2009年11月25日 (水)

ビッグ・バグズ・パニック

巨大化した生物を扱ったモンスター・パニック作品は、70年代に量産された。中でも虫の巨大化及び異常化をネタにしたモノも多く存在した。

そんな昔ながらの巨大虫ネタのB級モンスター・パニック作品が『スパイダーパニック!』(02)以来七年ぶりに劇場公開されることとなった。

怠け者の青年クーパー(クリス・マークエット)は元軍人の父イーサン(レイ・ワイズ)に紹介してもらってやっと就職するが、毎度のように遅刻したりと怠け癖を発揮させて上司のモーリーンから解雇通告されてしまう。その時、急に耳をつんざくような高音が鳴り響き、クーパーは気絶してしまう。その後、目覚めたクーパーは、繭のようなもので全身を覆われていた。そして、突然巨大な虫に襲撃されてしまう。クーパーと巨大虫軍団との戦いの始まりであった。

街や部屋を這いずり回ったり、羽根を広げて空を飛び回る不気味な巨大虫。見所は当然の如くこれらの虫による人間襲撃とクーパーと仲間たちによる退治ぶりだ。また、マヌケ顔の冴えないクーパーがこれをきっかけにヒーローとなって人間的にも成長していくのかどうなのか?にも興味を抱いて注目したい。

本作では単なる巨大虫だけでなく、虫に刺された者が顔は少しゾンビ風で胴体は虫という虫人間やペットの犬の虫犬が登場し、観る者に強烈な印象を与える。かつてのこの手の作品ではチープな巨大虫が目立ったが、現代ではCG等が発達していることもあって完成度は高く、違和感も感じられないので大いに良い。

クーパーとともに虫退治に挑む仲間も個性的かつ魅力的だ。クーパーが恋心を抱いてしまう自身の上司の娘サラ(ブルック・ネヴィン)、金髪美女のお天気姉さんシンディ、知的障害の上に耳が不自由なマッチョ青年ヒューゴとその父アル。中でもシンディがクーパーの前で突然裸体を披露するシーンが観られるが、この水増し的なセクシー・サービスはB級ムード満点の作品にはマッチしていると言える。

終盤あたりからは巨大虫の大きな巣窟に進入し、戦いを挑む。近年の『ディセント』(05)や『地獄の変異』(05)のような洞窟内パニック・ホラーのテイストも取り入れてしまったのである。そして、クライマックスでは大掛かりな爆破シーンも用意されている。とにかく後半シーンも要注目だ。

面白い作品にするための努力がなされており、これだけでも高く評価できる。とにかく気楽なB級娯楽映画として楽しめる作品だ。B級映画ファンのためにもこの手の作品をもっと公開して欲しいものだ。

【65点】

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2009年11月 9日 (月)

PUSH 光と闇の能力者

念動力<ムーバー>の第二世代であるニック(クリス・エヴァンス)のもとに13歳の少女キャシー(ダコタ・ファニング)が現れる。彼女は予知能力<ウォッチャー>を備えており、600万ドルが入っている謎のケースを持つ女を探して欲しいとニックを訪ねて来たのである。女は謎の政府機関“ディビジョン”から脱走してきたキラ(カミーラ・ベル)であり、他人の思考を乗っ取る力を備えた者<プッシャー>であった。キャシーの依頼以後、ニックはディヴィジョンが送り込んだ超能力者たちから命を狙われ、キャシーとともに挑むことを決めるが・・・・・・。

善と悪の超能力対決を描いた本作。この視点から考慮するとSFアクションに強い期待を抱いてしまうが、どちらかと言えばクライム・サスペンスドラマに比重が置かれている。見方と敵の駆け引きをはじめとするドラマ描写等は良しとするが、途中で分かりづらくなってしまうのが痛手だ。だから、もっとSFアクションの見せ場を用意した方がさらに面白く仕上がっていただろう。

