2009年10月23日 (金)

REC/レック2

スペイン製パニック・ホラー『REC/レック』(07)は世界各国でヒットし、アメリカでは『REC:レック/ザ・クアランティン』(08、日本未公開)としてリメイクされた。そして、待望の第二弾が作られた。監督は、前作同様にジャウマ・バラゲロとパコ・プラサとの共同。

人間を凶暴化させる謎のウイルスの感染で多くの犠牲者を出し、パニック状態と化した古アパート。これ以上の惨劇を防ぐべく完全封鎖されたアパートにSWAT隊員四名とオーウェン博士(ジョナサン・メイヨール)がヘルメットにCCDカメラを装着し、内部調査を行うべく感染の元であると思われる最上階へと向かう。しかし、SWAT隊員の一人が生存している感染者に噛まれたことから更なるパニックがヒートアップしていく。

今回もPOV映像(主観映像)がパニック描写をドキュメンタリータッチでリアルに捉えるが、SWAT隊員のCCDカメラによるサブ視点が取り入れられたことによって演出面がパワーアップし、面白さが磨き上げられた。目まぐるしく思える映像が観る者を驚愕させ、楽しませ、そして良い意味で疲れさせてくれる。

ゾンビ風の感染者による襲撃とグロさは、前作以上に面白さがアップしており、今回もパニック描写が観る者をハラハラドキドキさせてくれる。今回は男二人と女一人のティーンエイジャー三人組が興味本位で地獄と化したアパートに侵入するが、この三人組の存在が面白さを一段と引き立てている。また、ゾンビ系ホラーの面白さをキープしつつもオカルト系ホラーの要素を取り入れたりといった目先を変えた趣向の凝らし方も良い。

中盤を過ぎたあたりから、前作で消防士のTVドキュメンタリーのレポーターを担当していたヒロインのアンヘラ(マニュエラ・ヴェラスコ)がしっかりと登場してくれる。これによってストーリー展開が更に面白くなってくる。それにしても彼女のキレっぷりがこれまた凄まじく、こちらも前作よりも遥かに上を行っているのでしっかりと注目して頂きたいポイントだと言える。

ストーリーは前作のラストシーンから始まる。序盤では前作とは違った新たな物語として描かれるが、中盤以降で前作としっかり結びつくという構成も見事だ。ラストシーンであっと驚くような恐怖が描かれる。このシリーズは三部作らしい。早くも第三弾に大きな期待を抱いてしまう。

【75点】

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2009年7月 4日 (土)

レスラー

80年代に大活躍したプロレスラーのランディ“ザ・ラム”ロビンソン(ミッキー・ローク)は、今となってはスーパーの惣菜コーナーのバイトで食い繋ぎながらも週末の小規模インディー団体の興行で試合をしている落ち目の中年レスラー。ある日、試合後に心臓発作で倒れたランディは、入院先の病院の医師から「現役続行は危険」と宣告される。娘に嫌われ、愛するストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)にも振られてしまったランディは、再びリングに上がって闘うことを決意する。

80年代のセクシー系イケメン俳優ミッキー・ロークが本作で完全復活を成し遂げた。もともとはニコラス・ケイジ主演の予定であったが、ダーレン・アロノフスキー監督がミッキー主演案を押しまくって登板を実現させた。そのために製作費は削減され、小規模公開となったものの54の映画賞を受賞し、アカデミー主演男優賞にもノミネートされたりとミッキーの演技も高く評価され、大成功を収める結果となった。

プロレス映画である本作は、随所に試合場面を散りばめて娯楽性だけを全面に押し出した単純作ではない。プロレスの試合を描きつつもランディという一人の落ちぶれたレスラーにスポットを当てた人間ドラマが売り物なのである。

プロレス好きならとにかく試合シーンを楽しみたいに違いないだろう。本作で描かれる試合はキャメラが接近していることもあってTV中継以上の迫力が感じられ、面白く仕上がっている。中でもインディー団体ならではのハードコアデスマッチ戦はバイオレンス色が強く感じられ、痛々しさが存分に伝わってくるほど衝撃的な描写となっている。また、本物のレスラーも大挙出演しており、これまたプロレスファンを楽しませてくれる。

