた写真でさえ、出来栄えは美しさに満ち溢れていて観る者を驚愕させる。

環境問題を訴えると同時に、中国の厳しい労働条件や国民の貧しい生活状況といった部分もしっかりと捉えている。

近年、我が国日本でも中国製の汚染された有害食品問題をはじめとする様々な環境問題がメディアで取り沙汰されている。こんなご時世に本作が公開されるということは、まさにタイムリーである。この機会に中国の経済産業の実態と人類や地球に与えるデメリット等をじっくりと考えてみることをオススメしたい。

上映時間は87分とこれまた手軽にまとめたことも高く評価したい。内容からすれば、これぐらいの時間が丁度相応しい。冒頭の工場内のラインをカメラが平行移動で写した約8分に及ぶ長回し撮影は、本作の特徴の一つであり、これが不思議に感じさせる。

【75点】

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2008年5月 1日 (木)

XYZマーダーズ

今では『スパイダーマン』シリーズで知られているサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』(85)に続く監督第二弾作品。

気が弱くて冴えない警備員のヴィク(リード・バーニー)は、好きな女であるナンシー(シェリー・J・ウィルソン)とともに殺人事件に巻き込まれてしまい、ヴィクは犯人となってしまったのだが・・・・・・。

全体的な描き方は漫画チックであり、スピード感と勢いを感じさせる展開は観る者を一気に楽しませてくれる。何といっても40年代テイストを感じさせる懐古趣味的な描写が最大の見所であり、往年のスラプスティックコメディーやミュージカルの要素を取り入れたことによって面白さが倍増し、これがまたとてもパワフルに描かれていて観る者を圧倒させてくれるのだ。さらにはカーアクションまで描かれ、カークラッシュに爆破シーンという具合にアクション映画ファンに対するサービスもしっかりと用意されている。過去の作品のパロディーも散りばめられているので映画好きの方にとっては大変嬉しく思えることだろう。

脚本はライミ監督と『ノーカントリー』(07)でアカデミー監督賞及び脚色賞を受賞したことが記憶に新しいジョエルとイーサンのコーエン兄弟。

【70点】

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2008年4月16日 (水)

阿修羅/ミラクル・カンフー

実際に両腕と両足が無いというサリドマイド児(アザラシ肢症とも言う)の二人の男が力を合わせて悪のボスと闘う姿を描いたトンデモナイ台湾製B級カルト・カンフーアクション。

カンフーの達人リー(シェン・サン・ツェン)は、悪党リン(リー・チュアン・ケン、この男がこれまた目の下がケロイド状で脊椎が港湾状態になっている!)の手によって両腕を切断されてしまう。一方、チャン(カン・チャオ・ミン)はリンの子分であったが、ある事をきっかけに彼の怒りを買ってしまい、両足に毒薬をかけられ、萎えさせられてしまう。ある日、リーとチャンは偶然に出会うが、元々二人は敵対関係ということでいがみ合うが、体が柔軟すぎる老人に説得され、二人はこの老人の下で拳法修業に精を出し、リンに復讐を挑む。

序盤では明らかに身体障害者差別と言ってもいいような酷いシーンが観られる。特にリーが定食屋で食事をする際、店員が鶏モモ焼きを食べさせようとするがおちょくってなかなか食べさせず、それを見ている客たちも馬鹿にしているかのように爆笑し、挙句の果てには店の用心棒にボコボコにさせられてしまう。このシーンは、リーと同じような人から観れば、かなりお気の毒であり、健常者から観ても良心が痛むことだろう。そして、空腹に堪えかねたリーは、犬餌である飯粒を食うが、犬に激しく吠えられたことで諦め、ついに豚小屋に侵入して豚餌を食う。実に過激な描写だ。また、リーとチャンの修業シーンも興味深いが、これも人によっては身体障害者虐待とも思えるだろう。

酷いシーンばかりが取り沙汰される作品ではあるが、リーとチャンが協力して驚くほどの凄いカンフーで敵をビシバシと蹴散らすシーンは、胸のすくような面白さを感じさせられる。特にリーが屈辱的な目にさらされた定食屋の店員と用心棒を二人でボコボコにするシーンは、実に気持ちが良く、爽快感すら覚えてしまう。ラストでリーとチャンがリンと壮絶な激闘を繰り広げるが、このシーンで観られる二人の合体技が最大の見所となり、これがまた面白いのである。

