2009年7月 5日 (日)

ノウイング

1959年、アメリカはマサチューセッツ州にある小学校で子供たちは創立記念日の式典で未来を予想した絵を描き、これをタイムカプセルの中に入れて校内の地面に埋め込んだ。五十年後の創立記念日にタイムカプセルが発掘され、宇宙物理学専門の大学教授ジョン(ニコラス・ケイジ)の息子ケレイブ(チャンドラー・カンタベリー)が絵画を持ち帰るが、これが絵ではなく、無数の数字が羅列された奇妙なメモだった。ジョンはこれに興味を示し、“299691101”という数字に目を留める。ネットで調べたところ、この数字は9・11世界同時多発テロの日付と2996人の犠牲者であることに気づき、記載されている他の数字を調べると、妻が死んだ原因であるホテル火災事件も浮上してきた。そして、これらの数字が過去の大惨事とこの先に起こる大惨事を予知するものだと気づくのだが・・・・・・。

アレックス・プロイヤス監督のディザスター超大作は、様々なジャンルの要素が取り入れられており、映像面でも凄まじい魅力を発揮させており、先が気になってやまないサスペンスタッチのストーリー展開で観る者をグイグイと引き込み、存分に楽しませてくれる。

見所は、やはり大掛かりな見せ場だ。まずは、飛行機の墜落シーンだ。斜めに傾いた大きな飛行機がスクリーンを突き破るかのような勢いで迫ってくる。観る者に体感させようとしている感じであり、この迫力に圧倒させられることは間違いなしだと言いたい。墜落後は大爆破!!火だるまになった乗客たちが続々と現れ、さらに驚愕させられる。その次は、地下鉄の電車事故シーンだ。電車が猛スピードで暴走し、構内の人々を飲み込むかの如く次々と引き殺してしまう。この二つの見せ場がパニックアクションとしての威力を最大限に発揮しており、大作映画らしい醍醐味を存分に味わえる。その一方で事故の恐ろしさ、悲惨さもしっかりと感じさせる。

ジョンとケレイブが50年前に数字のメモを書いたルシンダの娘ダイアナとアビーに面会し、太陽のフレアの影響による地球滅亡が直前に迫っている中でも四人で奔走する。ここで親が子に対する愛情を浮き彫りにさせた家族ドラマ的な面白さが観られる。最後には謎と謎が結びつき、さらにクライマックスに相応しい大掛かりなシーンとファンタジックな映像を魅せつけて幕を閉じる。

本作こそ夏休み映画の超大作に相応しい内容だ。

【85点】

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2009年5月13日 (水)

夏時間の庭

フランスのオルセー美術館開館二十周年記念の一環として美術館側の全面的なバックアップを得て製作された。

パリ郊外にある一軒の家は、名画家だった亡き大叔父が生前に利用していたアトリエだった。そこで一人暮らしをしているエレーヌ(エディット・スコブ)は自身の死を悟り、長男フレデリック(シャルル・ベルリング)に家と飾られている美術品コレクションを売り払って欲しいと頼むが、反対されてしまう。翌年、エレーヌは突然他界する。フレデリック、次男ジェレミー(ジェレミー・レニエ)、長女アドリエンヌ(ジュリエット・ビノシュ)は遺された家と美術品に向き合うことになる。

多くの美術品を通して家族を題材にしたこのドラマは、何と言ってもフランス映画らしい芸術作品として仕上がっており、静寂なタッチの美しい映像詩だと言える。

序盤で観られるのは、きらめく陽光に射しかかる緑いっぱいの大自然にに囲まれた家。これが鮮やかな美しさを堪能できる風景画のようであり、その後も芸術作品に相応しい映像美が追求され、その美しさが観る者を酔いしれさせる。

本作の一番の見所はと言えば、やはり数々の美術品だ。芸術・美術ファンにはたまらないものばかりであり、これらは、決して作り物の小道具ではなく、美術館や個人が所蔵しているホンモノなのである。館内にて飾られているだけであったアイテムが外に飛び出し、この作品によって生かされているようにも思えた。しかも、これらをただ紹介して魅せているのではない。ストーリーにしっかりと活かせているのである。

本作では、先述した美術品とは別に芸術・美術ファンにとってはかなり興味深いと言えるシーンがもう一つある。劇中で三兄弟が家を売り払い、美術館にコレクションを寄贈するが、その後に観られる美術館の舞台裏とも言えるシーンがこれだ。このシーンは、オルセー美術館々内にて撮影されたものである。