舞台は香港で街並みの活写はスタイリッシュで見応えは抜群。この点に関して言えば、ポール・マクギガン監督が『ラッキーナンバー7』(06)で魅せた映像センスに更に磨きをかけ、パワーアップしたことがわかった。

また、子役のイメージが根付いているダコタ・ファニングの脱子役感を味わえることもかなり興味深いポイントだ。中でも酒を飲んで酔っているサマには、唖然とさせられてしまうだろう。

本作において何よりも面白いのは、やはりクライマックスのアクションだ。VFXを駆使した超能力攻撃は、漫画やゲームのようなケレン味が感じられ、これにガンアクションと格闘アクションもミックスされてなかなか見応えのあるシーンに仕上がっている。建築真っ只中(足場が竹で組み込まれている)の建物をバックにしており、これが『ラッシュアワー2』(01)を少し彷彿させる。

香港、ダコタ、SFアクションに注目の一作。

【60点】

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2009年11月 4日 (水)

ファイナル・デス・ゲーム

スペインで友人たちとサーフィンを楽しんでいるアメリカ人大学生ジェイソン(マイク・ヴォーゲル)がある日、不気味な骨董品店で“マンバ”というこれまた見た目が不気味なボードゲームを入手する。このボードゲームは15世紀に魔女の皮と血と涙で作られたものであり、内容は勝てばどんな願い事でも一つだけ叶うが、負ければカードに示された内容通りに死を遂げてしまうという恐ろし過ぎるもの。その内容を知らないジェイソンは、仲間たちとともにこのゲームをプレイするが・・・・・・。

『ジュマンジ』とその続編『ザスーラ』のホラー版とも言える本作。邦題からは『ファイナル・デスティネーション』シリーズのような感じではあるが、少し似通った部分はある。『ファイナル~』シリーズは、主人公が見た予知夢通りの順に人々が怪死を遂げていくが、こちらは先述したようにゲームで負けた者が死を遂げていくというもの。恐らく『ファイナル~』シリーズの影響を少しは受けているのだと思う。

見所はゲームの敗者の死に様だ。『ファイナル~』シリーズと比較するとかなり大人しい感じではあるものの、グロさを魅せつけたりという具合に観る者の印象に残るような描写となっているため、ホラー作品として普通に楽しめる。カニ軍団、“ブラックマンバ”という名のヘビ軍団、突然老婆化に大注目だ。

もう一つの注目ポイントは、マンバの犠牲者を追うイサル刑事だ。後半で彼の本性が明かされる。“彼に何があったのか?”が観る者を驚かせる。

上映時間は88分。とにかく気楽なB級サスペンス・ホラーとして楽しめるのが何よりも良い。

【70点】

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2009年10月16日 (金)

ファイナル・デッドサーキット3D

死の運命に翻弄された挙句にショッキングな死を遂げてしまう若者たちの姿を描いた人気ホラーのシリーズ第四弾。しかも、今回は現在流行中のデジタル3Dバージョン。監督は、第二弾『デッドコースター』を手懸けたデヴィッド・R・エリスが登板。

ニック(ボビー・カンポ)とローリ(シャンテル・ヴァンサンテ)の大学生カップルは友人のジャネット(ヘイリー・ウェブ)とハント(ニック・ザーノ)のカップルとサーキット場でのカーレース見物ダブルデートを楽しんでいた。レースが最高潮に達したとき、ニックはレースカーがクラッシュして大炎上し、サーキット場が大惨事になるという予知夢を見る。その予知夢は現実化し、ニックら九名の人々はなんとか逃れられたものの、その後は予知夢で見た順番通りに次々と生存者がショッキングな怪死を遂げていく・・・・・・。