本作は、81年に松田優作主演作『ヨコハマBJブルース』の併映として公開された。88年には、にっかつ(現・日活)よりビデオがリリースされた。だが、このビデオは既に廃盤であり、なおかつ入手困難でもある。国内のネットオークションではかなりの高値で取引されるかなりレアな商品である。そして、本作は今となっては伝説的な珍作として多くの人々に語り継がれている。本国では二本の続編とTVドラマ版も製作され、DVDに関しても全三作がしっかりとリリースされている。日本でのDVD化は今のところかなり厳しそうだ。どうしてもDVDで観たいという方は、輸入版を取り寄せるしかないだろう。

日本公開時のキャッチコピー「やればできる!」は確かに言えているが、そんなことよりも作品の問題性や話題性ばかりに注目したくなる。

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2008年4月 1日 (火)

ヴェラクルス

革命の真っ只中のメキシコにやって来た元南軍兵士トレイン(ゲイリー・クーパー)は、エリン(バート・ランカスター)というアウトローと知り合い、行動を共にする。やがて、二人はメキシコ軍に雇われ、伯爵夫人をヴェラクルスの港まで送るための護衛を引き受ける。しかし、夫人が乗車する馬車には高額な金貨が隠されていることを知ったエリンたちは、金貨強奪を画策する。

ゲイリー・クーパーとバート・ランカスターという二大スターがW主演を務めた本作は、二人の対照的な演技による競演が見所だ。渋味を漂わせた控えめながらもやるときはしっかりとやるクーパーと白い歯を剥き出しにした笑顔が時折怪しげでフットワークの軽やかさを魅せつけるランカスターという具合に静と動をはっきりとさせた人物描写が面白い。特筆すべきポイントは、ランカスターがクーパーを喰ってしまったと言っても過言ではないほど美味しい所を持っていってしまったことだ。西部劇ならではのガン裁きは二人とも決まっているが、ランカスターの背面撃ちの方が遥かに印象的であったり、ラストシーンにおいてもクーパーに美味しい所を持たせながらも結局はランカスターがそれ以上にいい所を持っていってしまったりという具合だ。

男性向け娯楽アクション作品を得意とするロバート・アルドリッチ監督の演出はダイナミックなタッチで見せ場となるアクションシーンも勢いと迫力を存分に感じさせ、その出来栄えは実に上出来だと言える。

他にも後に大スターとなるチャールズ・ブロンソン(チャールズ・ブチンスキー名義で出演)やアーネスト・ボーグナインも端役で出演しており、ド派手な活躍はしていないが目を凝らして注目していただきたい。

本作は後のイタリア製西部劇すなわちマカロニ・ウエスタンの予兆を感じさせるような作風だ。『夕陽のガンマン』(65)は本作の影響を大きく受けていると言われている。また、高倉健の『網走番外地/望郷篇』(65)も本作の影響を軽く受けているようだ。

ヴェラクルス DVD ヴェラクルス

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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2008年2月11日 (月)

オスロ国際空港 ダブル・ハイジャック

シェパード(ジョン・クエンティン)率いるテロリストたちによってイギリス大使館が占拠され、パーマー大使(ロバート・ハリス)たちが人質となる。その後、ロンドン刑務所から釈放されたシェパードの同志を乗せた飛行機がハイジャックされる。オスロ保安庁のタルビック大佐(ショーン・コネリー)とテロリストたちの攻防が繰り広げられる。

イングマール・ベルイマン監督作品で活躍したカメラマンのスヴェン・ニクヴィストによるニュース映像を彷彿とさせるドキュメンタリータッチでリアリティーを追求した映像が魅力的だ。

ショーン・コネリーが地味ながらも渋いイメージでテロ対策の大佐を好演。政府のお偉い方との相克を描いたシーンも注目するべきだ。政府がテロに対して無力であることに対し、タルビックは弱みを魅せず真っ向から立ち向かおうとする。タルビックとテロリストの攻防は連絡手段を中心に描いており、これが緊迫感を張り詰めさせた描き方で観る者をハラハラさせる。他のシーンでも同じような雰囲気を感じることができる。

ジェリー・ゴールドスミスの音楽が効果的に使用され、サスペンスのムードを盛り上げると同時に緊迫感をより一層高める。

コネリーの名演、キャスパー・リードの演出、ニクヴェストのカメラ、ゴールドスミスの音楽によって渋味が引き立てられた硬派な仕上がりとなった上出来のサスペンスだ。

Photo

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2008年2月 8日 (金)

アース

海を舞台にしたネイチャー・ドキュメンタリー作品『ディープ・ブルー』(03)や日本でも放映された人気TVドキュメンタリー番組『プラネットアース』のスタッフが集結。莫大な製作費を懸け、製作年数5年、撮影日数約4500日という長きに渡る年月で世界各地の200ケ所以上の場所で撮影を敢行した地球全体の大自然の実態と真実を映し出したネイチャー・ドキュメンタリー。

