2009年10月 2日 (金)

キッチン 3人のレシピ

天真爛漫で純粋なモレ(シン・ミナ)と証券マンのサンイン(キム・テク)は、幸せな新婚生活を送っている。ある日、モレは閉館時間外に忍び込んだ現代アートの美術館で不思議な青年ドゥレ(チェ・ジフン)と出会い、関係を交わしてしまう。その後、会社を辞めてフランス料理店をオープンしたいとモレに打ち明けたサンインが連れて来たシェフが、なんとあのドゥレであった。ドゥレはサンインに料理を教え込むためにモレとサンインの家に住み込むこととなり、三人の共同生活が始まるのだが、これが三角関係の始まりでもあった・・・・・・。

女一人と男二人の三角関係なんて良くありがちで珍しい話でもない。でも、この手のドラマ(平日の昼メロドラマと言えば分かり易いかも!)でよく観られる壮絶な修羅場をはじめとするドロドロとした陰惨さや観ていて腹立たしく思えるようなドラマではない。

サンインとモレ夫妻宅の陽光が射しかかってきらめくキッチンや部屋のオシャレなインテリアが鮮やかな雰囲気を醸し出し、テーブルに並べられる数々の美味しそうな料理が並べられたりという具合に三角関係ドラマを忘れさせるような明るいイメージが作品全体を彩り、観る者に良いイメージを印象付けていることが大きなポイントだと言える。

その反面、モレとドゥレの関係を知ってしまったサンインがドゥレと対立してしまう後半部分は、三角関係ネタさながらの描写となっており、この手の作品が観る者に与えるような辛さ等も感じられる。だが、前述したような良いイメージが印象深いためなのか、観ていて感じられる辛さやイライラはやや弱めだ。ラストも海岸で美味しそうな料理やキレイな自然美を魅せており、最初から最後まで良いイメージで描かれたドラマとして仕上がっている。

本作は09年5月公開予定であったが、公開直前にドゥレ役のチェ・ジフンが合成麻薬MDMA(エクスタシー)を使用したとして逮捕・書類送検されたため、公開延期になってしまった。その後、執行猶予判決が言い渡され、本人に常習性がないということで無事に公開されることになったといういわく付きの作品だ。

【60点】

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2009年9月 9日 (水)

96時間

リュック・べッソンが製作と脚本(ロバート・マーク・ケイメンとの共同)を手懸け、べッソン製作作品で撮影を担当していたピエール・モレルの監督第二弾作品。

かつてはCIAのスゴ腕工作員だったブライアン(リーアム・ニーソン)は、カリフォルニアで隠退生活を送っている。ある日、愛娘キム(マギー・グレイス)が友人アマンダ(ケイティ・キャシディ)とパリへ人気バンドU2の追っかけ旅行に出かけ、ブライアンはキムのことをやたらと心配する。この心配事が想像を絶するかのような形で実現してしまうのである。キムとアマンダが宿泊先のホテルでアルバニア系人身売買組織の連中に拉致されてしまったのである。ブライアンはキムを取り戻すべく警察の手も借りず、CIA時代に習得したスキルを活かし、復讐に燃える一匹狼オヤジとなってあらゆる手段を駆使して極悪非道な組織に挑み、暴れ回る。

単純明快で分かり易い上に見せ場であるアクションを随所に散りばめて90分弱でまとめ上げたという如何にも良質的なB級娯楽アクション映画である本作。

序盤ではブライアンが如何に娘キムを愛しているか、心配しているかを観る者の印象に残るようにじっくりと念入りに描いている。キム拉致後は、ブライアンが愛娘のためなら何でもやってやると言わんばかりに暴走し、暴れ回る。敵たちに対して殴る蹴るは当然。それどころか普通に射殺してしまったり残酷さ丸出しの電気ショック拷問を平気な顔をしてやってのけるのである。観る者はブチ切れたブライアンのやり過ぎに驚愕されっぱなしとなるはずだ。しかもこのような描き方は、痛快アクション映画らしさ全開で面白さを遺憾なく発揮しているので素直に良いと言い切れる。

とにかくアクションシーンは高ポイント獲得だ。銃撃戦、カーチェイス、一度だけの爆破という具合にアクション映画に必要な三大演出はしっかりと用意されているし、ツボも押さえられている。中でもリーアムが魅せつける格闘アクションは特筆すべき大きなポイントだと断言できる。リーアムはアクションスターではないが、本作では他のアクションスターに負けないほどのキレ味抜群で威勢の良いファイトを魅せつけている。しかも五十代半ばを過ぎたオヤジによる年齢を感じさせないほどの元気な暴れっぷりという点が何よりも最高であり、好印象なのである。リーアムを起用したからこそ本作がここまで面白い作品に仕上がったと言い切れる。リーアムの一つ年上である沈黙オヤジことスティーヴン・セガールは現在でもアクションスターとして第一線で活躍している。そんなセガールが本作のリーアムの姿を観たら「自分はもっと頑張らなければ・・・」と思うはずだ。セガールが本作の主演であったらということを考えると、単なるセガールらしい定石通りのB級娯楽アクション映画として仕上がっていただろうし、面白さもパワーダウンしていたことだろう。リーアムは素晴らしいアクションもできるということが証明され、おまけにセガールの上を行ってしまったのである。

本作こそ胸のすくような醍醐味を感じられる最高傑作だ。しかも、本当に面白いB級娯楽アクション映画の本来の姿だ。世のアクション映画ファンは、面白さを存分に堪能できること間違いなしだから必見だ!!

【80点】

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2009年8月28日 (金)

ゴー・ファースト 潜入捜査官

ド派手なアクション映画を世に送り出しているリュック・べッソン率いるヨーロッパ・コープ社がこれまでとは違った異色の刑事モノのクライム・サスペンス・アクションを生み出した。

刑事マレク(ロシュディ・ゼム)は麻薬密売組織ジュリアン一味に上司ら同僚を殺害され、この組織に激しい怒りを覚えていた。ある日、麻薬取締局からモロッコからスペインのマラガに持ち込まれた麻薬を運ぶドライバー、“ゴー・ファースト”として潜入することを命じられたマレクは、過酷な訓練を終え、スペイン側の組織の信用を得て潜入捜査官となる。組織に対する復讐を抱いたマレクの囮捜査が開始される。

実話に基づいた実録犯罪ドラマであり、ゴー・ファーストというお仕事もその潜入捜査官も実在するのである。オリヴィエ・ヴァンホーフスタッド監督は本物らしく魅せるべく警察側と裏社会側の双方を徹底的にリサーチしたとのこと。その結果、リアリズムが徹底されたドラマとして仕上がった。これは監督の力だけでなく、警官としての経験が豊富なジャン=マリー・スヴィラが脚本に参加していることもあってのことだと言える。

序盤で観られる組織の連中の行動を監視カメラが捉えた映像は、報道番組のドキュメンタリーや「警視庁24時」系の番組を彷彿させる。そして、中盤あたりではモロッコのマリファナ栽培を緻密に紹介してくれる。これはアウトロー社会やアンダーグラウンドの世界に興味を抱く方にとっては興味深いシーンであること間違いなし。また、そうでない方でも興味をそそられ、ついつい食い入ってしまうだろう。

他にもマレクが潜入捜査官になるための訓練として狙撃、プールでの水泳、腕立て伏せ、その他ハード過ぎるトレーニングをこなしていくが、この訓練が如何に過酷で厳しいモノなのかが存分に味わえる。このシーンでは指導者のチョイ鬼コーチぶりが印象的であり、訓練内容とともに注目すべきポイントだ。

その後は、マレクの囮捜査を緊迫感を醸し出させてじっくりと描かれる。この任務の危険さがじっくりと丹念に描かれ、その激ヤバさに観る者は驚愕されっぱなしとなるだろう。中でも正義の刑事であるはずのマレクが悪人いなりきって民家を襲って盗みをやらかすシーンにはヒヤヒヤさせられる。

ラストは、本作の眼目でもある大量に麻薬が積み込まれたBMWが猛スピードを発揮して突っ走るカーチェイスが堪能できる。スリリングかつスピーディーに描かれてはいるもののよくありがちな迫力や派手さは感じられない地味な仕上がりだ。このカーチェイスの前や後に描かれているアクションシーンとして銃撃戦が観られるが、これもごく普通という印象であり、犯人逮捕シーンでもアクション系刑事ドラマならではの格闘アクションを魅せつけたりはしない。とにかくアクションシーンに関しては、リアリティーを追求しすぎたことによって派手さが描かれていないという感じがするが、実話に基づいているからこそアクションはこの程度で相応しいと納得できる。

とにかく本作は、警官の視点から捉えた裏社会、危険な囮捜査の実態を存分に満喫できるのである!!

【70点】

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2009年8月14日 (金)

キャデラック・レコード~音楽でアメリカを変えた人々の物語~

1950年代から70年代にかけて人気を誇ったブルース音楽のレコード会社“チェス・レコード”の栄枯盛衰と創設者及び所属アーティストたちの成功や葛藤を描いた音楽系人間ドラマ。

シカゴの黒人街でクラブを経営している野心的なポーランド移民レナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)は、天才的ギタリストのマディ・ウォーターズ(ジェフリー・フライト)とハーモニカ奏者のリトル・ウォルター(コロンバス・ショート)によるブルース・コンボに出会い、その才能に魅了され、音楽ビジネスのブームに乗るべくマディをレコーディングに誘ってチェス・レコードという音楽会社を設立する。やがて、ウォーターズのアルバムはR&Bチャートを上昇し、大ヒットを記録する。反人種差別主義者のチェスは、所属アーティストを家族同様に扱い、曲がヒットすると褒美としてキャデラックを買い与えたりしていた。その後、チェス・レコードにはロックの生みの親となるチャック・ベリー(モス・デフ)やソウルミュージックを幅広い層に広めたエタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)ら伝説的なアーティストを輩出し、彼らは崇敬の存在となっていくが、時代は次第に変化していく・・・・・・。

ヒップホップやR&Bといったブラックミュージックのルーツを探った作品はいくつか存在するが、本作は「R&Bがいかにして世に広く浸透したのか?」、「ロックミュージックはどうのようにして生まれたのか?」といった大衆音楽の歴史が緻密に描かれていてかなりわかり易い。また、物語の時代背景である40年代から60年代は人種差別が酷かった。この問題を音楽がいかにして変えたのかということも描かれており、こちらも大変興味深いポイントなのである。

登場人物である伝説的なアーティストを演じるのは、ジェフリー・フライト、コロンバス・ショート、モス・デフ、セドリック・ジ・エンターテイナー、そしてビヨンセ・ノウルズといった芸達者な黒人アクターが顔を揃えている。彼らの演奏及び歌唱シーンもふんだんに取り入れられており、これが観る者を良い気分にさせてくれる。ここで驚くべきことは、彼らの歌声が吹き替えではなく、自身の声でしっかりと歌い上げているということだ。中でもビヨンセが歌うエタ・ジェイムズの「At Last」は必見・必聴の価値は大だと断言できる。