このシリーズと言えば、悪趣味系作品の趣向が盛り込まれているが、今回はこれを一段と強化してシリーズ中最高のグロさを露呈してしまった。それは、死ぬ際に臓器や肉片がはっきりと観られることだ。悪趣味らしさが高まったどころかB級レベルもアップしてしまったのである。そこは、エリス監督がかつて手懸けた作品の中に飛行機内でヘビが大量発生するB級モンスター・パニック作品『スネーク・フライト』があったことを思うとこのB級らしさには納得できるし、この作品で発揮させたB級感覚を本作で活かせたのだと捉えることができる。エリス監督はスプラッター好きの期待に応えられるようなネタを用意して観る者に強烈な印象を与えることに成功したのである。

生存者たちが死ぬまでの描写はワンパターンだと思えるが、そこは細かいことを言わずに「またやってるな!」、「これがシリーズの持ち味」と思って観た方が良いと思う。本作も前三作に匹敵するような悲惨な死に様が描かれており、ハードな衝撃と後味の悪さ、スプラッター的な面白さを存分に味わえる。また、序盤で観られるサーキット場の事故やクライマックスで観られる映画館爆破も迫力満点で面白く、醍醐味が感じられる。

シリーズ初の3D作品ということであるが、3Dにしたことに間違いはなかったと言える。本シリーズはスクリーンを突き破るような勢いで壊れた物体等が飛んできて大写しになり、それを観てついつい身構えそうになったりといったスリルが味わえる。3Dにしたことによってこのスリル、迫力、恐ろしさをより一層味わえるようになったのである。

本作は死を描き続ける一方で「生きることの喜びと素晴らしさ」をこっそりと教えているのである。

三年おきに作られているこのシリーズ。三年後に第五弾が作られるとしたら、次はどんなモノを魅せてくれるのだろうか?!

【80点】

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2009年8月18日 (火)

ブラック・ウォーター

二週間の休暇を利用してオーストラリア北部へ赴いたリー(メーヴ・ダーモディ)と姉グレース(ダイアナ・グレン)とその彼氏アダム(アンディー・ロドレーダ)の三人は、川釣りツアーに参加し、ガイドのジムを加えた四人はボートに乗って良い釣り場を求めて上流へ上がっていく。ボートがマングローブの沼地に入ったとき、何かが直撃してボートは転覆し、四人は川の中に突っ込んでしまう。グレースとアダムは水の中からマングローブの木へと這い上がるが、リーとジムの姿が不明状態になる。そこで二人が目の当たりにしたのは、大きなワニであるクロコダイルであった。リーは何とかひっくり返ったボートに上がり、グレースとアダムがいるマングローブの木へ辿り着くのだが・・・・・・。

数多く存在するワニをネタにしたB級モンスターパニック作品の中では異色の作品であり、B級色は強いが、簡単に侮ることができないような作風へと仕上がっている。それは、低予算を逆手に取ったリアリティーを追求した作り方で魅せるべき部分をしっかりと魅せつけてサスペンス、モンスターパニックとしての面白さを発揮しているからである。

実話を基にしたストーリーをアンドリュー・トラウキとデイヴィッド・ネルリッヒの両監督がよりリアルな作風へと仕上げるためにメイン舞台となる沼地に拘ったり、CG等で再現されたものではないホンモノのワニを使ったりといった工夫を施した。とにかくこの努力は大いに讃えたいものだ。特にこのホンモノのワニが三人を襲うシーンが最大の見所であり、スリル満点で驚愕させられ、モンスターパニック作品としての面白さを満喫できる。また、「三人は無事で生きて還られるのか?」、「この先どうなるのか?」というようなことが気になり、これが本作が持っているサスペンスとしての面白さだと言える。どちらかと言えばサスペンス重視であるため、ワニが大暴れしたりといったモンスターパニックの要素には期待しない方が良いと言い切れる。

【70点】

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2009年7月30日 (木)

ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式

ハウエルズ家のお葬式で繰り広げられるドタバタ騒動を『スターウォーズ』シリーズの人気キャラヨーダの声でお馴染みのフランク・オズがブラックユーモアいっぱいに描き、さらにハートフルな温かさを取り入れた傑作コメディー。