ドラマ部分もホームドラマらしい描き方で面白さを味わえるが、ホンモノの美術品や美しい風景の印象が強いため、ついついこれらばかりを注目したくなってしまう。

美術の素晴らしさを全面的に押し出し、「美しいものは時代が変わっても永遠に美しいものだ」というメッセージを投げかけた貴重な芸術作品だ。

【65点】

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2009年2月14日 (土)

7つの贈り物

『アイ・アム・レジェンド』、『ハンコック』とお得意のSFアクションが続いたウィル・スミス。そんな彼が再びドラマ作品に挑戦した。二年前に主演した『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督と再びタッグを組んで「贖罪」をテーマにした感動系人間ドラマだ。

ベン・トーマス(ウィル・スミス)という男は、かつての過ちが原因で心に傷を持っている。彼が見知らぬ七人の他人に人生が永遠に変わるような贈り物を渡そうと行動する。

複雑な心情を抱く主人公ベンの心理描写が巧みであり、ウィルが悩んだり、涙を流したりと巧く表現した演技も抜群だ。特にウィルのこのような姿が観られるのは実に珍しく、役者としてさらにレベルアップしていることがわかる。

“ベンの過去に何があったのか?”、“贈り物を渡す相手が何故七人の他人なのか?”、“贈り物とはいったい何か?”といったことが気掛かりとなり、このようなミステリー作品的な要素が観る者を惹きつける。同時に七人の他人のうちの一人である心臓病を患う女性エミリー(ロザリオ・ドーソン)とのラブストーリーも用意されている。

ストーリーが進むにつれて謎のヒントとも言える映像が少し映し出され、終盤に向けて徐々に解明されようとする。そして、ラストシーンでは衝撃的なシーンが待ち受けており、これが観る者をとことん驚愕させ、背筋が凍るようなゾクゾク感を味わわせる。同時に気になっていた謎の全貌が一気に明らかになる。このラストシーンで大きな面白さが味わえるが、後味が悪く思える点がマイナスだ。

【70点】

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2008年3月26日 (水)

ナチ女収容所 悪魔の生体実験

ナチスの強制収容所々長イルザ(ダイアン・ソーン)が第三帝国に対する奉仕を理由に捕虜たちに拷問に拷問を重ねた極悪非道な独自の研究を開発する。

映画史上に残る最低・悪趣味映画と称される本作は、プロデューサーのデビッド・フリードマンをはじめ多くのスタッフが偽名を使って参加した。主演は、バストが一メートルを超える爆乳女優のダイアン・ソーン。当時42歳で低迷していた彼女が鬼畜変態丸出しのサディスティックな女所長イルザをこれぞ最大のチャンスと言わんばかりに精魂を込めて熱演し、これが見事なハマリ役となった。だが、作品そのものが酷評の集中砲火を浴びせられたことと同様にキャラクターと本人を同一視されて痛い目にあってしまったのである。

本作は現実に基づいて製作されており、この事実に対しても相当驚愕させられる。もちろん、イルザのモデルとなった人物も実在したのである。その名はブッヒェンバルト収容所々長の妻イルゼ・コッホというこれがまた相当な鬼畜女だったのである。

製作に費やした期間は、なんとたったの一週間だけである。劇中のセットは、TVドラマ『0012/捕虜収容所』(別題『OK捕虜収容所』、65~71)で使用されたものをそのままレンタルしたとのことだ。

内容はまさにエログロナンセンスのオンパレードである。とにかくサディスティックで血生臭く、痛々しい場面の連続で実に正気の沙汰ではない。狂気とド変態のムードが存分に感じられるため、胸糞が悪くて気が滅入ってしまうほどだ。

エロ酷いシーンが続く中でも比較的まともなシーンと言えるのがクライマックスであり、捕虜の女連中が男連中と一致団結して収容所関係の連中と対峙する。これがアクション映画としての面白さを発揮しており、銃撃戦や爆破シーンが取り入れられていて見せ場の一つとなっている。その出来栄えはいかにもB級と呼ぶに相応しい感じではあるものの見応えはそれなりにあって良い。