所属アーティストたちの成功秘話も良いが、酒やドラッグに溺れたり、白人警官とのトラブル、未成年女子に手を出して獄中送り、喧嘩で重症を負って死んでしまったりということが原因で仲間同士に亀裂が生じてしまったりといったマイナス面も印象深い。また、チェスも「音楽をネタに黒人たちを搾取している」ということで黒人たちに襲撃される。

アメリカのポップミュージックの歴史の一部分、人種問題とその撤廃、アーティストたちの素晴らしさを教えてくれる良作だと言いたい。

【75点】

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2009年7月28日 (火)

コネクテッド

かなり面白かったハリウッド製サスペンス映画『セルラー』(04)を香港映画界がリメイクした。ちなみに香港映画がハリウッド作品をリメイクしたのは、本作が初めてとの事だ。監督は、娯楽アクション映画を多数手懸けているベニー・チャン。

ロボット設計士のグレイス(バービー・スー)は、6歳の一人娘ティンティンを学校に送り出した帰り道に謎の一味に車で追突され、そのまま拉致監禁されてしまう。グレイスは一味の隙を狙って粉砕された携帯電話の修復を試み、配線を接触させて何とか発信した。繋がった相手はアボン(ルイス・クー)という気が弱くて冴えない日々を送っている負け犬経理マン。グレイスのSOSをイタズラだと思っていたアボンは、あまりにも真剣に訴えていることから素直に聞き入れ、救出するべく孤軍奮闘することになる。

事件の巻き添えを喰らったアボンがこれをきっかけに負け犬からヒーローへと変貌していく姿が見所の一つである。メガネヅラのいかにも好青年という感じのヒーローとはかけ離れている容姿の彼は、一人息子ギットとの約束すらロクに守れず、会社では暴力団まがいの取立て業務を仕方なくやっているようなダメ男。そんな彼がカーチェイスをやらかしてみたり、電話会社で発砲騒動を引き起こして指名手配されてしまったりと奔走していく中で徐々に強い男へと成長していく。最終的には犯行グループに堂々と挑戦する勇者となっている。

香港映画ということでお馴染みのアクションシーンには全力が注がれている。ティンティンが犯行グループに拉致されてから開始するカーチェイスは、本作で描かれているアクションシーンの中では最大の見せ場であると同時に最大の売りモノである。クラッシュや横転はもちろん、アボンがハンドルを握る車が缶ジュースを積載したトラックに突っ込んで辺りが缶ジュースまみれになったりという具合に迫力満点でなおかつ観る者の脳裏に焼きつくような強烈な描写に仕上がっていて面白さを存分に堪能できる。他にも車が崖から落下、銃撃戦、香港映画らしい格闘シーン、残酷なバイオレンスが観られ、どれをとっても印象深い。

また、サスペンスとしても緊迫感がしっかりと醸成されており、事件が一件落着したかと思うと意外な展開を魅せつけてまだ終わっていないという一筋縄ではいかないストーリー運びに驚愕させられてしまったりというように観る者を思う存分楽しませてくれる。

オリジナルのストーリーを忠実に踏襲しながらも主人公アボンを子持ちにしたりと設定を少し変更したことによって最後には感動が味わえる後味の良い作品へと仕上がったのである。

オリジナル版にも引けを取らない最高傑作だと言いたい。

【80点】

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2009年6月 1日 (月)

極底探検船ポーラーボーラ (最後の恐竜/極底探検船ポーラーボーラ)

アメリカのランキン=バスプロダクションと日本の東宝、円谷プロが共同製作したSF恐竜映画で未だにカルト的人気を誇る珍作。

石油王として、または世界でも名のあるハンターとして知られるマステン(リチャード・ブーン)は、チャック(スティーヴン・キーツ)、川本博士(中村哲)、マサイ族のブンタ(ルーサー・ラックリー)、女性新聞記者フランキー(ジョン・ヴァン・アーク)を従えて石油探索用の海底船ポーラーボーラに乗って地底を辿る。だが、北極探検中に海底変化のアクシデントに見舞われてしまい、とある湖に漂着。そこは、恐竜や原始人が生息する太古の世界だった・・・・・・。

円谷プロが携わっているということでお馴染みの特撮技術がふんだんに取り入れられており、お得意の怪獣映画らしい面白さを味わえることが嬉しい。特にティラノザウルスとトリケラトプスの激突が大きな見所の一つである。他にもマステン一行とティラノザウルスの攻防、原始人たちとの戦いが観られる。これらは、面白さに物足りなさが感じられるものの印象的なシーンとして仕上がっている。また、関谷ますみ扮する原始人の少女との交流を描いたシーンも注目すべきポイントだ。

しかし、ドラマ部分が間延びしていたりもたついていたりと散漫な結果となっているため、面白さを大幅にダウンさせるという結果となった。

キャストに関しては、アメリカ側は弱いが、日本側はコアな人材が揃っている。まずは、先述した原始人の少女役の関谷ますみ。彼女は、後にTV刑事ドラマ『特捜最前線』(77~87)で高杉幹子婦警を長年演じて茶の間の人気者となり、現在でも多くの方々に語り継がれている。他の原始人役を日活映画の悪役キャラでお馴染みの榎木兵衛、かつては石原軍団の一員として『大都会』(76~79)や『西部警察』(79~84)の刑事役で人気を博した苅谷俊介が扮している。

監督は、東宝映画の小谷承靖(トム・コタニ)とアレックス・グラスホフとの共同。小谷は、本作をきっかけにランキン=バスプロダクションで『バミューダの謎/魔の三角水域に棲む巨大モンスター!』(78/日本未公開)と『武士道ブレード』(80/日本未公開)を撮った。

【45点】

極底探検船 ポーラーボーラ THE LAST DINOSAUR [DVD] DVD 極底探検船 ポーラーボーラ THE LAST DINOSAUR [DVD]

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2009年4月10日 (金)

子供の情景

イラン映画界の巨匠モフセン・マフマルバク監督の次女ハナの長編劇映画デビュー作。彼女は8歳の頃に『おばあさんが病気になった日』という30分もない短編ドラマを撮り、14歳で『ハナのアフガンノート』(長女サミラ監督作『午後の五時』のメイキング的ドキュメンタリー)という長編ドキュメンタリーを撮った。そして、19歳になった頃、監督第三弾である本作を完成させた。

舞台はアフガニスタンのバーミヤン。6歳の少女バクタイ(ニクバクト・ノルーズ)は、隣に住む男の子アッバス(アッバス・アリジョメ)が読み書きの勉強をしていることに影響を受け、自身も学校に通って勉強したいと強く思う。だが、学校で勉強するにはノートとペンが必要ということでバクタイは金を稼ぐべく街に出て卵売りの仕事を始めるが・・・・・・。

バクタイが卵を売ったり、アッバスが通う男子校に入っては追い出されたり、数人の男の子たちの戦争、処刑ごっこに巻き込まれていじめられたり、女子校に入ったりといった描写は、児童向け冒険モノのような感じで描かれている。

微笑ましい冒険劇である一方、戦争やテロの恐ろしさや悲しさを子供の目線で描いて観る者に訴えかけており、本作の一番印象深いポイントだと言える。それが、バクタイが数名の男の子たちにつかまってしまう戦争、処刑ごっこのシーンだ。子供たちが木の杖を銃に見立てて銃撃戦を再現し、バクタイがやっとの思いで入手したノートが彼らに奪い取られて紙飛行機が作られ、爆撃機に見立てて飛ばす。さらに恐ろしいのは、両目と口の部分だけを穴開けした紙袋をバクタイに被らせて洞窟の中に連れ込み、その中には同じく紙袋を被らされた女の子が立たされているシーンだ。子供たちがここまで本格的な戦争ごっこをやっていることにひどく驚愕させられるが、それはアフガニスタンで起きた戦争等が子供たちに強い影響を及ぼしているからだと思える。この戦争、処刑ごっこをしている無邪気な子供たちが成人し、兵士となってリアルな戦争で人々を殺傷していくのかと思うと本当に恐ろしくて悲しい。

【75点】

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2009年3月19日 (木)

カブキマン

『悪魔の毒々モンスター』シリーズでお馴染みのトロマ社と日本のTVゲームメーカーで有名なナムコと配給会社ギャガが生み出した国辱系おバカ映画。

日本人一家殺害事件の捜査をしていたニューヨーク市警刑事ハリー(リック・ジアナシー)がある事件をきっかけに“カブキパワー”なるものを授けられてしまい、これが原因でカブキマンというヒーローに変身する能力を身につける。大企業のオーナーで慈善家のレジナルドに化けたイーブルワンを退治するべくカブキマンが立ち上がる。

本作の面白さといえば、やはりおバカと娯楽性に徹したシーンであり、その中でもヘンテコな日本ネタであると断言できる。

まずは、冒頭でアメプロのヒール系レスラーばりのペインティングをした宍戸錠という感じのカブキ一座の座長サトウがカブキパワーを後継者に授けるための準備としてミミズ数匹を手づかみでムシャムシャと食すという悪趣味全開のグロテスクシーンが観られる。上映開始直後にこのようなトンデモナイものを披露してくれる時点で本作はタダモノではない作品であることが確信できる。

次はカブキだ。サトウの後継者となるイチローとその家族は殺害され、後継者欠場のままで予定通りに公演が開始される。ここで面白いのは、その公演のタイトルでその名は“カブキカップル”。「何じゃそりゃ?!」という感じのベタでありながらも不思議なこのネーミングは忘れられないほどの強烈なインパクトを与えてくれる。その内容が興味深いポイントとなる。いざ観ると白塗りの外人による学芸会かコントのような感じでどうみても歌舞伎には見えない。上演中に白塗り連中に紛れ込んだ敵の腹心がマシンガンを大乱射し、サトウは撃たれてしまう。たまたまこれを鑑賞していたハリーがこれを阻止しようと立ち上がって応戦する。そこで死ぬ寸前のサトウとハリーがパニックに便乗させられたかの如くディープキスをしてしまう。なんと、このキスがカブキパワーの伝授だった。これによってハリーはカブキマンに変身してしまったのである。このキスといい、カブキカップルの内容よりも突如勃発した大乱射の方が観客のウケが良い(場内大爆笑!!)という描写が面白すぎるのである。