この手の作品は何よりも映像美が最大の魅力である。本作では最新型の高性能カメラを駆使したことによって驚異なる映像が更に迫力を増し、とにかく観る者を圧倒させる。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による音楽が映像と巧く絡み合い、映像美に磨きをかける。

北極や南極ならではの生物の生態、陸で生息する生物の子育て、自然界では切手も切れない弱肉強食の様子といった厳しい一面もしっかりと捉えている。ホッキョクグマ、ザトウクジラ、カリブーの大行進、セイウチの群れ、天敵から我が子を守ろうとするゾウの群れがとても印象的だ。他にも風変わりなゴクラクチョウや水を苦手とするヒヒの群れの動作といった面白くて愉快なシーンも用意されているのでしっかりと楽しめる。

本作でも温暖化という環境問題にも触れ込んでおり、地球や生命の危機を阻止するために何かやってみようと訴えかけている。温暖化、環境破壊が進む限りこの手の作品ではこのようなメッセージが込められることだろう。

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2008年1月14日 (月)

エンドゲーム 大統領最期の日

ハワード大統領(ジャック・スカリア)の警護を担当するシークレット・サービスのエージェントであるアレックス(キューバ・グッディング・Jr)。彼は式典に出席した大統領を警護していたが、大統領は何者かによって撃たれ、搬送先の病院で死亡。この事件に酷いショックを受けていたアレックスの前に独自の方法で取材し、実行犯の背後に黒幕がいることを突き止めた記者ケイト(アンジー・ハーモン)が現れる。ケイトは事件の真相を解明するために協力を求めてきたのだが・・・・・・。

監督はジャッキー・チェンの作品でスタントを担当していたアンディ・チェン。製作には『ラッシュアワー』シリーズ等の監督として知られるブレット・ラトナーが携わっている。アクション寄りのスタッフによってサスペンスがメインの本作はアクション重視の作品に仕上がった。だが、アクション重視といってもド派手なアクションの連続でもない。サスペンスを基本として随所に見せ場となるアクションシーンが散りばめられているという感じである。大爆破、銃撃戦、公道でのカーチェイスという演出はツボが押さえられており、迫力を追求した魅せ方は巧く、実に面白く仕上がっている。サスペンスとしては照明等で雰囲気を醸し出してはいるものの内容としてはまだるっこくて薄味のやや残念な仕上がりだ。はじめからアクション映画としてアクションシーンを濃く描いていればもっと良かったと思えることが悔やまれる。

キューバ・グッディング・Jrがしっかりとアクションを頑張っている点が好印象であり、かつてアカデミー助演男優賞を受けただけに演技も光っている。他にもジェームズ・ウッズ、バート・レイノルズという渋い共演者も魅力的である。

エンドゲーム/大統領最期の日 DVD エンドゲーム/大統領最期の日

販売元:NIKKATSU CORPORATION(NK)(D)
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2007年12月26日 (水)

エアギター エピソード・ゼロ

日本のエアギター界のパイオニアである金剛地武志のメディア出演によって日本でも認知度がアップしたエアギター。最近では漫才コンビ“ダイノジ”の大地洋介が二年連続で世界チャンピオンに輝いたことで話題になった。

本作は、2003年に初めて開催されたアメリカエアギターの地区予選大会からフィンランドの世界大会までのプレイヤーたちの激闘を追うと同時にその魅力を追究したドキュメンタリー。

激しいロックのビートに乗ったアーティストたちによる白熱のパフォーマンスや観客の熱狂ぶりを観れば我々がエアギターに対して抱いている軽いイメージが一気に拭い去られてしまうほどでそのインパクトはかなり強烈だ。また、エアギターは娯楽性が主体ではあるが芸術性も求められ、世界平和や反戦のメッセージや人類愛までも込めて観客たちに存分にアピールする。これが最大のポイントであり、その意外性がエアギターの奥深さを観る者に認識させると同時に驚愕させるのである。

本作はパフォーマンスだけに留まらず、アーティストたちの個性もしっかりと映し出している。キティちゃんの前掛けを胸にかかげた中国系のアメリカ初代チャンピオンのC・ディディ(デヴィッド・ジュング)がメインとして取り上げられる。彼が如何にしてエアギターに興味を抱いたのか、家族との交流、ひょうきんな素顔、本作のもう一つの顔であるビヨルン・トゥロック(ダン・クレイン)とのライバル関係といった人間ドラマ的な作り方も面白く、これが作品に厚みを持たせる。他のアーティストたちも個性的で彼らのパフォーマンスも魅力的で印象深い。

また、劇中では有名ミュージシャンの楽曲が沢山使用されており、音楽ドキュメンタリーとしても面白く、ロックファンなら必見だ。

エアギター エピソード・ゼロ DVD エアギター エピソード・ゼロ

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2007年9月23日 (日)