散々な悪評とは裏腹に世界中ではヒットを記録した本作。その後、『アラブ女地獄 悪魔のハーレム』(76)、『シベリア女収容所 悪魔のリンチ集団』(77)という続編も製作され、同趣向の作品も多く製作された。中でもクエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスによる『グラインドハウス』(07)プロジェクトのフェイク予告編『ナチ親衛隊の人狼』は、本作の大ファンであるロブ・ゾンビがオマージュの意味を込めてパロディー満載で描いたものだ。本作が与えた影響の大きさは凄いとしか言いようがない。

SM系AVマニアの中でもとりわけへヴィー中のへヴィーに該当する超アブノーマルな方にはとりあえずオススメしたい作品であり、変態系悪趣味映画を語るには欠かせないこと間違いなしということを実感させられた。

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2008年3月10日 (月)

ノーカントリー

ベトナム戦争帰還兵でハンターのモス(ジョシュ・ブローリン)は、狩りの最中にドラッグ密売関係の殺人現場を発見し、立ち寄る。現場に停められていたピックアップ・トラックには大量のヘロインと大金200万ドルが積み込まれていた。ロスは危険を承知で200万ドルを持ち逃げする。やがてモスは殺し屋シガー(バビエル・バルデム)と保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)から追われる身となる。

ジョエルとイーサンのコーエン兄弟がコーマック・マッカーシーの原作「血と暴力の国」を映像化。コーエン兄弟にとっては、本作が初の原作を基にした作品となった。

追われる男と二人の追う男を交互に描きながらストーリーは展開する。三人の中でも一番美味しいのは、やはりバビエル・バルデム扮する殺し屋シガーだ。ホースの先端部から圧縮された空気が飛び出し、これがドアの鍵穴を破壊したり人すら殺傷することが可能というかなり恐ろしい酸素ボンベを武器に投げたコインで殺害を決めるシガーは観るからに不気味であり、冷酷さと恐怖感を観る者にしっかりと印象付ける。三人の中でも一番名が知られているトミー・リー・ジョーンズは、時代に取り残された保安官を控えめな感じで演じており、明らかにジョシュとバビエルに喰われてしまったという感じである。

音楽は殆ど使用されず静寂なタッチで描かれ、これがドラマに殺伐さすら感じさせる緊迫した雰囲気、臨場感、リアリティーを産み出している。あまりに静かなため、突然鳴り響く銃声等は、観る者を驚愕させ、これも本作が持つ面白さの一つとも言える。

本作は本年度のアカデミー賞で八部門にノミネートされ、作品賞をはじめとする四部門を獲得した。

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2008年1月 9日 (水)

熱砂の戦車軍団

第二次大戦中の北アフリカ戦線の大砂漠。イギリス軍がドイツ軍の攻撃を受けて全滅。何とか助かったイギリス軍のブラッドベリー大尉(ジョージ・ヒルトン)らは、ドイツ軍の戦車に乗っていたへインツ将校(ロベール・オッセン)を捕虜としてジープに乗せることなるが・・・・・・。

60年代のイタリア映画界はマカロニウエスタンがブームで量産されていたが、同時に戦争アクションも作られた。これがいわゆるマカロニコンバットと呼ばれるものであり、本作はその一本である。

イギリス軍の兵士が乗っているジープに敵であるドイツ軍の兵士が乗り、敵と味方がいつ裏切るかが分からないという状況下で憎悪を抱いて対立するというマカロニウエスタンの要素を取り入れていることが注目すべきポイントでもある。

登場人物の皮肉たっぷりのセリフ、生きていくためのたった一つの頼りとなる水を巡っての人間の欲望の汚さ、兵士たちの出征前の思い出、ブラッドベリー大尉とへインツ将校のほのかな友情といった人間らしさを内面から浮き彫りにしており、人間ドラマとしての面白さも併せ持っている。

特に随所に散りばめられているフラッシュバックが「戦争映画を観ている」という感覚を時折マヒさせることもあり、この点から言えば異色の戦争映画と捉えることもできる。

ラストの両軍の戦車軍団が入り乱れてのバトルが最大の見せ場となり、派手さはあまり感じ取れないもののダイナミックな仕上がりで楽しめる。

出来栄えはB級、上映時間は約90分のお手軽な娯楽戦争映画だ。

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2007年7月14日 (土)

人間解剖島 ドクター・ブッチャー

ある病院の遺体安置室で発生した猟奇的な事件を目撃した女医、ローリー(アレクサンドラー・コール)は、仲間たちと共にその謎を追って南米の孤島に辿り着く。だが、ローリーたちを待ち受けていたのは島に棲み付くゾンビと食人族による悪夢だった。