歌舞伎役者とは程遠く、『デビルマン』か『オレたちひょうきん族』のブラックデビルに近いとも思えるビジュアルのカブキマン。彼が繰り出す必殺技がこれまたベタなのである。日本刀で斬る、宙に浮いた下駄が炸裂、強風を吹かせる大扇子、殺傷能力抜群の無数の割り箸、睡眠作用を発揮する巻き寿司、縄のように縛りつけるソーメンという具合に武器は必ず日本のイメージを強調するアイテムなのである。この小道具の使い方は、面白さを発揮させることに成功しており、凄まじい印象を残す。

全編にヘンテコでバカバカしい珍味が観られ、その面白さが十分に味わえる。カブキマンが途中で変身ミスをしてピエロマンになってしまうという大脱線ぶり。このシーンで観られるカーチェイスとカークラッシュがヘナチョコであるものの車の大爆破だけはアクション映画らしい迫力を存分に発揮した出来栄え。真のカブキマンになるべく修行をするが、まずは逆立ちをしながら米粒を並べるというもの。その米粒が黄色や茶色という観たことも食べたこともないようのなのである。他にも生魚を背中の部分から丸かじり、ハリーとサトウの孫娘ロータスの異常なほど激しく燃え上がるセックス(散々ハリーの顔面を殴ったり股間付近を木刀で叩いたりといったS女ぶりを発揮していたロータスもベッドでは意外と大人しいというギャップも笑える)、敵ボスであるレジナルドのオフィスの一室に徳川家康が持っていたという刀が置いてあり、これが家康死後の1638年に製造されたという日本史の学習不足といったぶっ飛びメニューが観られ、とにかくクレイジーパワーが遺憾なく発揮されている。結果的には、これらの内容がしっかりと面白さを味わえるものに仕上がっているので良いと言える。

ラストは、ロータスがレジナルド一味に拉致され、ハリーがカブキマンとなって彼女を救出するべくレジナルドに挑む。レジナルドは悪霊イーブルワンに変身するが、このモンスターがとにかくグロテスクなビジュアルなのである。イーブルワンの破壊力、攻撃、カブキマンとのバトルといったポイントが気になるのだが、イーブルワンのいい所と言えば、変身のみであとは簡単にやられてしまって終わりなのである。このバトルをしっかりと描けなかったことが大きなマイナスポイントとなるが、ツッコミたくなるような面白さを追求したい方にとっては、これもありだと捉えることができるだろう。

とにかく最初から最後までバカでヘンテコでクレイジーな面白さが味わえる珍品なのである。エロ、グロ、ナンセンスの三拍子が揃い、アクションの面白さも取り入れた娯楽性に徹した作り方は大いに評価したい。

それにしても製作に日本が携わっているにも関わらずここまで日本のイメージをハチャメチャにしているということは、これを逆手にとってウケを狙ったのかも知れない。

【60点】

Photo

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2009年3月 2日 (月)

北国の帝王

アメリカ全土が大不況の真っ只中の1933年。失業者は浮浪者と化し、ホーボーと称されて社会ののけ者にされていた。彼らは列車のタダ乗りをして全土を移動していた。だが、彼らは19号列車だけは乗らないようにしていた。なぜなら、そこの車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)は無賃乗車は絶対に許さず、見つけるとすぐにハンマーで殴り殺すという冷酷極まりない男だからである。ホーボーの中に“北国の帝王”と称されるAナンバーワン(リー・マーヴィン)がこの列車のタダ乗りに真っ向から挑戦する。

男性向け映画の巨匠ロバート・アルドリッチとリー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナインという男臭くて武骨な二大スターによる骨太な娯楽アクション映画の傑作だ。

見所はやはりAナンバーワンとシャックの激突だ。はじめのうちは二人の闘いも大した描き方はされないが、ストーリーが進展するにつれて除々にヒートアップし、クライマックスで決死のバトルが繰り広げられる。Aナンバーワンが材木と斧、シャックがハンマーとチェーンという具合に両者が武器を駆使して意地をぶつけ合って闘う姿に目を見張らされ、ハラハラドキドキさせてくれる。この初老のオヤジのバトルをここまでエキサイティングに描いた点は、今観ても珍しく思える。面白く仕上がった点は、二人の役者に男臭さという魅力とインパクトが強い存在感があるからこそだと言っても良いだろう。

男同士の対決をメインに描く一方でAナンバーワンと生意気な若者シガレット(キース・キャラダイン)の友情めいた描写も観られ、これがまた男性向け映画に相応しい。元々は仲が悪かった二人。シガレットは持ち前の達者な口調と若者ならではの生意気さが印象的だ。自分こそが19号列車を制覇し、ナンバーワンになるとほざいてAナンバーワンと共に行動する。この模様をロードムービー風に描いている。そんなシガレットもいざというときにはほとんど何もできず、本当に口だけの男なのである。最終的には、Aナンバーワンから現実を見させるべく目を覚まさせてやるという感じで列車から放り落とされてしまう。劇中では役立たずだったシガレットは、映画を面白くさせるためには結構役立ったのである。

ちなみに本作は、元々はサム・ペキンパーが企画していたが、プロデューサーとのいざこざが原因で降板してしまったのである。ペキンパーが撮っていれば、ラストの見せ場は強烈なバイオレンスを徹底的に追求した凄まじい仕上がりになっていただろう。

【80点】

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2009年1月22日 (木)

カタストロフ/世界の大惨事

世界各地で起きた数々の大惨事映像を寄せ集めて紹介するドキュメンタリー作品。

大惨事のメニューは、フロリダでのハリケーン、飛行船ヒンデンブルグ号の大爆破、F-1レースでの選手死亡、高層ビル大火災等々。これらの映像の殆どは、かつて報道番組でも紹介されたものである。

本作は悪趣味系モンド映画に該当する作品であり、本作を知る多くの方々もそのように捉えているようであるが、実は意外と真面目な事故・災害ドキュメンタリー作品という感じの作風である。だから、悪趣味系にしてはあっさりとした淡白な出来栄えとなっている。

冒頭で観られる機関車同士の衝突による大爆破、豪華客船の大爆破、ビルの爆破倒壊といったアクション映画の見せ場のようなシーンのダイジェストに圧倒され、この調子でテンポ良く凄まじい衝撃シーンが次々と紹介されるのかと期待しすぎると肩透かしを喰らうこと間違いなしと断言しても良いほどだ。

終盤で観られる高層ビル火災でビルから投身する者が続出し、地面に倒れている遺体は実に痛々しい。本作を悪趣味系の視点から観ると、ここでやっと売り物である悪趣味テイストが若干だけ発揮されたという感じなのである。

尊い人命の喪失を見せ物にしている作品でもあり、それを考えるとまさに不謹慎そのものであり、後味もかなり悪い。本作の悪趣味はこの点からひしひしと感じ取れる。

ちなみに本作は、ボストンでは公開後の三日間に渡って174人もの失神者を出させ、世界各国では上映禁止、上映反対運動、シーンのカットがなされたりといった悪名高い武勇伝を残した。それとは裏腹にカナダでは大ヒットを記録したのである。様々な意味で凄い伝説的な作品だと言える。

【35点】

Photo

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2008年11月28日 (金)

巨大蟻の帝国 (巨大アリの帝国)

放射性廃棄物がいくつかのドラム缶に詰められて海へ投棄され、リゾート地の海岸に漂着。ドラム缶から垂れ流れた物質に無数のアリが接触する。やがてアリは巨大化し、この地を訪れていた人々を襲撃する。

監督兼製作は、バート・I・ゴードン。彼は巨大生物をネタにしたパニック作品を得意としている。本作の前年には、巨大化したネズミ、ハチ、ニワトリ等が人々を襲撃する『巨大生物の島』(76)を手懸けたのである。原作は、『巨大生物の島』同様にH・G・ウェルズ。

本作の見所は、やはり巨大化したアリ軍団による襲撃、喰い掛かるシーンだ。魅せ方に関してはそれほど悪いことはない。雰囲気に相応しい音楽を巧く使って恐怖感を煽り立て、スリリングに描いている。だが、それ以外のシーンが冗漫な感じで少々の退屈を感じさせてしまう。結果的には、これぞまさにB級モンスターパニック作品だと言える出来栄えである。

終盤で観られる砂糖製造工場でメスアリのフェロモン噴射で人々を洗脳するシーンは、バカらしく思えて珍妙だ。

『ジョーズ』(76)の大ヒットによってその亜流モノが次々と量産されてきたが、本作もそのうちの一本に該当する。汚染物質によって生物が異変を起こすということもこの手の作品の特徴的なポイントである。

上映時間は90分足らずである。くだらないシーンも多いが、面白い見せ場がしっかりと用意されているのでそれなりに良いと思う。

【45点】

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2008年10月27日 (月)

ゲット スマート

諜報機関“コントロール”本部が犯罪組織“カオス”に襲撃され、全エージェントの顔や身元がバレてしまう。唯一敵にバレなかったマックスウェル・スマート(スティーブ・カレル)が分析官からエージェントに昇格する。憧れの役職をゲットしたスマートはエージェント86となり、整形手術をしたばかりの凄腕美女エージェント99(アン・ハサウェイ)とタッグを組んでカオスに挑む。

『007』シリーズのパロディーが満載の往年の人気TVドラマ『それ行けスマート』(65~70)のリメイク映画版。監督は、コメディーテイストを得意とするピーター・シーガル。

本作の面白さは、やはりコメディー描写と気合の入ったド派手なアクションシーンだ。コメディーに関しては、日本のTVお笑い番組で観られるようなコントに近いものがあり、ゆるやかなおとぼけギャグを随所に散りばめている。これが結構分かりやすく描かれているので単純な面白さが味わえて笑わせてくれる。アクションシーンは、爆破やカーアクションといった見せ場を迫力を追求して魅せつけてくれる。特にクライマックスは見応え抜群の出来栄えであり、ここでも笑いをしっかりと追求している点が素晴らしい。コメディーとアクションという二大要素の絡み合いが最高潮に達する瞬間は、強烈なインパクトを与えてくれると言っても良いだろう。

豪華なキャスト陣によるキャラクターも注目すべきポイントである。主役・カレルと準主役・ハサウェイ以外の脇役キャラの活躍は本当に面白い。凄腕スパイのエージェント23をプロレス出身のアクションスターであるドウェイン・ジョンソン(ザ・ロックから改名)が演じる。彼の近年の出演作は未公開だったが、本作で久々に日本のスクリーンに戻ってきた。それも単館系ではなくてロードショー大作としてだからファンにとっては嬉しく思えるはずだ。同じくプロレス出身で今も現役で活躍しているダリープ・シン(身長はなんと230cm!!日本ではジャイアント・シン名義で同じく230cmのジャイアント・シルバとの巨漢タッグで新日本プロレスのリングで暴れまわった。二人の仲は悪く、試合中に度々仲間割れしていた。)が敵役を好演。彼はシーガル監督のリメイク版『ロンゲスト・ヤード』でデビュー。プロレスラーが大挙出演しているこの作品で当時日本でも人気者だった格闘家のボブ・サップと絡んでいたことが今でも忘れられない。本作では『ロンゲスト~』以上に彼のキャラクターを巧く描き上げることに成功しており、今後もシーガル監督作品の常連役者として活躍するような予感すらした。他にもアラン・アーキン、テレンス・スタンプ、ジェームズ・カーン、TVドラマ『HEROE』でお馴染みのマシ・オカが顔を揃えており、さらにビル・マーレイがカメオ出演している。