冒頭にてハウエルズ家の父の遺体が他人と間違われて送られてくる。この時点で軽く笑わせてくれる。

その後、主人公であるハウエルズ家の長男ダニエル(マシュー・マクファディン)の従妹マーサ(デイジー・ドノヴァン)と弁護士をしている真面目な婚約者サイモン(アラン・テュディック)がマーサの弟トロイ(クリス・マーシャル)を迎えに行く。トロイは薬学部の学生であるが、実はドラッグ製造に励んでいる悪いヤツでこの日も友人に売るためのドラッグを準備していた。マーサは緊張しているサイモンにドラッグを安定剤と間違えて飲ませてしまったのである。これがハウエルズ家のお葬式をハチャメチャにしてしまう原因となってしまう。個人的には、このドラッグの存在は、本作を面白くさせるための活性剤だと言いたい。とにかくラリってしまったサイモンが面白さを存分に盛り上げてくれる。しかも思う存分に笑わせてくれるのである。サイモンの活躍ぶりは注目すべき最大のポイントであり、これだけでも見る価値は大きい。

続いて笑わせてくれるのは、ダニエルの友人である汗かきの心配性ハワード(アンディ・ナイマン)と強気で常に不機嫌な車椅子に乗ったアルフィー叔父貴(ピーター・ヴォーン)だ。この二人による汚くて下品なやりとりがおバカコメディーとしての面白さを一段と弾き出す。強烈なインパクトを与えてくれること間違いなしだ。

他にもダニエルと弟で人気作家のロバート(ルパート・グレイヴス)による兄弟口論や謎の参列者である小人男ピーター(ピーター・ディンクレイジ)を巡ってダニエル、ロバート、ハワード、トロイが繰り広げるドタバタも印象深い。

本作は、笑いを満喫させるべくストーリーを簡素化させたことと登場人物を個性豊かなキャラクターとして設定した上に複雑さを感じさせないようにしたことが功を奏でたのである。

それにしても本作で描かれるお葬式は“ちょっとおかしな”どころではない。“かなりおかしすぎる”と言った方が妥当だ!!

【80点】

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2009年7月24日 (金)

ポー川のひかり

『木靴の樹』(78)で知られるエルマンノ・オルミ監督が劇映画最後の作品としてメガホンをとった作品。

イタリアのボローニャ大学。夏期休暇中で人気がない校内の歴史図書館にて大量の古文書が太い釘で打ち抜かれているのを守衛が発見する。容疑者として浮かび上がったのは、将来を嘱望された若き哲学科の主任教授(ラズ・デガン)だった。教授は前日の学年末の授業を最後に突然姿を消して車でポー川に辿り着き、川岸にある朽ちかけた小屋を発見してそこに住み着いた。やがて、教授はその風貌から村人たちに“キリストさん”と呼ばれ、交流を深めていくのであったが・・・・・・。

序盤での“古文書大量虐殺”をサスペンスタッチで描いてこの奇妙な事件を観る者に興味を抱かせ、作品の世界へと引き込ませる。その後は、メイン舞台となるポー川周辺の風景描写を鮮やかな美しさで魅せつけたり教授と村人たちとのダンスパーティーや語らいといった交流が好印象を与える。

本作はイエス・キリストの寓意を潜めた宗教色のある作品であるが、小難しいことを考えさせたりプロパガンダ要素を強く押し出してムキになったりしていないことが観易くて良い。サスペンス、芸術性、教授と村人たちの交流を堪能するだけでも十分だと言いたい。

【70点】

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2009年6月 4日 (木)

バッド・バイオロジー 狂った性器ども

『バスケットケース』三部作、『フランケンフッカー』のカルト的監督フランク・へネンロッターによる十六年ぶりの新作は、狂気の性愛を持ち前の悪趣味丸出しで描いたおバカ作品。