アドレナリン

マフィアに雇われているフリーのスナイパーであるチェリオス(ジェイソン・ステイサム)は、朝目覚めると敵対しているリッキー(ホセ・パブロ・カンティージョ)によって眠っている間に新種の毒薬を注射され、一時間後には副作用で死ぬことをビデオレターで知る。チェリオスは友人の医師からアドレナリンを出し続けると薬の副作用が抑えられると教えられ、走って暴れてと常に興奮状態を保ってアドレナリンを放ち続ける。チェリオスは解毒剤の入手とリッキーへの復讐のために奔走する。

冒頭から凝った映像が観られ、この時点で作品自体からアドレナリンが放たれている。スプリット・スクリーン(画面分割)も使用され、キレ味の鋭いカット割りやカメラワークがスピーディーかつテンポの良い描写を一段と盛り上げ、作品自体が放っているアドレナリンも更に倍増する。カー・アクション、銃撃戦、痛々しいバイオレンスが盛り込まれており、見せ場作りも良いので娯楽アクション映画としてはかなり面白く仕上がっている。ド派手な爆破シーンがあればもっと良かったと思える。

ストーリーは単純明快だが、その設定が実にバカバカしい。それが原因でおバカコメディー作品の要素も取り入れられている。チェリオスの性器が勃起し、半尻姿、挙句の果てには道端で大勢の人々に見られながらも恋人と性交したりと少しやり過ぎたおバカ描写でアクション映画を意識して観ている方々にとっては、やや興ざめてしまうだろうが、これこそ本当の娯楽映画だと思う方々もいるだろうし、この点は賛否両論だと言える。暴れたり走ったりするステイサムは従来通りのアクションスターとしての姿であるが、ナンセンスな下ネタに挑んだステイサムの姿は強烈なインパクトを与えると同時に意外な一面を発揮させたことにも驚愕させられた。これは、B級アクションスターのイメージが強いステイサムを本格的なB級スターとして定着させるような感じだ。

アクションとおバカコメディーの融合がB級娯楽映画としてのレベルをさらにパワーアップさせ、両ジャンルの面白さを一気に楽しめることが何よりも良い。

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2007年7月 7日 (土)

明日、君がいない

新人ムラーリ・K・タルリ監督は19歳の頃、友人を自殺で失い、半年後に自身も自殺の道を歩もうとした。この経験をきっかけに本作の製作に取り組み、二年の歳月を経て完成させた。カンヌ映画祭でも話題を呼んだタルリ監督の処女作である。

いじめ、家庭環境、同性愛、生まれつきの病といった問題に悩みを抱える六人の高校生。その内の一人が午後14時37分に自殺するのだが、それまでの彼らの一日を各々の視点から描き、カメラは静かにその姿を追う。

10代の若者の苦悩、葛藤、苛立ち、悲哀感といった感情を自然体のままで等身大に描き出しており、さらにリアリティーを追求したことによって見事な仕上がりとなっている。ここまで巧く描き切れたのは、監督自身の辛い過去の経験があったからこそだと言える。

映像も新人だとは思えないほど実によく出来ている。監督は本作を製作するに当たって自己流で映画についての勉強をしていたのである。その学んだ表現技法がしっかりと活かされており、時間軸を利用しての人物描写、六人のインタビュー映像を随所に散りばめたドキュメンタリー・タッチの演出、カメラワークの巧さに感心させられる。

子供や若者の気持ちを理解しようとしない親や教師についても触れられているが、現在の日本でもそのような大人たちが多い。本作を子を持つ親、教師に是非とも観て頂きたい。そしてじっくりと考えて頂きたい。もちろん本作に登場する六人の高校生と同世代の若者や同じような問題を抱えて悩んでいる方々にも観て頂きたい。タルリ監督は本作を自殺した友人に捧げるためだけでなく、問題に悩み苦しむ若者の姿を多くの方々に理解してもらいたいというメッセージを込めて撮ったのだと思う。

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『明日、君がいない』ムラーリ・K・タルリ監督インタビュー
©2006 2:37 PTY LTD.
提供:@niftyコンテンツ

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2007年2月19日 (月)

おさるのジョージ Curious George

1941年に出版されて以来、世界14万ヶ国で翻訳され、日本でも「人まね子ざる」として親しまれたハンス・アウグスト・レイ夫妻の人気児童向け絵本「おさるのジョージ」がついにアニメーションとして映画化。