上映時間は110分。飽きさせないように工夫を施してはいるが、それでも少しダレてしまう部分があったことがマイナスであり、この無駄を省いていればもっと良かっただろう。結果的に言えば、本作は面白い作品であることに違いはないのである。

【80点】

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2008年10月17日 (金)

カリフォルニア・キッド (『連続殺人警官』、日本未公開※TV映画)

ある田舎町では暴走車の取締りに対して異常な執念を見せる悪徳保安官(ヴィック・モロー)が牛耳っていた。彼に弟を殺された男(マーティン・シーン)が愛車の34年型フォードクーペに乗ってこの町に現れ、復讐を挑む。

本作の魅力の一つは、やはり主人公が乗り回す34年型フォードクーペだと言える。黒いボディーにファイヤーパターンのピンストライプという仕様が実にカッコいい。大変古いクラシックアメ車にも関わらず今観ても憧れてしまうほどだ。昨今、極限までにチューンナップされ、デザイン等がカッコいいスポーツカーが激走する作品がチラホラ観られるが、その原点が本作ではないかとも思えたほどだ。山道でドリフトするシーン等からもそういった感覚を漂わせている。ちなみに本作のタイトルは、この車を表現する言葉として世界中でも用いられているのである。

次の魅力は、今となっては本当に豪華だと言い切れる異色のキャスト陣だ。マーティン・シーンを筆頭にヴィック・モロー、「パパス&ママス」のミシェル・フィリップス、そしてニック・ノルティが顔を揃えている。

弟を殺された男と悪徳保安官との闘いという構図でストーリーが展開される単純明快な勧善懲悪モノで車の魅力を全面に押し出した作風だ。監督は娯楽映画の職人リチャード・T・へフロン。彼ならではのツボをしっかりと押さえた演出は、低予算のTV映画ということもあって派手なアクション映画ではないもののしっかりと面白さを醸し出すことに成功していると言える。ルチ・デ・ジーザスの音楽も絶妙であり、車が激走するシーンをしっかりと盛り上げると同時にカッコ良さと面白さを倍増させている。

上映時間は70数分程度で分かりやすい内容だからサラッと観られる。このお得感は、本当に嬉しいこと間違いなしだ。本作こそ珍しくて貴重な作品の一つであることに違いはないだろう。

【70点】

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発売日:2008/11/05
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2008年9月16日 (火)

刑事キャレラ 10+1の追撃

エド・マクベイン原作の刑事サスペンス小説「87分署」シリーズの「10+1」を舞台をフランスのニースに置き換えて映像化した作品。

ニースの街でライフルによる連続殺人事件が発生。キャレラ刑事(ジャン=ルイ・トランティニャン)は捜査に乗り出すが・・・・・・。

ニースの街並の活写は優雅で鮮やかな印象を与える。そこにエンニオ・モリコーネのゆったりとしたテーマ曲が流れる。場面と音楽が巧く絡み合っており、落ち着いた雰囲気をしっかりと醸成させている。これが劇中で描かれる殺人描写やキャレラ刑事の活躍以上に印象深い。

ジャン=ルイ・トランティニャン扮するキャレラ刑事の活躍ぶりを一匹狼刑事のように描いている。当時の刑事モノ作品では一匹狼刑事を主役にした作品が多々観られた。その殆どがアウトロー的なイメージでアクションを魅せつけるという格好良さが売りであった。キャレラ刑事の描き方は、刑事サスペンスということもあって格好良さや迫力等を無駄に追求することなくあくまでも地味目で自然体な感じの比較的大人しい系である。映画だから少しぐらいは派手に暴れ回って格好良さをアピールしてみても良かったのではないかと思えるほどだ。

サスペンスとしては、殺された人々の繋がり等が分かってくる後半でしっかりと面白さが味わえ、全体的に言えばまとまりがあって描き方も十分良い。

本作は、あくまでもサスペンス作品。キャレラ刑事のアクションを期待すると間違いなく面白くない作品と思えるだろう。

【50点】

刑事キャレラ 10+1の追撃 Music 刑事キャレラ 10+1の追撃

アーティスト:エンニオ・モリコーネ
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発売日:2007/07/18
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2008年9月 4日 (木)

今日も僕は殺される

VFX界の巨匠と称され、数々の名作の特殊メイクを担当してきたスタン・ウィンストンの最後のプロデュース作品である本作は、毎日殺される青年の姿を描いた不条理なサスペンス・ホラーである。

イアン・ストーン(マイク・ヴォーゲル)はアイスホッケーの名選手であり、恋人ジェニー(クリスティーナ・コール)との関係も絶好調で充実した生活を送っていた。イアンが試合で敗北を喫した夜、帰宅途中に倒れている人物を助けようとしたその時、その人物に線路に押さえつけられ、あっという間に電車に轢かれて死んでしまう。死んだはずのイアンが目を覚ますと会社員としてオフィスにいる。そこには恋人であるはずのジェニーが単なる同僚として勤務している。その後、イアンのもとにグレイ(マイケル・フィースト)という謎の男から「君は狙われている」と告げられる。

とにかくユニークな設定と独特のストーリーが興味深い。主人公が毎日殺される理由と謎が注目すべきポイントだと言え、これらを理解するためには登場人物のセリフが重要で外せないことが言える。理由と謎が解明されるまでの描き方や展開も面白い。

監督はCM界出身のダリオ・ピアナで長編映画の監督は本作が初体験である。そんな彼がサスペンス・ホラーに相応しい斬新な映像をとことん魅せつける。映像作りは秀逸であり、緊迫感や恐怖感をしっかりと醸し出した演出も素直に良く出来ている。これは、ダリオの腕前に加えてスタン・ウィンストンらの大きなバックアップがあったからこそだと断言できる。

低予算であるが、アイデアを活かせて魅せるべき部分をしっかりと魅せているのでしっかりと面白い作品に仕上がっている。87分という短めの上映時間がこれまた観易く思えて良い。ホラー好き、サスペンス好きは何が何でも必見だ。

【75点】

今日も僕は殺される デラックス版 DVD 今日も僕は殺される デラックス版

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2008年8月15日 (金)

クレイジーポリス大追跡

B級娯楽映画の帝王ロジャー・コーマンが製作し、彼の門下生であるチャールズ・B・グリフィスが監督を務めたコメディータッチのカーアクション作品。

保安官ターナー(ウォルター・バーンズ)は、いつものように若者ロスコー(ジミー・マクニコル)におちょくられてイライラしていた。そんな折、ターナーの娘ペギー(ジャネット・ジュリアン)が学園祭の最中にロスコーにさらわれてしまい、ターナーたちはパトカーを総出させて大追跡を開始する。そして、ペギーに惚れる男たちも車に乗ってこの追跡に参加し、パニック状態になってしまう。

ほとんどのシーンが走りっ放しという点が特色であり、これに関してはH・B・ハリッキーの『バニシングIN60”』(74)や『ジャンクマン』(82)とほぼ似通っている。パトカーをはじめとする多種多様の車両が激走しては横転とクラッシュを繰り返して破壊される。この模様をコメディーとして描いているのでカーアクションとしての面白さに更なる面白さが加味され、観ていて本当に面白く、とても良い気分にさせてくれる。ストーリーも単純化されていてあってないようなものだからカーアクションのスリル、迫力、スピード感を満喫してコメディー描写を笑い飛ばしてという具合に思う存分に楽しむことができる。上映時間は90分もないのでこれがまた気楽で観易い。

ちなみに本作で描かれているカーチェイスシーンは、同じくロジャー・コーマン製作の『バニシングIN TURBO』(76)、『ランナウェイ』(77)、『パトカー・ハイウェイ』(76、日本未公開、TV放映時タイトル『悪いのは奴らだ』)等のシーンの使い回しである。恐らく低予算ということでこの手段を選んだのだと思える。それにしても演出の下手さが少々目立つ点だけは痛い。

本作は最初から最後まで楽しめる作品であり、B級娯楽映画としては合格の基準に達しているといっても良い程だ。とにかく楽しんだ者が勝ちなのである。

【75点】

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2008年6月27日 (金)

ゲシュタポ卍<ナチ>収容所

鬼畜系変質者のユダヤ人収容所々長と元女囚が収容所の廃墟で再会する。この二人の姿とかつて収容所で行われていた残虐非道な女性虐待の模様を交互に描く。

ナチ収容所での女性虐待を描いた悪趣味系残酷エロス作品『イルザ』シリーズの第一弾『ナチ女収容所 悪魔の生体実験』(76)の影響を受けており、それと同時に『愛の嵐』(73)と『ソドムの市』(75)のテイストを盛り込んだ作品。亜流モノを得意とするイタリア娯楽映画は、エロス作品においても亜流モノを作り出したのである。残虐性を追求した描写の連発に関しては、残酷描写がお得意のイタリア製娯楽映画らしい出来栄えだ。それにしても見所となるエロスとクレイジーかつサディスティック丸出しのハードコアバイオレンス描写は、強く印象に残るほどドギツく描かれたシーンが二、三あるが、演出が凡庸でまだるっこいため、巧く活かすことができていない。『イルザ』シリーズに比べるとはるかに劣っているのだ。時折、芸術かぶれしたシーンも観られるが、変なシーンが多いためか正直悪いとは思えない。このシーンを観ていると、チェザーレ・カネヴァリ監督は悪趣味エロス作品を撮らずに少しでも努力してマトモな作品を撮った方が良かったのではないかと思えたほどだ。後半になるにつれて面白さが大幅にパワーダウンしてしまい、これが実に痛すぎるのである。

女囚映画を極めたい方にオススメしたい作品だ。

【30点】

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2008年6月25日 (水)

コブラ/フランコ・ネロ 殺しの罠 (日本未公開)

コブラと呼ばれる凄腕の元麻薬捜査官ラリー(フランコ・ネロ)は、かつての事件で敵の罠にハマってしまったことがきっかけで職を辞し、今では私立探偵として活躍している。だが、かつてのボスから自身の宿敵が絡む事件の調査を依頼され、復讐を果たすべくジェノバへと赴く。