生まれつき七つ以上の陰核を持つ女性写真家ジェニファー(チャーリー・ダニエルソン)は、性欲がとてつもなく激しく、男は肉体関係を築いている最中に殺害してしまう。さらに、受精後数時間以内に奇形児を産み落としてしまうというトンデモナイ女。一方、バッツ(チャーリー・ダニエルソン)という男は過去の事故で性器を負傷し、ステロイド等の薬剤を大量に投与したことが原因で巨根となってしまう。その巨根は自分の意思を持っており、自由自在に暴れうごめくことができる。そんな狂った性器を持つ男女が運命的(?!)に出会ってしまう。

二人の主人公が普通の人とは違うという悩みやコンプレックスを浮き彫りにさせているのがミソである。これが、ただ悪趣味描写を乱打しているだけの中身の無い作品として成り下がることを防げたのである。本作の最も評価すべきポイントの一つと言っても良いだろう。

劇中では、女性たちの美乳やモザイク等のボカシが施されていない陰部が観られたりといったエロいサービスがテンコ盛り。だが、登場する女性たちは美しさやナイスボディーといった魅力に欠けている者が多いため、金髪巨乳美女の登場を期待している方にとっては残念に思えるだろう。どうせやるなら、もっと色気のある良い女性を大挙出演させた方が良かっただろう。

特筆すべき見所は、バッツのグロい巨根が下半身から外れて一人歩きし、家の壁をとてつもない破壊力でブチ壊して侵入して女たちを襲うシーンは、モンスターパニック作品らしい面白さが味わえ、主観キャメラが効果を発揮している。

へネンロッター監督復活作品は、とにかくおバカで下品極まりない究極の俗悪作品であり、これを持って健在ぶりをしっかりとアピールすることに成功したのである。

【55点】

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2009年5月 8日 (金)

バンコック・デンジャラス

パン兄弟(オキサイドとダニー)が撮り上げたタイ映画『レイン』(00)を設定に変更を加えてハリウッドでセルフリメイクしたハードボイルド系サスペンス・アクション。

自身が決め込んだルールを忠実に守り、完璧に任務を遂行させてきた冷酷無比なスゴ腕暗殺者ジョー(ニコラス・ケイジ)。彼は稼業に真の引き際を悟り、最後の任務として四つの暗殺依頼を引き受け、タイはバンコックへと赴く。現地でスカウトした助手コン(シャクリット・ヤムナーム)とともに三つの暗殺を何とか成功させてきたジョーが、最後の四つ目の任務でピンチへと追い込まれてしまう。

パン兄弟はハリウッドのカラーに染まることなく、持ち前のカラーを存分に発揮させて本作を完成させた。タイでのオールロケで街の魅力や文化をしっかりと取り入れ、ハリウッドを利用してこの国の素晴らしさをしっかりとアピールしている感じがしてやまない。特に夜の街並みの活写はインパクトが大きくて印象的だ。猥雑な街という設定を活かせて不健全な雰囲気を漂わせながらも魅力的に描ききっている。他にも照明を巧妙に利用してのスタイリッシュな映像美が殆どのシーンを彩っていたりというようにパン兄弟のハイクオリティな映像センスが伺える。

ジョーがコンを従来通りの利用するだけ利用して殺してしまうようなインスタント助手としてではなく、正式な弟子として鍛え込み、二人で訓練をするシーンや聾唖の女性薬局店員フォン(チャーリー・ヤン)との淡い恋愛感覚のような交流を描いたシーンがドラマ描写における見所として印象深い描き方となっており、注目度が大きい。特にフォンとの関わりからは、足を洗おうとしているジョーが笑ったり彼女に優しく接することによって冷徹な男が人間らしさを取り戻しているような感じで好感を抱いてしまう。ジョーを単に血も涙もない暗殺者として描かず、人間的魅力を描いている点は大きく認めたい。ジョーがピンチに立たされてからは苦悩させられたりするなど、悲哀感を漂わせて描かれていく。これが、スゴ腕暗殺者として生きてきた男が引退目前に曝け出してしまう人間としての、暗殺者としての弱さやマイナスポイントを浮き彫りにしている。