特筆すべきポイントは、アメリカンプロレス好きならニヤリとしてしまうシーンだ。ロッカールームにてレスラーたちが試合の打ち合わせをしており、これに関してはWWEファンやここのドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・マット』を観た方にとっては理解済みだと思うが、アメプロは予め用意されている筋書きによって試合が展開され、勝敗も決まっている。スポーツとしてのガチンコ勝負ではなく、ショー的要素を押し出したエンターテイメントスポーツとして理解されているため、“ヤラセ”や“八百長”と罵倒されることなく気楽に楽しまれている。そんな舞台裏をコミカルさを交えて描いている点は、実に面白い。

もう一つの面白いポイントといえば、ランディのキャラクターぶりがミッキーとダブってしまうことだ。80年代は恵まれたが90年代以降は落ち目、月収約六万円、家賃を滞納しながらのトレーラーハウス暮らし、惣菜店バイトという共通点があるのだ。ランディの「80年代最高、90年代最悪」というセリフは、とにかくインパクト大だ。

マリサ・トメイのストリッパーも注目度が高く、美熟女エロスを存分に堪能できる。だが、これが四十代という年齢を感じさせず、若々しく見えるのだから凄いとしか言いようがない。

本作は、久々の男泣き映画だ。とにかくミッキー・ロークの今後の活躍を期待したい。

【85点】

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2009年5月27日 (水)

ラスト・ブラッド

2000年に公開された和製フルデジタル・アニメ映画『BLOOD THE LAST VAMPIRE』をジェット・リー主演の大ヒット作『キス・オブ・ザ・ドラゴン』(01)を撮ったフランス人監督クリス・ナオンが実写化した復讐系アクション・ホラー。

1970年の日本。セーラー服姿で黒いおさげ髪、黒筒に刀を忍ばせている十六歳のサヤ(チョン・ジヒョン)は父をオニというヴァンパイア種族に殺され、その復讐としてオニの起源であるオニゲン(小雪)を倒すべくオニ撲滅組織カウンシルの協力を得て日々オニと戦っている。カウンシルのリーダーであるマイケル(リーアム・カニンガム)はサヤを基地内の高校に入学させるが・・・・・・。

見所はサヤ役のチョン・ジヒョンが魅せつける数々のアクションだ。ジヒョンにとってアクションは本作が初体験となるが、これが初めてとは思えないほど完璧にこなせており、見劣りすることや違和感を感じさせない。これには、アクション監督コーリー・ユンの大きなバックアップがあったからこそだと断言できる。

序盤からサヤのパワフルな活躍がしっかりと描かれ、観る者を驚愕させる。高校に潜入したサヤが同じクラスになる女子高生アリス(アリソン・ミラー)を女子生徒に化けたオニに襲われたところを救出するシーンで凄まじい刀裁きを披露する。次は、本作の大きな売り物であるオニ軍団百人斬りでここでアクション映画の醍醐味が最大限に発揮される。サヤがバタバタとオニたちを斬りつけ、アクロバティックな動作まで披露して迫力満点の痛快なアクションシーンとして盛り上がる。目まぐるしいカメラワークやスローモーションを巧妙に交えたりと魅せ方に工夫が施されていることによって面白さが一段と増し、見応えのあるアクション描写へと仕上がった。しかもスピーディーでテンポもすこぶる良いため、一気に楽しめる。

オニ百人斬り後もサヤのアクションをはじめ、サヤの父の家臣で実質的なサヤの育ての親であるカトウ(倉田保昭)のハードなアクションが観られたりという具合にとことん楽しませてくれる。

クライマックスはサヤとオニゲンの最終決戦。これが意外とあっさりとした感じで少々物足りない。お互いが激しくぶつかり合うような壮絶なバトルが描けていれば最高の出来栄えだっただろう。それでも全体を通してかなり面白い作品として仕上がっているため、合格点は遥かに達していると言える。