イタリア製ポリスアクションとして知られている作品ではあるが、実質的に言えば探偵アクションである。

監督はイタリア製娯楽映画の職人エンツォ・G・カステラッリ。本作では、サスペンス要素を全面に押し出している感があり、肝心のアクションはフランコ・ネロが魅せつける格闘シーンが主体となっており、地味で控えめな感じだ。それでも港町の倉庫街を舞台にした追跡劇、銃撃戦、ドラム缶数個の爆破シーンといった描写は、刑事アクションらしい仕上がりで面白い上に印象的だ。

本作のもう一つの見所と言えば、やはりラリーと息子の親子愛を描いたシーンだ。二人が野球のバッティング練習をして戯れるシーン、サンドウィッチを頬張るシーン、二人で地元に帰ってずっと一緒に暮らすことを約束して熱く抱擁するシーンは、本作の売りモノであるアクションやサスペンス以上に印象的であり、親子の強い絆がじっくりと伝わってくる。その息子が敵一味に拉致されそうになり、敵に金的を喰らわせてその隙に逃げるが、すぐさまトラックに跳ねられ、死んでしまう。息子の悲惨な死に大粒の涙を流す悲しさいっぱいのラリーの泣き顔が今でも目に焼きついている。

パオロ・ヴァジルの音楽がサスペンスやアクションとうまく絡み合っており、ムードを一段と盛り上げることに成功している。

結果的に言えば、本作は普通に面白いB級娯楽アクション映画である。

【70点】

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2008年4月11日 (金)

片腕ドラゴン

香港のカンフーアクション映画スターであるジミー・ウォングが監督、脚本、主演の一人二役をこなしたカルト的人気を誇る傑作。

師匠を殺され、右腕を切断された男ティンロン(ジミー・ウォング)が左手を岩をも砕く鋼鉄のように鍛え上げて復讐に挑む姿を描く。

とにかくカンフーアクションの見せ場が多く散りばめられている。その内容は漫画チックで荒唐無稽ではあるが、観る者を飽きさせず、細かいことを考えずに楽しむことができる。

また、敵のボスが世界の武道の強豪を雇うが、そのメンツが個性的に描かれていて面白い。日本の沖縄武術の達人に柔道家、インドのヨガマスター、気功使いのラマ僧コンビ、タイのムエタイコンビがカンフーに挑み、異種格闘技戦の面白さを味わえる。これだけは格闘技ファンにはオススメしたくなる。特にインドのヨガマスターの珍妙な攻撃はまさにユニークであり、一度観れば忘れられないほどの強いインパクトを与える。沖縄武術の達人とラマ僧コンビの相性の悪さも印象的だ。

テーマソングにあの『黒いジャガー』(71)のテーマソングがそのまま使用されていることにも驚愕させられる。しかも劇中でも頻繁に使用されている。これが無断使用ということもファンの間ではよく知られていることだ。

三年後には正式な続編『片腕カンフー対空とぶギロチン』(75)が製作され、両作ともクエンティン・タランティーノ監督に大きな影響を与えたことは有名な話である。

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2008年4月10日 (木)

今夜、列車は走る

現在、第二のニューシネマブームと言われているアルゼンチン映画界が全世界に向けて送り出した本作は、鉄道民営化によって多くの失業者を出した激動のアルゼンチン社会を描いた社会派人間ドラマ。監督は本作が長編初挑戦という期待の新鋭ニコラス・トゥオッツォ。

90年代のアルゼンチンのとある町。そこはかつて鉄道産業によって繁栄したが、民営化の波が押し寄せ、ある日突然路線廃止が決定。最後まで労使交渉に臨んだ組合代表は厳しすぎる現実を変えることは不可能と悟って自殺し、彼の兄であるカルロス(ダリオ・グランディネティ)と四人の仕事仲間たちも愛する家族と生活のために自主退職を余儀なくされるハメとなる。

本作の主人公は、カルロスを含めた五人の鉄道員で後の失業者だ。彼らは年代も違えば世代も違う。誇りある仕事を奪われてしまった喪失感、怒り、悲しみ、苦しみ、現実の厳しさを五人の生活の姿から浮き彫りにする。各々のキャラクターをしっかりと確立した上で巧く描き分けている点は実に秀逸だ。また、彼らにとって鉄道員という職業が天職であり、誇らしく思えるということについても克明に描かれており、観る者にじっくりと伝わってくる。

悲壮感や硬くて小難しい部分だけに捉われないようにユーモアな部分を要所に取り入れており、これがドラマとしての面白さをしっかりと引き出しており、硬軟を描き分けていることが優れたポイントだ。

冒頭で登場した三人の子供(組合代表の息子、カルロスの娘とその彼氏)が重要なキーパーソンとなり、ラストで大きな活躍を魅せる。それは、希望を失った将来の“次の出口”を求めて思い切った行動を実行するのである。このシーンはまさに感動的だ。劇中の厳しい現実に直面し、希望の光を失った失業者と同じような境遇に立たされている人にとっては、最高のエールとなるだろう。必ず存在する次の出口を見つけ出すために何か行動を起こせば輝く明日、未来を取り戻すことが出来るということを教えてくれる作品だ。

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2008年2月28日 (木)

荒野のドラゴン

カウボーイに憧れてテキサスの街にやってきた上海ジョー(チェン・リー)は、極悪な農場主スペンサー(ロバート・ハンダー)と対決したことから次々と彼の一味に狙われ、戦いを続けながらも放浪する。

ブームが衰退したマカロニウエスタンに新たに世界中でブームが沸き起こった香港カンフーアクションを融合させた超異色のイタリア製B級娯楽アクション作品。

主人公の上海ジョーが様々な敵を蹴散らしていくという単純化された筋書きは、何も考えずに楽しめるということでこれがまず最初に挙げる良いポイントだ。あとの良いポイントと言えば、見所の多さぐらいだろう。荒唐無稽丸出しの漫画チックなケレン味を前面に押し出した描き方は実にぶっ飛んでいるという感じであり、これがB級娯楽作品らしさを遺憾なく発揮しているためその面白さを存分に堪能できる。それだけに登場する個性的な敵キャラたちもかなり印象的である。特にラストでジョーとバトルを繰り広げる赤い着物を着たチョンマゲ姿の忍者風の武士ミクリヤ(ミクリヤ・カツトシ)は、そのルックスのインパクトが強烈すぎるため観る者の目に焼き付くことは間違いないと言ってもいいほどだ。また、マカロニウエスタンならではのバイオレンス描写はドギツく描かれ、特に目玉抉りぬきに手首切断、剥がされた頭皮といったシーンは凄惨を極めた上に血生臭さを存分に感じさせ、まさに衝撃的な映像という具合だ。映像に隙が観られることも多々あり、それが原因で安っぽさを感じさせてしまったりカンフーと言いながらもやっていることは空手といったマイナスポイントやツッコミ所も多いため、アクションやバイオレンスだけでなくこのような部分を楽しんでみても良いだろう。

上海ジョーを演じるチェン・リーは、実は早川明心という名の純粋な日本人である。彼は元々はイギリスやイタリアで空手の指導員として活躍していたのである。ひょんなことがきっかけで本作の主演に抜粋されたとのことである。本作の二年後には志穂美悦子主演の東映空手格闘アクション『女必殺拳』シリーズの第三弾『帰ってきた女必殺拳』(75)に端役で出演し、志穂美や倉田保昭との共演を果たした。その後は再び渡英し、緩衝材の製造会社SANSETSUを設立し、経営していたが、05年に帰らぬ人となった。

とにかく何もかもが凄すぎるトンデモナイ珍作だ。

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2008年2月 5日 (火)

コックファイター (日本未公開)

闘鶏で負けたフランク(ウォーレン・オーツ)は、勝ってメダルを手にするまでは一切声を出さないことを決め、伝説の鶏“白い稲妻”を手に入れて猛特訓に明け暮れる。

ウォーレン・オーツが闘鶏に拘る男を殆どセリフ無しで表情と身振り手振りを中心に好演。闘鶏に熱中しすぎて妻に愛想を尽かされて逃げられてしまうというフランクの闘鶏マニアぶりは面白可笑しいが、セリフが少なすぎる分、男臭さと渋さが漂う寡黙な男というイメージが確立されて好印象だ。オーツはこの風変わりな役柄をかなり喜んだという。

見所はやはり闘鶏のシーンだ。オーツの役柄同様に風変わりな題材は地味でマニアックではあるが、興味深い。鶏同士のバトルは時には血生臭く、やや残酷な感じだ。この残酷さがアメリカでは問題となった。実際に闘鶏はアメリカの殆どの州で禁止されていたのである。

製作はB級娯楽映画のヒットメーカーであるロジャー・コーマン。監督はモンテ・ヘルマン。本作はコーマンの失敗作の一つでもあり、ヘルマンにとっても『断絶』(71)に続く失敗作となった。

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2007年12月 4日 (火)

荒野の1ドル銀貨

南北戦争後、南軍の捕虜だったゲイリー(モンゴメリー・ウッド=ジュリアーノ・ジェンマ)とフィル(ジュゼッペ・アドバッディ)のオハラ兄弟は、銃身を短くカットされた拳銃を返され、釈放された。西部へと向かった弟の後を追ったゲイリーは、街の顔役マッコリー(ピーター・クロス)から用心棒として雇われ、悪辣な農民グループの味方であるブラッキーを倒すことを依頼された。ゲイリーはブラッキーに挑むが、その正体が弟のフィルであることに気づいた瞬間に胸部を撃たれ、フィルもゲイリーだと気づいたときにはマッコリーたちに撃たれて死亡。ゲイリーは、胸ポケットにしまっていた1ドル銀貨のおかげで助かった。マッコリーたちの罠にハメられたことに気づいたゲイリーは、復讐すべく立ち上がる。

1ドル銀貨、銃身の短い拳銃といった小道具の使い方が巧妙でこれが観る者に印象を残す。ストーリー展開を観てわかることがやはり脚本の素晴らしさであり、まさにドラマらしい作り方となっている。モンゴメリー・ウッド名義で出演したジュリアーノ・ジェンマが魅せつけるガン裁きも見モノであり、元体操選手だった彼の抜群の運動神経を活かせた格闘アクションも披露し、これがアクション映画としての見せ場となっている。ゲイリーが敵からリンチ制裁を加えられるシーンは、マカロニウエスタンならではのバイオレンス描写ではあるが、残酷さをあまり感じさせないソフトな描き方だ。音楽も印象的であり、フレッグ・ボングストが歌った主題歌も当時は大ヒットを記録した。何もかもが印象に残る傑作だ。

ジュリアーノ・ジェンマは、本作でマカロニウエスタンのスターとして人気を呼び、不動の地位を築いた。ちなみに『続・荒野の1ドル銀貨』(65)は、『夕陽の用心棒』(65、日本未公開)の続編にあたり、本作とは一切関係のない別物だ。

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2007年11月 2日 (金)