博物館で働くテッド(声:ウィル・フェレル)は、博物館の閉鎖を防ぐため誰もが驚く宝物を求めてアフリカへと旅立つ。そこでいたずら好きの子ザルに出会う。テッドが帰国した際、驚いたことに子ザルもテッドを追って街へやって来たのであった。テッドは子ザルと仲良くなり、ジョージと名づける。ジョージはいたずらばかりやらかし、テッドや街の人々を困らせてしまう。

鮮明な色彩が魅力的である。絵本で使われている原色だけを使ったというこだわりのある色彩は、他のアニメ映画とは一線を画すほど美しく、鮮やかである。CGアニメが主流となった現代のアニメ映画に対し、従来のアニメーションもまだまだ負けてはいないということを証明したと言ってもいいだろう。

原作のジョージは黒目だけだが、この映画版のジョージは白目と黒目のパッチリとした可愛らしい目である。そうしたことによって見る者に愛着心を抱かせ、可愛らしいイメージを持たせることに成功したのである。好奇心旺盛でいたずら好きのジョージはまるで無邪気な子供の姿そのものであり、そこが可愛らしさを倍増させているのである。

サーフ・ミュージック界のカリスマ、ジャック・ジョンソンの歌声がジョージの心の声として活用されている。作品に相応しい楽曲がチョイスされており、サーフ・ミュージックならではのゆったりと落ち着くような曲調が優しさと柔らかさを感じさ、効果的に使用されている。

友情の大切さといったメッセージがしっかりと込められている点も素晴らしい。幼い子供にはピッタリであるが、大人でも童心に帰って素直に楽しめるように仕上がっている心優しい癒し系アニメ映画である。

おさるのジョージ DVD おさるのジョージ

販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
発売日:2006/11/30
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2007年1月 3日 (水)

駅馬車

アリゾナからニューメキシコへと向う駅馬車に乗った8人の乗客の人間模様とインディアン襲撃を描いた映画史に残る西部劇の名作である。

ストーリーは至ってシンプルな内容である。そこに巧妙な人物描写を加えたことによって重厚な物語へと仕上がっている。ジョン・ウェイン扮する脱獄犯リンゴ・キッドをはじめとする8人の乗客の個性や心情、挿話を巧く描き出している。車内での人間ドラマを主軸にウェインとクレア・トレヴァーによる恋愛ドラマをプラスしたことによって一層、物語に魅力を感じさせる。描写、設定、構成のどれをとっても素晴らしい。

インディアン襲撃シーンが最大の見せ場となる。アクション・シーンをプラスしたことによって一段と面白く仕上がっている。スリリングかつアップテンポで勢い良く描いており、ウェインの友人であるヤキマ・カナットによるスタントが迫力のある映像へと仕立て上げている。スケールの大きさを存分に感じさせ、圧巻である。退屈させられる下手な娯楽アクション映画よりもはるかに優れたアクション・シーンだと言える。

最後の見所となるのは、ウェインが3対1の決闘に挑むシーンである。このシーンでフォード監督の見せ方の巧さが最大限に発揮されている。そして、優しさと温かさに満ちた感動的な雰囲気で幕を閉じる。実に嬉しさと気持ち良さが余韻に残る。

主演のジョン・ウェインは本作でスターとして急成長し、その後はフォード監督とのタッグで多くの西部劇の名作を世に送り出すこととなる。

様々な要素とアイデアを手際よく活かせたことによって成功した作品だと思う。

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2006年12月 9日 (土)

悪魔の追跡

仲のよいロジャー(ピーター・フォンダ)とフランク(ウォーレン・オーツ)はバイク工場を経営しており、休日にお互いの妻を連れ添い、設備が完璧なキャンピング・カーに乗って旅に出かける。その日の夜、ロジャーとフランクが外で飲んでいるとき、カルト教団による不気味な儀式を目撃。だが、信者たちに気づかれたため逃げ出すが、執拗に追われてしまう。その後も度重なる恐怖が四人を追い込む。

基本はオカルト系サスペンス・ホラーではあるが、アクション要素もしっかりと盛り込まれている。ショッキングなシーンは猟奇的であり、気味悪さや緊迫感をうまく保って描いている。見せ場作りも巧みであり、特にキャンピング・カー内に仕掛けられた二匹のヘビを悪戦苦闘しながら退治するシーンや中盤以降で見られる激しいカー・アクションはインパクトが大きく、見応えがある。カー・アクションに関しては、当時流行していたジャンルであり、流行に便乗して取り入れたものだと思える。

ホラー、アクションと二つのテイストを味わえることが嬉しい娯楽作品である。グリコキャラメルのキャッチフレーズである「一粒で二度美味しい」と同じような感じである。

悪魔の追跡 DVD 悪魔の追跡

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2007/04/13
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2006年11月14日 (火)

アリゲーター (1980)