中盤以降は、アクション映画としての見せ場もしっかりと用意されており、ここでハリウッドの力が発揮される。まずは水上マーケットでのボートチェイスが観られる。ボートチェイスも今となっては珍しいモノではないが、従来のモーターボートではなくて勢い良く疾走するイメージとは程遠い木造ボートを利用しているのがミソであり、これを勢い良く走らせてスリリングに描き、スピード感を味わわせてくれるのだから目新しく思えると同時に面白さも味わえるが、満足できるほどの面白さとまではいかない。そして、クライマックスでは銃撃戦が繰り広げられ、照明を巧みに利用してヴィジュアル重視の一味違ったアクションシーンとして仕上がった。このような趣向を凝らす等の努力は認められるもののこれによって迫力や面白さが薄れてしまっているので残念だ。だが、アクションにしてもサスペンスにしても緊張感を維持させて丁寧に描いているのでそのポイントはかなり高い。

そして、衝撃的なラストシーン。ジョーは任務を遂行して無事に引退できるのか?それとも、任務をミスして滅びてしまうのか?

本作は、まさにハリウッド製タイ映画だ。

【70点】

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2009年5月 4日 (月)

バビロンA.D.

新世代アクションスターのヴィン・ディーゼルが久々に日本のスクリーンにやってきた。ジャンルはもちろんアクションで近未来を舞台にしたSFアドベンチャーだ。

戦争やテロで荒廃した近未来の地球。かつて、金と引き換えに様々な危険な仕事をやってのけてきた一匹狼の傭兵トーロップ(ヴィン・ディーゼル)が最後の仕事として国際的マフィアのボスであるゴルスキー(ジェラール・ド・パルデュー)からの依頼である謎の少女オーロラ(メラニー・ディエリー)を六日間でニューヨークまで運ぶという任務を引き受けるが・・・・・・。

トーロップとオーロラとその保護者であるシスターのレベッカ(ミシェル・ヨー)の三人がモンゴルを波きりにカザフスタン、ロシア、ベーリング海峡、アラスカ、ニューヨークと旅を続ける中でオーロラの様々な秘密が除々に明かされていく。そして、行く先々で様々な危険が三人を襲い掛かる。ここでヴィンのアクションが観られ、楽しませてくれる。

ヴィンが人気K-1ファイターのジェロム・レ・バンナ扮するストリートファイターと肉弾戦を繰り広げ、スノーモービルで雪原を疾走させながら空から攻撃を仕掛けてくる二機の無人戦闘機との大攻防戦を展開し、カーチェイスをやってのけたりというアクションはありがちではあるものの面白くて印象深い。ヴィンにとっては『リディック』(04)から四年ぶりのアクション作品であるが、ブランクによるパワーダウンや見劣り等は一切なく、実にカッコよくて勢いのある最強アクションをしっかりとキープできていたことが何よりも良いのだ。ミシェル・ヨー、ジェロム・レ・バンナが魅せる格闘アクションも注目すべきポイントだ。

主人公トーロップは、今までに散々人々を殺してきた究極の悪党、アウトローであるが、自身が決め込んだ強固なルールには忠実に従って行動する。不良性感度を醸し出すチョイ悪なイメージのヴィンにとってはピッタリなキャラであり、その好演ぶりも注目度が高い。でも、オーロラやレベッカに対して時折魅せる優しさや温かさがさらにイイ男としての魅力を発揮させ、アウトローヒーローとして観る者に好意を抱かせる。

監督は、役者としても活躍するフランスのマチュー・カソビッツ。彼の見せ場作りは結構優秀であり、無駄を少なくして手際良く90分にまとめ上げたという腕前はまさに素晴らしい。

ヴィン・ディーゼルはアクション復活作品でその健在ぶりをしっかりとアピールできたのである。本当にそれだけでも十分良いのだ。

【75点】

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