キングダム 見えざる敵

1996年、サウジアラビアで発生したホバル・タワー爆破事件を基にした社会派サスペンス・アクション。監督は俳優としても活躍するピーター・バーグ。男の世界を手堅い演出で魅せつけるアクション映画の巨匠マイケル・マンが作品を大変気に入ったことで製作を手懸けた。

サウジアラビアの外国人居住区で自爆テロが発生。犠牲者の中には2人のFBI捜査官も含まれていた。同僚の死にショックを受けたフルーリー(ジェイミー・フォックス)は、アルカイダのメンバーであるアブ・ハムザの仕業だと推察し、現地での捜査を志望する。これに向けて4人編成の精鋭チームを結成。彼らは、5日間限定という条件付きでサウジアラビアへ赴く。

序盤からスケールの大掛かりな爆破シーンが観られ、スケールの大きさを実感させられる。その後は、緊迫したドキュメンタリータッチで描かれるサスペンスやフルーリーと現地警官との対立と友情といったリアリティーを追求した説得力のあるドラマが展開される。中盤以降は、荒唐無稽といっても過言ではない激しすぎるド派手なアクションシーンの連続となり、これが最大の見せ場となる。カーチェイス、大爆破、銃撃戦、格闘のどれをとっても観る者の手に汗を握らせると同時にハラハラさせ、生々しさと迫力に満ちた壮絶なシーンに仕上がっている。娯楽アクションの醍醐味を存分に堪能することができ、刺激的で最高に面白い。手持ちカメラの巧妙な活用も特筆すべきポイントであり、サスペンスやアクションを臨場感の溢れる衝撃的な映像へと仕立て上げ、見応え抜群だ。

本作は社会派と娯楽アクションの二つのテイストを楽しめるが、後者のイメージが強い。社会派ならではのお堅い部分を和らげ、楽しみやすい作品にするために娯楽のテイストが施されたのだろう。

キングダム/見えざる敵 DVD キングダム/見えざる敵

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『キングダム/見えざる敵』ジェイミー・フォックス インタビュー
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『キングダム/見えざる敵』ジェニファー・ガーナー来日記者会見
配給UIP映画
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2007年9月28日 (金)

殺しの分け前 ポイント・ブランク

リチャード・スターク(ドナルド・E・ウェストレイクの別名)の人気小説「悪党パーカー 人狩り」が原作のハードボイルド風サスペンス・アクションの傑作。

悪党ウォーカー(リー・マーヴィン)は友人マルと密売金強盗をやらかし、成功したと同時にマルはウォーカーを撃ち、彼の妻であるリンを連れて逃亡。ウォーカーは、協力者の情報を得て、マルへの復讐に乗り出す。

リー・マーヴィンが冷酷非情な悪党を渋いイメージで演じた。このイメージがクールな雰囲気をより一層に倍増させた。マーヴィンは、完璧な悪党キャラを確立させたと同時に観る者に強烈なインパクトを与えることに成功させた。

リンの妹でありマルの新しい情婦でもあるクリス役をセクシー系B級女優のアンジー・ディッキンソンが演じる。アンジーは本作でも持ち前の色気を振りまいているが、作風が硬派なハードボイルド仕立てということでセクシーな雰囲気はほぼ抑えられている。それでもリンのキャラクターをしっかりと描けているのでその点は素直に良いと認めることができる。

本作はアクション映画ではあるが、派手なアクション演出は観られない。だが、ウォーカーが銃をぶっ放すシーンや敵にパンチを食らわすシーンは、パンチの利いた見応えのあるアクションシーンに仕上がっており、硬派な作風なだけに硬めのパワーを感じさせる。音楽がサスペンスらしいムードを存分に醸し出し、その使い方も巧いので好印象である。また、全体的にドライなタッチが男らしさを感じさせ、ハードボイルドの世界を巧く引き立てている。

ジョン・ブアマン監督の代表作となった本作は、32年後にメル・ギブソン主演の『ペイバック』(99)としてリメイクされた。また、同じく悪党パーカーをモデルにした作品にはロバート・デュバル主演の『組織』(73)もある。

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2007年5月 5日 (土)

クロッシング・ザ・ブリッジ~サウンド・オブ・イスタンブール~

トルコはイスタンブール。ヨーロッパとアジアが交錯する都市として知られている。ドイツのサブカル系音楽の第一人者、アレキサンダー・ハッケは西洋と東洋の旋律が交わるという特色を持つトルコ音楽に関心を示す。そしてトルコ音楽が持つ魅力と謎を求めてイスタンブールへ飛ぶ。ハッケはそこで現地の様々なミュージシャンたちに出会い、セッションを重ねる。

音楽ドキュメンタリーではあるが、音楽を通したロード・ムービーとも捉えることができる。昨年公開された『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』(05)はヘヴィ・メタルの大ファンであるサム・ダン監督が「ヘヴィ・メタルは、何故嫌われるのか」という疑問を探るためにロスからニューヨーク等のメタルの聖地を訪れる模様を記録した音楽ドキュメンタリーだったが、本作はそれと同じ匂いを感じさせる。また、多方面からはトルコ版『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』とも呼ばれている。

序盤ではロックやヒップホップが紹介される。特にヒップホップは本場アメリカのモノと比較するとテンポとリズムは一枚上かと思えるほどでノリもかなり良い。メロディーはアメリカン・ヒップホップと似通っており、影響を受けていることがわかる。また、ヒップホップ・カルチャーの一つとも言えるブレイクダンスもトルコの若者たちに人気があり、あまり馴染みのないトルコのヒップホップ・カルチャーを垣間見ることができる。

中盤以降はトルコの民族音楽、古典音楽、クルド音楽がたくさん紹介される。民族性を感じさせるエレガントなメロディー、メッセージ性が込められた詩情に満ちた歌詞が印象的であり、トルコ音楽の魅力を存分に堪能できる。音楽面だけでなく、文化面も描くことによってトルコ音楽の奥深さを克明に描くことができている。

Jポップや一般的な洋楽を聴き飽きた方々は、本作でトルコ音楽の魅力に触れてみてもいいだろう。私はイスタンブールへ飛んだハッケから庄野真代の往年のヒット曲「飛んでイスタンブール」を連想してしまった・・・・・・。

クロッシング・ザ・ブリッジ ~サウンド・オブ・イスタンブール~ DVD クロッシング・ザ・ブリッジ ~サウンド・オブ・イスタンブール~

販売元:Viictor Entertainment,Inc.(V)(D)
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2007年4月 3日 (火)

グアンタナモ、僕達が見た真実

パキスタン系イギリス人のアシフ(アルファーン・ウスマーン)は、結婚式を挙げるためパキスタンへ向かい、同じパキスタン系イギリス人の友人二人とともに9・11同時多発テロの発端でアメリカ軍が攻撃中の隣国アフガニスタンに入国。しかし三人は米国軍兵に拘束され、テロリストとしてグアンタナモ収容所に入獄される。三人は過酷な日々を二年以上送ることとなる。

普通の若者三人がテロリストとしてグアンタナモ収容所で過酷な日々を送り、米軍基地に送還されたという実話を映画化した社会派人間ドラマ。この衝撃的な真実を当事のニュース映像や三人が当事の状況等を語ったインタビュー映像を随所に散りばめてドキュメンタリー・タッチに仕立てて描いている。その結果、当事のパキスタンの状況、タリバーン政権、アルカイダがどのようなものだったかが克明に描かれており、三人がいかにしてテロリストとして捕らえられ、どのように過酷な収容所生活を送ったのかを忠実かつリアルに再現することに成功できたのである。だから、出来栄えもごく普通のドラマといった感覚は殆どなく、まさに再現ドラマと呼ぶに相応しいほどである。また、ドキュメンタリー・タッチが取られているが、本当のドキュメンタリー作品だと思ってしまうシーンもかなり多く、臨場感の溢れる映像からは、乾いた感じと虚無感が伝わってくる。

ラストで三人がこの事件を通して自分自身がどのように変わったのかがインタビューで語られている。今まではヤンチャだった三人も事件後は大人として大きく成長したのであった。三人が過酷過ぎた二年以上の歳月をプラス思考で捉えているのだから凄いの他に言いようがない。

グアンタナモ、僕達が見た真実 DVD グアンタナモ、僕達が見た真実

販売元:東北新社
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2007年3月25日 (日)

輝く夜明けに向かって

舞台は1980年の南アフリカ北部。人種隔離政策“アパルトヘイト”によって多くの黒人たちが苦しめられていた。石油精製工場で働くパトリック・チャムーソ(デレク・ルーク)は愛する妻子とともに平穏で幸せな生活を送っていた。パトリックがある事をきっかけに会社をズル休みした日、反体制主義者たちによる石油工場爆破事件が発生。パトリックは容疑者として拘束され、テロ対策班のニック(ティム・ロビンズ)たちの拷問を受け、妻たちにも及ぶこととなる。証拠不十分で釈放されたパトリックは、自由を勝ち取るべくANC(アフリカ民族会議)に加入し、テロリストとして動き出す。

ごく普通の男性からアパルトヘイトに立ち向かう反逆の英雄となった実在の人物、パトリック・チャムーソの半生を映画化した社会派ドラマ。パトリックが妻や二人の娘と幸せに暮らしている姿や大好きなサッカーを子どもたちに指導する姿がとても印象的であり、パトリックという男をありのままに描いている。テロリストとなって反逆の英雄となるが正義のヒーローとしてかっこよく描かず、また極悪なテロリストとしても描かず、あくまでもごく普通の男性という部分にこだわって自然体に描いているという感じである。

ラストのサスペンス描写は実にサスペンス映画らしい出来栄えだと言える。本作はあくまでも社会派作品。だが、政治的要素やプロパガンダ要素を追求せず、お堅い作品に留まらないようするためにサスペンス要素を巧く取り込んだのだと思える。

最後には南アフリカのネルソン・マンデラ大統領やパトリック本人の映像が映し出される。アパルトヘイト撤廃と言えばマンデラ大統領がまず思い浮かぶだろう。でもこの作品を見た方々にはパトリック・チャームソという男を思い浮かべることとなるだろう。

現在、アパルトヘイトは存在しないが人種問題という社会の病は未だに消えることはなく残っているのである。

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販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
発売日:2007/06/14
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2007年2月16日 (金)

カクタス・ジャック

青年ジャック(トニー・ダルトン)は、勤務先のオーナーであり、街を牛耳っている暗黒街の首領カボス(ペドロ・アルメンダリス)の娘と交際していることが原因でカボスからリンチ制裁を加えられる。その後、ジャックが再度カボス宅を訪れると目の前でカボスが倒れていた。ジャックが助けを求めている間、カボスに恨みを抱く清掃員チーノがカボス宅を訪ね、倒れているカボスが身に着けている衣服や腕時計を奪って後にした。一方、チーノの息子ボッチャ(ラウル・メンデス)が身代金目当ての拉致事件を企て、カボスを待ち伏せていた。ボッチャは、背後からカボスを襲撃し、拉致することに成功したが、その男はカボスではなかった・・・・・・。