序盤から遺体の手首を切断するといったショッキングなシーンが観られ、その後も心臓を抉り出したりとグロテスク描写は徐々にヒートアップする。ヘンなゾンビや食人族、マッドサイエンティストが現れてからはグロテスク描写が最大限に発揮され、残酷さもレベルアップする。特にクロースアップで捉えた食人族が人肉を喰うシーンは、かなり強烈でエグ過ぎる。

カニバリズム、ゾンビ系スプラッター、ヒロインの裸体(三度ほど着替えるシーンやラストの不気味な変態儀式など)といったいかにもクレイジーな悪趣味要素が存分に取り込まれており、残酷さと血生臭さと品の悪さを追求しているだけとしか思えないが、B級娯楽ホラー映画としては良いと思える。上映時間は90分足らずでストーリーも至ってシンプルなため暇潰しに観る分には良いだろう。単純にスプラッターやゾンビが好きな方々なら楽しめると思うが、あまりにも最低な内容であることからごく普通の映画好きには本作の面白さを汲み取れないだろう。

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2006年11月23日 (木)

ナチョ・リブレ 覆面の神様

修道院で育ったイグナシオ(ジャック・ブラック)は、修道院で料理番を担当。だが、修道院が貧しいため、子供たちが喜ぶ食事を与えることができない。ある日、街でメキシカン・プロレス“ルチャ・リブレ”の新人レスラー募集の張り紙を見たイグナシオは、金稼ぎと子供たちの美味しい食事を目的にレスラーを目指す。だが、修道院では、プロレスは罪深いスポーツとされている。そこで、ある事がきっかけで知り合った盗人の“ヤセ男”ことスティーブン(エクトル・ヒメネス)をタッグ・パートナーとして誘い、二人は極秘で独自の特訓を始める。イグナシオは、ナチョ・リブレという覆面レスラーとして数々の試合に出場する。

本作は、あの有名な『タイガーマスク』のモデルであるメキシコの人気レスラー、フライ・トルメンタ(日本でのリング・ネームは“暴風神父”)の実話をベースにしたコメディー作品である。

ジャック・ブラックが駄目レスラーに扮し、コメディアンとしての持ち前の面白さと明るさを活かして好演している。彼は、おかしなギャグだけでなく、歌い、体を張ってファイト・シーンに挑戦するなど多彩ぶりを発揮している点が非常に素晴らしい。

見所は、やはりファイト・シーンである。試合の数々は、面白おかしい内容ばかりであり、日本の「大阪プロレス」やTVバラエティー番組『オレたちひょうきん族』(81~89)の「ひょうきんプロレス」に通じるものがある。ラストのナチョと最強レスラーとの激闘は、プロレス及び格闘技ならではの名勝負の雰囲気をしっかりと描写できているのが良い。優しさと適度なおかしさを包み込んだ感動を味わうことができ、実に気持ちいい余韻を残す。

もし、続編が製作されるなら、ジャック・ブラックとレスラー出身のアクション・スター、ザ・ロックとの勝負を描いていただきたい。ザ・ロックもコメディーセンスがあるので、面白おかしい試合が見れそうな気がする。

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2006年6月 5日 (月)

ネバー・ダイ・アローン

1974年に殺害された元ギャングのストリート系作家ドナルド・ゴインズの遺作となった自伝的ハードボイルド小説を映画化した作品である。

麻薬密売人キング(DMX)は、贖罪と復活を求めてストリートに帰ってきた。だが、若者によって殺された。現場に居合わせたジャーナリストのポール(デヴィッド・アークエット)に病院へ担ぎ込まれる際にカセットテープを手渡していた。その内容はキングの人生を自身の言葉で語ったものであった。

スタイリッシュな映像は魅力的で格好良さを感じさせる。銃撃戦、ハードなバイオレンス描写は迫力を増大し、圧倒させられるほどの強烈なタッチで描かれる。

DMXが演じるキングのキャラクターは、交際中の女性を薬漬けにしたり、酷すぎる暴力を振るう等とにかく最低で酷すぎるといった印象が強すぎる。この役柄はトラブルメーカーとして悪名高いDMXには十分相応しく、悪の匂いを存分に感じさせ、かなりハマっている。

ストーリー展開のテンポも良く、ラストシーンは衝撃的の一言に尽きる。

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