アクション映画ファンには嬉しいダイナミックな爆破シーンやオニのクリーチャー化、CG丸わかりの流血、外国映画ならではの日本の風景描写といったビジュアル面でも強烈なインパクトを与えてくれる。中でもケレン味を存分に発揮させたセットや照明は漫画チックであり、復讐をテーマにしたB級娯楽アクション映画の王道を踏襲した作品内容と絶妙にマッチしている。

【75点】

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2009年5月23日 (土)

路上のソリスト

「LAタイムズ」記者スティーヴ・ロペスが同紙に連載している実話に基づいたコラム「弦二本で世界を奏でるヴァイオリニスト」をジョー・ライト監督が映像化。

妻と離婚後、仕事も不調なロペス(ロバート・ダウニー・jr.)は記事にするネタを探していた。ある日、ベートーベンの銅像がある公園で弦が二本しかないヴァイオリンで美しい音色を奏でるナサニエル・エアーズ(ジェイミー・フォックス)というホームレスに出会う。彼に興味を抱いたロペスは早速調べ出し、その結果、才能のあるチェロ奏者で名門ジュリアード音楽院に二年間通っていたことを知る。ナサニエルは在学中に統合失調症を患ったことで将来の道を閉ざされてしまったのである。それ以来、ロスの路上で暮らしながら敬愛するベートーベンの楽曲を奏でる路上のソリストとなったのである。ロペスはそんなナサニエルと深く関わっているうちに「才能ある音楽家として成功して欲しい」と思って治療を計画するのだが・・・・・・。

二人の男の交流を優しく、時には厳しさを併せて描いた人間ドラマ。ナサニエルは音楽に関しては非常に素晴らしい才能があり、彼の少年時代や学生時代を描いて克明かつ緻密に浮き彫りにさせている。また、学生時代に発症した統合失調症による苦しみとその症状も描き出し、観る者にその苦痛を味わわせる。

本作は感動的な人間ドラマである一方、社会派の一面を併せ持っている。それは、貧困や病に苦しむ弱者とドラッグを扱い、略奪を繰り返す悪者が一体となったロスのスラム街の模様をリアルに映し出している点だ。ナサニエルはロペスのススメでこの地にあるランプ・コミュニティという支援センターに入る。ナサニエルの演奏が社会的弱者である彼らの心を癒す。劇中で観られる彼らの姿は、純粋で優しさと温かさが感じられる。彼らに対して一般的に抱きがちな負のイメージを強調することなく描いているのが良い。ライト監督は美化したり悪い面を追求することなく、自然体でこの現実を観る者に伝えたのである。

LAフィルハーモニック側からの招待でロペスとナサニエルがウォルト・ディズニー・コンサートホールでベートーベンの交響曲第三番「英雄」の演奏を鑑賞するシーンが観られ、ベートーベンの楽曲が多数使用されていたりといったクラシック音楽ファンにとっては嬉しく思える要素がたっぷり取り入れられている。

【80点】

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2009年4月16日 (木)

レイチェルの結婚

バックマン家の次女キム(アン・ハサウェイ)が姉レイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式に出席するため麻薬依存症の施設から退院し、久々に実家に戻ってくるが、結婚式準備の良いムードをブチ壊すような存在となってしまう。そんな彼女は、かつて一家内に見舞われた悲しい過去を改めて抉り出して家族に向き合わさせようとしていた。

オスカー監督のジョナサン・デミがデジタルカメラを駆使して長女レイチェルの結婚式当日までの三日間を近年挑戦しているドキュメンタリーの手法を取り入れてリアルに映し出し、バックマン家のホームビデオという感じで撮った。

タイトルから考えると、ローズマリー・デウィット扮するレイチェルが本作の主人公だと思えるが、あくまでも主人公はアン・ハサウェイ扮するキムだ。現在、もっとも良い活躍ぶりが目立つハサウェイがこれまでに演じたことのないキャラクターに挑戦し、役者として新境地を開拓した。そして、アカデミー賞の主演女優賞にもノミネートされたのである。