ストーリーはやや複雑だと思えるが、二つの拉致事件を巧妙に絡み合わせ、個性的なキャラクターたちのユーモアな会話が見る者をグイグイと引き込ませる。他にもソフトタッチナなバイオレンス描写やカー・チェイス、ルチャドール(メキシカン・プロレス)独特のプロレス技といったポイントを押さえた描写も見所であり、作品の面白さを倍増させている。映像に関してもスプリット・スクリーン(画面分割)を使用したりとこだわりのあるスタイリッシュな映像に仕上がっている。

全体的に言えば、クエンティン・タランティーノ監督の作品を彷彿させるような作品であり、メガホンを取ったアレファンドロ・ロサーノ監督自身もタランティーノ監督を意識して製作したのかも知れない。だが、コメディタッチの面白さという点ではロサーノ監督が一枚上手だと思える。また、タランティーノ監督作品によく見られがちな映画オタクぶりを発揮した過去の作品の引用等はほとんど感じられなかった。

ロサーノ監督はこの作品が長編映画デビュー作となった。すでに“ポスト・タランティーノ”、“メキシコのタランティーノ”と呼ばれている。そんな彼の次回作が気になってしまう。映画オタクぶりを発揮させてしまうのかが気になる・・・・・・。

カクタス・ジャック DVD カクタス・ジャック

販売元:エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ株式会社
発売日:2007/04/25
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2006年12月23日 (土)

グラマー・エンジェル 危機一発

ハワイを無法化させるマリファナ密輸組織とダイヤモンド密輸組織を壊滅させるべく活動しているセクシーな女性捜査官ドナ(ドナ・スピアー)とその仲間たちの活躍をエロスとアクションを交えて描く。

主演は米プレイボーイ誌の人気プレイメイトであるドナ・スピアー、ホープ・マリー・カールトン、そしてTV番組を中心に活躍しているロン・モス。プレイメイトたちのセクシーなボディーやソフトタッチな性交シーンといったエロティック要素が見所となる。見せ場となるアクション・シーンは、銃撃戦やバズーカー砲による爆破シーンを取り入れてはいるものの肩透かしな出来栄えで物足りない。本作において特筆すべきポイントは毒ヘビ退治であり、最大の見せ場となる。毒ヘビが下水溝に入り込み、トイレの便器を破壊して現れるシーンは肝心のアクション・シーンに比べると遥かにインパクトが強く、強烈な印象を残す。

ドナの家には、本作の監督であるアンディ・シダリスが以前に製作した『マリブ・エクスプレス』(84、日本未公開)のポスターが貼られており、ドナとターリン(ホープ・マリー・カールトン)が登場人物について語り合ったり、『007』トークで盛り上がったりといったシーンも面白さの一つでもある。

エロス、アクション、毒ヘビ退治による立派なB級娯楽作品である。

グラマー・エンジェル危機一髪 DVD グラマー・エンジェル危機一髪

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2006/12/08
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2006年11月16日 (木)

御冗談でショ

引退した前学長に代わり、ワッグスタッフ教授(グルーチョ・マルクス)がハックスレイ大学の総長に就任する。同大学に通う息子のフランク(ゼッポ・マルクス)にアメフトチームの強化を説得され、酒場でアメフトの名プレイヤーをスカウトする。だが、スカウトされた二人は、アメフトとは無縁の風変わりなピンキー(ハーポ・マルクス)とおかしな氷商人バラヴェリ(チコ・マルクス)だった。そんな二人をチームに迎え、敵対するダーウィン大学との試合が幕を開ける。

ミュージカル仕立ての歌とダンス、ピアノとハープの演奏シーンといった音楽的要素が最大のポイントであり、映画としての面白さに工夫が施されている。

全編にマルクス・ブラザーズならではのお馬鹿なギャグが散りばめられている。ピンキー役のハーポ・マルクスによる終始無言のサイレント風スラプスティック・ギャグは、コメディーとしての面白さを存分に引き出しており、強烈なインパクトを与える。お馬鹿なギャグは見所となる試合のシーンで最高潮に達し、悪ふざけ満載の試合が展開され、笑わずにはいられないほどの面白さである。

上映時間は、64分。忙しい中でも映画を見て笑いたい人には最適であり、とりあえず暇な人にもオススメの作品である。

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2006年11月 7日 (火)

滑稽恋愛三代記 (キートンの恋愛三代記)

石器時代、ローマ時代、現代の三世代を舞台にバスター・キートンが一人の女性に恋をする模様を面白おかしく描いたコメディーである。

三世代が舞台となるが、キートンをはじめ恋人、恋仇は一貫して同じキャラクターとなっている。それぞれの舞台に戦いをテーマにした見せ場がある。石器時代=棍棒を片手に格闘、ローマ時代=戦車レース、現代=アメフトというように各世代に相応しい内容の競技を取り入れている。三世代を交代制で描き、巧くつなぎ合わせたことによってバランスよくまとまっている。キートンならではの面白いギャグも存分に堪能できる。構成、設定、編集、ギャグのどれをとってもポイントは高い。

キートンがはじめて挑んだ長編作品であると同時に、新たな作り方にも挑戦した作品である。本作でキートンは“世代は変わっても愛に変わりはない”と訴えかけたのである。

キートンの恋愛三代記 DVD キートンの恋愛三代記

販売元:アイ・ヴィー・シー
発売日:2003/03/29
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2006年10月20日 (金)

黒いジャガー/アフリカ作戦

70年代ブラックスプロイテーション映画の金字塔である『黒いジャガー』シリーズの第三弾。監督は前二作を手掛けたゴードン・パークスに代わり、後に『タワーリング・インフェルノ』(74)や『キングコング』(76)を大成させるジョン・ギラーミンが担当。

私立探偵ジョン・シャフト(リチャード・ラウンドトゥリー)は、低賃金にも関わらずハードな肉体労働をやらせるための黒人奴隷をアフリカからフランスへと送り込んでいる謎の組織を暴くため、奴隷になりすましてアフリカへと赴く。

前二作はニューヨークのハーレム街が主な舞台であったが、今回はアフリカがメインとなる。黒人にとっては理想のヒーローであるシャフトが黒人奴隷という汚点に挑戦している。黒人たちにとっては、先祖が奴隷として不当な扱いを受けていたことは最大の屈辱であり、最大の傷を抱いていることである。そんな傷を抱いた黒人たちの代表として、かつての奴隷制度を否定するかのように戦うシャフトの姿は、まさに黒人たちのヒーローだと思える。

民族衣装に身を包んだシャフトが棒術を駆使しての格闘に挑戦している。前二作とはまったく違ったシャフトが描かれているのも見所である。黒人奴隷として周囲に溶け込んでいるように見えるが、タフでクールなカッコ良さは変わらない。

舞台がアフリカからフランスに移ってからは銃撃戦や爆破シーンといった見せ場が展開される。だが、迫力を追求できていないために盛り上がらないのが残念である。スパイ映画風のサスペンス演出は良くできていて面白い。

やはりジョン・シャフトは、ニューヨークのハーレム街と黒いレザージャケットが一番のお似合いである。

黒いジャガー / アフリカ作戦 DVD 黒いジャガー / アフリカ作戦

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2005/04/22
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2006年9月 9日 (土)

汚れなき悪戯

丘の上にある修道院の門前に生まれた直後の赤ちゃんが捨てられていた。12人の修道僧がその子をマルサリーノと名づけ、父母の代わりに育て上げる。やがて5歳になったマルサリーノ(パブリート・カルボ)はいたずらに明け暮れ、修道僧たちを困らせる。

マルサリーノ役のパブリート・カルボが実に可愛らしい。常に孤独ではあるが、空想上の友達と遊び、いたずらばかりする姿はどこか憎めない無邪気な幼少児といった感じである。そんなマルサリーノが行ってはならない納屋に立ち入り、十字架のキリスト像と仲良くなる。キリスト像のためにパンとワインを持ち運び、キリスト像もそれらを手にする。ファンタジックに描かれたシーンは、純粋な優しさを実感させる。

ラストは涙を誘うほんのりと悲しい結末となるが、感動の余韻を残す。作品そのものが純粋な少年のような感じであり、“汚れなきおとぎ話”と呼ぶに相応しいだろう。

汚れなき悪戯 DVD 汚れなき悪戯

販売元:アイ・ヴィー・シー
発売日:2002/08/25
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2006年7月29日 (土)

黒いジャガー/シャフト旋風

ブラックスプロイテーション映画の代表的名作である『黒いジャガー』(71)の続編である。

シャフト(リチャード・ラウンドトゥリー)は、恋人の兄が爆殺され、彼が隠し持っていた大金を巡って賭博がらみのギャング団抗争に巻き込まれてしまう。

前作に比べるとテンポやリズムがパワーダウンし、もたついているように感じられる。だが、サスペンスタッチの描写は音楽がスタイリッシュなムードを醸成し、ほんのりと危険な匂いを漂わせている。

アクションシーンはスケールアップし、手応えのあるパワフルな見せ場となっている。銃撃戦、ボートやヘリコプターを駆使したチェイスシーン、爆破シーンは手に汗を握るほどの興奮とスリルに満ち溢れていて、一気に形勢逆転といった感じである。

リチャード・ラウンドトゥリー扮するジョン・シャフトはやはりカッコイイ。黒いレザージャケットに身を包む彼はクールかつタフであり、歯切れの良いセリフ回しやスマートだがやや強引さを感じさせる動作は同性もつい憧れてしまうほどのヒーロー像である。改めてシャフトの魅力とスゴさを実感した。

黒いジャガー/シャフト旋風 DVD 黒いジャガー/シャフト旋風

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
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2006年7月21日 (金)

ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン

エミネムに認められ、今やヒップホップ界のカリスマ的存在となったラッパー、50セントの壮絶な半生を基にした作品である。50セント自身が主演し、本作で映画デビューを飾った。

父親を知らない少年マーカス(カーティス・“50セント”・ジャクソン)はドラッグディーラーである最愛の母と暮らす。だが、母がドラッグ関係のトラブルで殺害され、マーカスは祖父母の家に引き取られる。やがて母の稼業を継いだマーカスはある事件で逮捕され、獄中生活を送る。刑務所内で知り合ったバマ(テレンス・ハワード)の勧めでラッパーとして再起することを決意する。

50セント自身の半生を基に描いているだけにリアリティーを追求した骨太な出来ばえである。ギャングスターの世界も丹念に描き、バイオレンス描写は残酷かつ衝撃的なタッチである。50セントを語る上で欠かすことのできないエピソードでもある9発の銃弾を食らったシーンもしっかりと描かれている。