ある男がペットであるワニの子供をトイレに流してから十二年後、成長したワニは、下水道の中でひっそりと棲み付いている。ある研究所職員が成長ホルモン剤に汚染された犬の死骸を下水道に棄て、それを食したワニは、薬品の副作用によって巨大化する。巨大ワニが地上に出現し、町中が大パニックとなる。

『ジョーズ』(75)の影響を受けたモンスター系パニック作品の一つである。ボートから海に落ち込んだ警官を襲うシーンは、描き方も音楽も『ジョーズ』を意識していることがわかる。科学薬品に汚染されたモノを食して異常化するという設定は、この手の作品ではお約束通りとなっている。巨大ワニが地響きを立ててマンホールから飛び出し、人を食ったりするシーン等は特撮怪獣映画の要素が含まれている。さらに、爆破シーンも取り入れたりとアクション映画の面白さまで加味されている。面白さを追求し、工夫が施されている点が良い。

巨大ワニと戦うロバート・フォスター扮する刑事、ヘンリー・シルヴァ扮するおかしな猛獣ハンター、ロビン・ライカー扮する爬虫類学者といったキャラクターのユニークな個性をしっかりと描いている点も面白くて良い。

B級映画と呼ぶに相応しい内容であるが、娯楽映画の面白さを存分に味わえる作品である。

アリゲーター DVD アリゲーター

販売元:キングレコード
発売日:2006/03/08
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2006年10月 5日 (木)

アルティメット

舞台は2010年のパリ。悪がはびこる無法地帯として隔離された地区、バンリュー13で街からドラッグ一掃を目的とするレイト(ダヴィッド・ベル)は、タハ(ラルビ・ナセリ)率いるギャング団に挑む。だが、レイトは警察に逮捕され、妹のローラ(ダニー・ヴェリッシモ)をタハ一味に拉致される。半年後、タハが時限爆弾を盗み、バンリュー13に送り込もうとしていることが発覚。政府側は腕利き刑事のダミアン(シリル・ラファエリ)に爆破防止を命令し、レイトを案内役としてタッグを組ませる。二人は爆破を阻止するべくタハ一味と激闘を繰り広げる。

開巻から斬新な映像を見せつける。ダヴィッド・ベルの飛び跳ねるアクション・シーンが見所である。スピーディーかつスリリングな描写はテンポも最高に良い。BGMがより一層アップテンポなリズムをヒートアップさせる。ファイト・シーンもキレ味が抜群であり、マーシャルアーツ風のシャープな動きを自由なアングルで捉えている。このようなアクション・シーンは昨今のアクション映画ではお馴染みではあるが、スタント、ワイヤー、CGといったテクニックを一切使用していない。ダヴィッド・ベルとシリル・ラファエリの体を張った限界ギリギリの演技は凄いの一言に尽きる。合成技術やスタントに頼りきったアクション映画を量産しているハリウッド映画は見習うべきである。

上映時間も86分と短めであり、ストーリーも平易である。気軽に楽しめるアクション・エンターテイメント作品である。少し前に公開された『トランスポーター2』(05)同様、面白いアクション映画の本来の姿だと言える。

アルティメット DTSスペシャル・エディション DVD アルティメット DTSスペシャル・エディション

販売元:角川エンタテインメント
発売日:2006/12/08
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2006年6月22日 (木)

イベリア 魂のフラメンコ

『恋は魔術師』(85)や『サロメ』(02)といったフラメンコ映画でお馴染みのカルロス・サウラ監督がスペインのミュージック・シーンを代表する作曲家兼ピアニストであるイサーク・アルベニスによるピアノ組曲「イベリア」にヒントを得て撮り上げたドキュメンタリー。

フラメンコを中心にジャズ、バレエ、現代舞踊等を取り入れた様々なダンスを存分に愉しませてくれる。カメラは手先や足元といった細かい部分まで映し出し、なめらかなカメラワークが効果を発揮し、官能的な甘美さと情熱さを醸し出す。

衣装、色彩、セット、音楽も完璧であり、芸術性をより一層増大させ、エレガントな高級感を具備した独特の世界に酔いしれる。

フラメンコダンスを克明に描いたことによってその奥深さを実感させられる。とにかく贅沢すぎると言っても過言ではないダンスの数々をおもいっきり堪能することができ、素直に「いいものを見せていただいた」と思える。

イベリア 魂のフラメンコ DVD イベリア 魂のフラメンコ

販売元:レントラックジャパン
発売日:2006/08/25
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2006年6月16日 (金)

インサイド・マン

90年代、ブラックスプロイテーション映画に新風を巻き起こしたスパイク・リー監督による本格的娯楽作品である。主演のデンゼル・ワシントンとは『ラストゲーム』(98)以来8年ぶりのタッグとなる。