キムはドラッグ中毒でつねに煙草を吸いまくり、ついつい汚い言葉を発してブチギレしたりする。レイチェルの結婚のために集まってきた人々とのディナーの席では、ピリピリしているかのような表情を魅せる。これが、緊迫感を醸し出し、観る者に気を掛ける。挙句の果てには、レイチェルと激しく口論し、実母アビー(デブラ・ウィンガー)にトラウマ的な過去の出来事の件で突っ掛かって顔面に一発喰らわされて喚き散らしたりする。このような描写から、バックマン家が崩壊していたこと、今となっても過去の傷が癒えずに家族間に不協和音を奏でていることが十分に伝わってくる。

家族の問題を描く一方でレイチェルの結婚を祝うパーティー描写がよく観られ、これが実に楽しさ一杯に描かれているのが好ましいポイントだ。大勢のミュージシャンが歌い、演奏し、ダンスする。劇中で描かれる家族問題の深刻さや殺伐さを大いに和らげ、観る者を安心させると同時にしっかりと楽しませてくれる。

【75点】

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2009年2月 5日 (木)

ラスト・アメリカン・ヒーロー

“暴れん坊レーサー”と称された伝説的レーサー、ジュニア・ジョンソンの青年時代を描いた青春系スポーツ作品。原作は、ニュージャーナリズムの旗手、トム・ウルフが雑誌「エスクァイア」に執筆していた「ジュニア・ジョンソンこそアメリカ最後のヒーローだ!」。

ジュニア・ジャクソン(ジェフ・ブリッジス)は、父が密造するウイスキーを車で配送することが日課である。連日、パトカーの追跡を逃れているうちにドライビングテクニックを上達させたジャクソンは、父が逮捕され、金が必要になったことがきっかけでデモリション・ダービーに出場し、賞金を獲得する。さらに賞金額が多いストック・カーレースに出場し、次第にレーサー稼業へとのめり込んでしまう。

ジュニア・ジャクソンをアメリカンヒーローというよりもアウトローヒーローとして描いている感じが強く、一匹狼的なカッコよさが魅力的だ。組織や規制されたルールを嫌い、自身の信念を貫いてレースに挑む勇猛果敢な男を好青年らしい顔立ちのジェフ・ブリッジスが好演。

連戦連勝するジャクソンは、コルト自動車の社長バートン(エド・ローター)に目を付けられ、スポンサーとしてバックアップすると言われるが、これを拒否する。だが、結局は彼の求めに応じてレースに出場するが、いざハンドルを握って車を走らせると彼のアドバイスを無視し、己の信念に従って我が道を爆走する。このラストのレースシーンでもレースの面白さを追求すると同時にジャクソンの一本木な性格をしっかりと描いている。本作で描かれているジャクソンの姿は、男ならついつい憧れてしまうだろう。

主題歌は、ジム・クロウチが歌う「アイ・ガッタ・ネーム」。劇中で使用される音源は、レコード版とは異なり、未だディスク化されていない貴重音源である。特にオープニングで映し出されるノースカロライナの風景とアコースティックの音色が見事にマッチしており、ノスタルジックな雰囲気を存分に醸し出していて非常に印象的だ。

【70点】

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2008年7月14日 (月)

レッドライン

不動産金融業で成功したダニエル・サデックが自身のポケットマネーとコレクションしている高級車を投じて製作したカーアクション映画。

歌手志望の美女ナターシャ(ナディア・ビョーリン)は事故死した親父譲りの抜群のドライビングテクニックを持っているが、親父の事故死が原因でレーサーだけはなりたくないと強く思っている。だが、違法なカーレース賭博に興じる金持ち男連中の一人であるインフェイス(エディ・グリフィン)に腕を買われたナターシャは、危険な世界へと巻き込まれるハメとなる。

カーマニアにはたまらない数々の高級車、舞台となるアメリカ西海岸、BGMの殆どがヒップホップ系という具合に『ワイルド・スピード』シリーズを意識した作風となっている。見せ場のカーチェイスはCGに頼らず、実際のスタントだけで描いており、これが売り物とされている。スピード感と迫力を追求し、画面分割等を駆使したりと拘った魅せ方をしていて普通に面白いとは思えるものの、本作以上に面白いカーアクション作品は他にも多く存在するため、少々物足りないと思える。古き良き時代のアクション映画のような手作りの良さと工夫を施していることに対する努力は大いに認めたいが、ご都合主義の甘くてぬるい脚本が大きなマイナスポイントとなっているので残念だ。