過激なバイオレンス描写の反面、恋愛や家庭といったエピソードも巧く取り入れており、作品に厚みを持たせる。愛息子と遊ぶシーンは、理想的な良き父親像といった感じであり、微笑ましくなる。

ラッパーとして再起を懸け、成功への道を歩みだそうとするマーカスの姿は清々しい。ドン底から華やかな世界へと昇りつめた文字通りの壮絶な半生を描いた本作は、ドラマとしても見応えのある完璧な出来ばえである。50セントが素晴らしいラッパーであり、凄すぎる人間であることを改めて実感した。

ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン スペシャル・コレクターズ・エディション DVD ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン スペシャル・コレクターズ・エディション

販売元:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
発売日:2006/10/20
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2006年7月19日 (水)

グレート・ビギン

様々な生物の謎と“人類はどのようにして地球上に誕生したのか”といった謎を追及したフランス製ネイチャー・ドキュメンタリー作品である。

衝撃的な映像が満載であり、圧倒させられる。一匹の生物を接写し、一フレーム内に収め、手足の細かい動作や表情を的確に捉えている。

胎児の微妙な動作を捉えたシーンはやはり本作における最大の見所といえる。それは、まさに神秘性に満ち溢れた奇跡である。他にも鳥の卵を食すヘビや雌雄のタツノオトシゴによる求愛ダンスといった衝撃的なシーンが印象的である。

謎のベールに包まれた人類誕生秘話や生物の本来の在り方等のテーマを緻密かつ克明に描写した最高の科学的生物学映画と思えた。

グレート・ビギン DVD グレート・ビギン

販売元:角川エンタテインメント
発売日:2006/07/28
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2006年7月17日 (月)

勝手にしやがれ

自動車泥棒のミシェル(ジャン・ポール・ベルモンド)は警官を射殺し、逃亡する。以前に知り合ったアメリカ人留学生のパトリシア(ジーン・セバーグ)との恋愛を楽しむが、パトリシアはミシェルの居場所を警官に密告する。

ジャン・リュック・ゴダール監督の長編映画デビュー作であり、“ヌーヴェル・ヴァーグ”の代名詞的な作品としても世界的に名高い作品である。

チロルハットとサングラス姿に銜え煙草のベルモンド、ニューヨーク・ヘラルド・トリビューンのロゴ入りTシャツにパンツルック姿のセバーグといった二人のファッションセンスも粋な雰囲気で抜群に良い。そんな二人がシャンゼリゼ通りの並木道を歩くシーンは絵画のような感じであり、最高のムードを漂わせる。

自由かつ独特のカメラワークやアングルで捉えた映像にジャンプカットと呼ばれる技法をふんだんに駆使したことによって、斬新な映像へと仕立てられている。手持ちカメラで捉えたパリの街並は洒落た芸術画といった感覚であり、センスの良さを実感させられる。

ラストシーンはやるせない気持ちになるが、ミシェルの遺言となる「俺は最低だ!」の一言が忘れられない。

ストーリーはあるようで無いようなものだから、斬新かつお洒落な映像を存分に愉しむだけで良いだろう。

勝手にしやがれ デジタル・ニューマスター版 DVD 勝手にしやがれ デジタル・ニューマスター版

販売元:ハピネット・ピクチャーズ
発売日:2006/05/26
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2006年6月24日 (土)

コマンドー

元陸軍特殊部隊々長ジョン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は南米のクーデター支援を拒否したため、彼に恨みを持つ元極悪独裁者アリアス(ダン・ヘダヤ)はジョンの愛娘ジェニー(アリッサ・ミラノ)を誘拐し、娘の生命と引き換えに現大統領の暗殺を要求。ジョンは娘を救出するため、単独で巨悪に立ち向かう。

見せ場であるド派手なアクションシーンが満載であり、凄いの一言に尽きる。ジョンが飛行機から脱出するシーンはスリリングに描かれ、強烈なインパクトを与える。彼が最強武装して単独で敵地に乗り込み、繰り広げる壮絶な大バトルはかなりすさまじく、銃撃戦、格闘シーン、大爆破はアクション映画ならではのスケールの大きさと醍醐味を存分に味わえる。

全体的には荒唐無稽で漫画チックに思える内容ではあるが、面白い娯楽アクション映画はこのようなモノでなければならないと思う。パワフルかつダイナミックなアクションとバイオレンス描写を愉しむだけでも十分に良いだろう。

コマンドー DVD コマンドー

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2006/01/13
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2006年5月19日 (金)

皇帝ペンギン

フランス製のネイチャードキュメンタリーに当る本作は、同ジャンルの『WATARIDORI』(01)や『ディープ・ブルー』(03)をはるかに超越し、大ヒットを記録。

強い風が吹き荒れるマイナス40度の世界、南極。コウテイペンギンの群れは列を整え、氷原を行進。それは、安全な営巣地で産卵し、生まれてくる我が子を育てるためである。産卵後のメスは、体重の五分の一を失う。だが、生まれてくる我が子のためにエサを求め、長い道のりを歩き続ける。一方、オスは時速250kmの強烈なブリザードと120日間の絶食に耐えながらも卵を守り続ける。

5年の歳月を費やし、極寒に対応した特殊カメラで捉えた8800時間に及ぶ貴重な映像を86分にまとめ上げた本作は、ペンギンの産卵から子育てを分かりやすく丹念に描く。無駄の無い完璧な仕上がりであり、編集が巧い証拠と言えるだろう。

オスとメスはお互いにパートナーを求め合い、求愛のダンスによって運命の糸に結ばれる。そのシーンはなめらかなカメラワークが官能的な芸術性を感じさせ、醸成された甘美なムードが魅力的である。

フランス人俳優3名(ロマーヌ・ボーランジェ、シャルル・ベリング、ジュール・シトリュック)が各々ペンギン親子になりきったナレーションは、新しい試みであると同時にユニークな着想である。

ペンギンたちの強い絆、親子愛、大自然の厳しさを描いた本作は、かつての様々なドキュメンタリー映画と一線を画すほどの最優秀作であることに間違いないと思う。

皇帝ペンギン プレミアム・エディション DVD 皇帝ペンギン プレミアム・エディション

販売元:ジェネオン エンタテインメント
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2006年5月14日 (日)

怪物團 (フリークス)

不具者に対する偏見等が原因で上映禁止となった異色の問題作である。

サーカス団の一員である小人のハンス(ハリー・アールズ)は、同じ小人のフリーダ(デイジー・アールズ=ハンス役のハリーの実妹)と婚約中だが、花形クレオパトラ(オルガ・バクラノバ)に一目惚れする。クレオパトラはハンスの遺産を狙って結婚し、怪力男(ヘンリー・ヴィクター)と共謀して毒殺を画策する。やがてハンスの仲間たちによる怒りの復讐が展開される。

森で戯れる登場人物たちをロングショットで捉えたシーンは、ファンタジックで神秘的な美しさを醸成する。まるで無邪気な子供たちが遊んでいるような優しいタッチは好印象である。

ラストの復讐劇はホラー映画らしい描写であり、トッド・ブランニング監督ならではの才腕が見受けられる。

人間の穢れた欲深さ、不具者に対する不平等な偏見に心を痛ませる。健常者も不具者も同じ人間であることを再認識させる作品である。

フリークス DVD フリークス

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2006年5月 6日 (土)

髪結いの亭主

少年時代、理容師を妻にしたいと思い、中年になってからその夢を実現する。そして、10年間ごく普通の夫婦生活を送る。中年男の恋愛模様を丹念に描写する。

エロティシズムを際立たせるシーンが目に付く。カメラワークやアングルがそれらのシーンを的確に捉え、官能美を追求する。オーバーな性描写を描くことなく、あくまでもソフトなタッチで描いているから丁度良い感じである。

床屋のセットもエレガントな雰囲気を見事に醸し出していて印象的である。

ラストは鳥瞰で捉えた映像に音楽が重なり、より一層ペーソスな雰囲気を漂わせる。

髪結いの亭主 DVD 髪結いの亭主

販売元:アミューズソフトエンタテインメント
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2006年4月 6日 (木)

カー★ウォッシュ

70年代に量産されたブラックスプロイテーション映画の後期的作品。このジャンルはとりわけ低予算アクションが多いが、本作はおバカな青春コメディーである。

舞台はロサンゼルスの洗車場。そこで働く若者たちは個性的であり、来店する客たちも相当なクセ者である。そんな彼らの1日を面白おかしく描写する。彼らの話術や素振りはコメディーに相応しい笑いを醸成し、笑わずにはいられない。若者たちの将来の夢や個人的な悩みといった人間らしい側面も巧く描く。

ローズ・ロイス歌唱による同名タイトルの主題歌もノリが良く、曲に合わせて踊る若者たちを見ているとこちらもご機嫌である。全体的にファンキーかつソウルフルな雰囲気が何といっても魅力的な一篇である。

カー・ウォッシュ DVD カー・ウォッシュ

販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
発売日:2006/04/19
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2006年4月 3日 (月)

禁じられた遊び

1940年。第二次大戦の真っ只中、ドイツ軍の特攻機による掃射によって両親を亡くした少女ポーレット(ブリジット・フォッせー)は、農家の少年と出会い、彼の家に引き取られる。二人は死んだ動物や虫のために十字架を立てる遊びに夢中となる。

主な舞台となる田舎村の映像は、ノスタルジックであると同時にペーソスな雰囲気を醸成する。ナルシーソ・イエペスの哀切に満ちたギターのメロディーが詩的なムードを倍増させる。

反戦映画としても有名な作品である。しかし、それらの作品によくありがちなプロパガンダ要素は一切描かれない。あくまでも子供の視点で戦争と死を描き、ソフトな仕上がりとなっている。

禁じられた遊び DVD 禁じられた遊び

販売元:アイ・ヴィー・シー
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2006年3月23日 (木)

カリガリ博士

表現主義を徹底させた映像で話題を呼び、ドイツ映画を世に広く知らしめた最重要作品である。

カリガリ博士と召使的な存在の夢遊病者チェザーレの殺人予言によって起こる連続殺人事件を描いた話。

周辺の建物や部屋のインテリアによるアート感覚が何といっても印象的。そこに、役者が見せる表情や動作が加わり、動く芸術画と捉えることができる。また、歪んだ建物等が目に付くが、それはカリガリ博士の異常な精神を映像に託している。

殺人のシーンも単に写実するのではなく、影を用いて描く。目を覚ますチェザーレをアップで捉えたシーンは、表情にメイクが手伝って不気味さを十分に感じさせる。全体的に工夫を施した作り方が良い点である。

とにかく芸術性を存分にたしなめるサスペンスホラーである。

カリガリ博士 DVD カリガリ博士

販売元:アイ・ヴィー・シー
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