ダルトン(クライブ・オーウェン)率いる武装集団は、マンハッタン信託銀行を襲撃。客、行員ら50名を人質に取り、篭城する。警察陣を混乱させるため、人質たちに同じ格好をさせる。腕利き刑事フレイジャー(デンゼル・ワシントン)らは翻弄され続ける中、犯人グループとの交渉役である女性弁護士ホワイト(ジョディ・フォスター)が現れる。

綿密に計算されたストーリーは謎解きも取り入れ、スリリングに描き、緊迫感を張り詰めさせる。展開の予想もつかないほどのハイレベルなサスペンスに仕上がっている。本作で脚本家デビューとなるラッセル・ジェウィルスの才能に脱帽させられる。

キレ味の鋭いカメラワーク、実力派俳優たちが繰り広げる迫真の演技は実に素晴らしく、作品自体に重厚さを与えると同時にサスペンスとしての出来ばえをより一層増大させる。

スパイク・リー監督は本作を徹底した娯楽作品に仕上げたが、彼ならではの社会派テイストをほのかに残していた・・・・・・。

インサイド・マン DVD インサイド・マン

販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
発売日:2006/10/12
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2006年4月17日 (月)

アンダルシアの犬

アヴァンギャルド映画の草分的作品であり、シュールレアリズムを追求した風変わりな短編である。

剃刀で眼球を切りつけるシーンは映画史においても有名である。他にも手のひらを這う数匹のアリや切断された手首といった斬新かつショッキングな映像はとにかく凄い。

ストーリーを気にせず、トリッキーかつ不条理なアート感覚の映像を15分間堪能するだけでよい。

ちなみに、本作はルイス・ブニュエル監督のデビュー作であり、画家としても著名なサルヴァドール・ダリが自らも出演し、脚本も手掛けた。

アンダルシアの犬 DVD アンダルシアの犬

販売元:アイ・ヴィー・シー
発売日:2002/09/25
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2006年4月 7日 (金)

黄金の七人

スイス銀行に眠る7トンの金塊を強奪する教授(フィリップ・ルロワ)と6人の仲間による大掛かりな行動をダイナミックに描く。

とにかく金塊強奪のシーンがメインである。地下を掘る等あの手この手のやりとりや様々な小道具といったアイデア満載の演出が印象深い。

注目となる点は、教授の愛人ジョルジア(ロッサナ・ポデスタ)。セクシーかつ独特の衣装に身を包まれた彼女はミステリアスなムードと同時に悪女らしさを醸成し、見る者を圧倒させる。

アルマンド・トラヴァヨーリによるスキャット音楽が作品に華やかさを彩り、格調の高い仕上がりとなっている。お洒落でポップな雰囲気を味わえる極上のエンターテイメントである。

黄金の七人 DVD 黄金の七人

販売元:アイ・ヴィー・シー
発売日:2002/05/25
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2006年3月29日 (水)

イノセント・ボイス 12歳の戦場

1980年。南米エルサルバドルで政府軍と反政府ゲリラとの内戦が激化。この過酷な状況を舞台に、父親がアメリカに去り、一家の頼りとされた少年チャバの日々の生活を追う。

家の中に銃弾が大量に撃たれ込まれ、恐怖に怯え続けるチャドの家族・・・・・・見ている自分たちもそんな恐ろしい状況を痛感する。実話に基づいた作品だけにリアルに描かれ、嘘っぽさを感じさせないがとても信じられない状況である。

内戦状況を描きつつ、チャドの淡く純粋な恋愛や友人たちと興じる遊び、家族との冗談が飛び交う夕食といったシーンを描く。それによって殺伐とした光景を忘れさせ、安らぎの一時と優しさを感じさせる。親子愛を丹念に描写している点も素晴らしい。

本作では何の罪も無い子供たちが命を落とす。実際、現在でも多くの子供たちが内戦やテロによって尊い命を奪われている。

イノセント・ボイス~12歳の戦場~ DVD イノセント・ボイス~12歳の戦場~

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2006/07/28
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2006年3月24日 (金)

アサルト13 要塞警察

ジョン・カーペンター監督のカルト的脱出アクション『要塞警察』(76年、日本未公開)のリメイクである。

大晦日のデトロイト。老朽化によって閉鎖される13分署に凶悪犯ビショップ(ローレンス・フィッシュバーン)ら4名の罪人が搬送される。新年を迎えたと同時に武装した特殊警官たちに襲撃される。ローニック(イーサン・ホーク)をはじめとする刑事たちと罪人たちは協力して激闘を繰り広げる。

ローレンス・フィッシュバーン扮する凶悪犯は独特の風貌からしてかなりハマっている。不気味さで圧倒させ、ずば抜けた存在感をアピールしている感がある。イーサン・ホークも負けじと良い芝居を魅せ、実力をアピールしている。その他のキャストも巧く描かれており、彼らの心理描写が作品に厚みを持たせる。

全体的に暗いムードがサスペンスの演出を高め、緊迫感を張り詰める。激しい銃撃戦が迫力を醸成する。ストーリー展開も勢いを感じさせるタッチでテンポも良い。

サスペンス、アクション、気にかかる展開、人物の心理描写を味わうべき作品である。

アサルト13 要塞警察 DVD アサルト13 要塞警察

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2006/08/02
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2006年3月20日 (月)

アンダーカバー・ブラザー

ウェブ上で放映された短編アニメに心を奪われたマルコム・D・リー(スパイク・リーの従兄弟)が実写化した作品。

極悪な白人至上主義の団体「ザ・マン」は、黒人洗脳計画を画策。恐怖を抱いた正義の組織「ブラザーフッド」はこの謀略を阻止するため、アンダーカバー・ブラザー(エディ・グリフィン)をスパイとして雇い、真っ向勝負に挑むというお話。ストーリーは非常に馬鹿げたものであるが、根底に黒人奴隷制度及び人種差別に対する諷刺を感じさせる。

開巻から黒人文化の歴史をあらゆるジャンルの映像を用いて紹介する。とりわけ70年代の黒人文化ネタが満載であり、アフロヘアや独特な衣装、全編に流れるディスコサウンド等が魅力的。70年代のテイストを十分に醸し出し、「ファンキー」や「ソウルフル」を素直に感じさせる。

出演者のお馬鹿な演技や台詞回し、過去のスパイ映画のパロディーが笑いを誘う。アクションシーンもブルース・リーを意識したカンフーファイトやワイヤーワークを使ってみたりとこだわった見せ場作りとなっている。

とにかく単純明快で面白く仕上がっている。そして、70年代の感覚を満喫したい方にはオススメである。

アンダーカバー・ブラザー DVD アンダーカバー・ブラザー

販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
発売日:2005/11/25
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2006年3月17日 (金)

アウト・オブ・タイム

ボスニア紛争で友人を亡くし、今なお心に深い傷を持つ元軍人ディーン(ウェズリー・スナイプス)は友人の妹を待ち伏せている時、何者かにFBI捜査官と間違えれ、「EX」と呼ばれる薬物を投与される。その副作用は幻覚作用を起こすと同時に神経を破壊し、やがて死に至らせるものである。ディーンはかつての戦場での悪夢をリアルに思い出し、苦しめられる。

ウェズリー・スナイプスはマーシャル・アーツ仕込みのファイトシーンを披露するもののかなりの物足りなさを感じさせる。弱っているという設定だから仕方が無いだろう。爆破シーンやラストの銃撃戦も頑張っているようだが、アクション映画としては陳腐である。

本作は、日本では劇場公開されたが、本国アメリカでは劇場未公開のDVD作品である。それは、日本におけるアクション系のVシネマと同じ概念である。本作が見事なB級アクションらしい出来ばえであることに納得。それでも全体的には面白い仕上がりである。

アウト・オブ・タイム DVD アウト・オブ・タイム

販売元:アミューズソフトエンタテインメント
発売日:2005/05/27
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2006年3月15日 (水)

ウォーク・ザ・ライン 君につづく道

U2等多くのアーティストたちに多大な影響を与えた伝説のミュージシャン、ジョニー・キャッシュの半生をホアキン・フェニックスが見事に再現。

兄を事故で亡くしつらい思いをした少年時代、トップスターとして多忙を極めた頃、酒と薬に溺れ落ちぶれた頃といった波乱万丈の生き様を丹念に描く。後に生涯を共にするジューン(リース・ウィザースプーン)との恋、バンド仲間や家族との交流等のエピソードも散りばめている。

本作に欠かせないライブシーンは、彼の様々なヒット曲をホアキンは吹き替え無しで堂々と歌い上げる。古臭さや違和感を一切感じさせない。リースとのデュエットも息が合って良い感じ。ノリが良く、ご機嫌である。

転落した人生を送るジョニーが、ジューンや家族に助けられ、再びかつての栄光を取り戻すシーンはまさに感動的であり、醍醐味を感じさせる。人間は一人で生きているのではなく、多くの人に支えられてこそ生きていけるという事を心から実感した。

単なる音楽映画や娯楽映画ではない。人間ドラマの要素を完璧に備えたクオリティーの高い作品と言い切れる。

ウォーク・ザ・ライン 君につづく道 特別編 DVD ウォーク・ザ・ライン 君につづく道 特別編

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2006/05/26
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