アクション、水着姿のセクシー美女が大挙登場、上映時間95分、有名と言えるほどのスターの出演はなしという具合にB級感覚は本格的。そんな本作を楽しむには、細かいことを考えず、最初からB級娯楽アクション作品として単純な気持ちだけで観ることをオススメしたい。そうすれば、普通に面白いと思えるだろう。

本作は、『ワイルド・スピード』シリーズを超える作品と宣伝しているが、明らかに『ワイルド・スピード』シリーズを下回っている。出来が悪くてもなお可愛いというが、そんな一言がお似合いの作品だ。

【45点】

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2008年7月 8日 (火)

ローリング・サンダー

ベトナム戦争で8年間の捕虜生活から帰還した空軍少佐レーン(ウィリアム・ディベイン)は、自身に贈られた銀貨を狙ったメキシコ人窃盗団に右手首を粉砕された上に妻子を殺害される。堪忍袋の尾が切れたジョニーは、かつての戦友ジョニー(トミー・リー・ジョーンズ)とともに復讐するべく敵地に乗り込む。

本作は、脚本のポール・シュレイダーが『タクシー・ドライバー』(76)同様のベトナム戦争後遺症をネタにしながらも自身のお気に入りである日本の任侠ヤクザ映画のテイストを踏襲したバイオレンスアクション作品。

ウィリアム・ディベインが度胸の据わった寡黙な男を好演。作品そのものがドライで静寂なタッチで描かれていることが多いが、時にはレーンの激しいアクションが観られたりという具合に静と動を巧く描き分けている。耐えに耐えたレーンが怒りを爆発させて敵に立ち向かうという展開は、まさに鶴田浩二、高倉健、若山富三郎らが活躍した東映の任侠ヤクザ映画そのものだ。グラインダーで砥ぎすまされた義手の爪と銃身を切り詰めたショットガンを武器に戦友ジョニーとタッグを組んでエルパソの売春宿に潜伏している窃盗団を蹴散らしに向かうクライマックスでバイオレンスアクションとしての面白さが一気に大爆発する。手応えのある強烈なバイオレンス描写はまさに上出来であり、観る者の気分をスカッとさせる。

クエンティン・タランティーノ監督にとっては、何度も繰り返して観たというほどの大のお気に入りの作品であり、彼が創立した配給レーベルの社名は本作からそのまま頂いたものであると同時に作品そのものも本国でリバイヴァル上映させた。

ちなみに監督のジョン・フリンが二年後に製作したジャン=マイケル・ヴィンセント主演作『摩天楼ブルース』(79)も本作と同趣向のテイストの作品である。

アメリカの寡黙な男もやはりかっこよく、男性の男心をしっかりと揺さ振らせてくれる。本作のウィリアム・ディベインは、鶴田浩二、高倉健、菅原文太、渡哲也らとかなり良い勝負をしている。個人的には、アメリカン男気系アクション映画スターのチャールズ・ブロンソンと競演して寡黙演技合戦をやって欲しかった。

【70点】

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2008年6月14日 (土)

ラスト・ラン 殺しの一匹狼

逃走専門ドライバーのハリー(ジョージ・C・スコット)は、8年間のブランクを経て最後の大仕事としてある組織の秘密を知る若者リカルド(トニー・ムサンテ)とその情婦クローディ(トリッシュ・バン・ディバー)を逃走させるという任務を遂行する。

とにかく地味なイメージが強い作品であるが、愛車(BMW)を念入りに手入れするハリー、リカルドを護送車から脱走させる際に観られるトラックの爆破、メインの見せ場となるBMWとジャガーのカーチェイス、サイケデリックなムードで描かれるリカルドとクローディのベッドシーン、生意気すぎるリカルドを軽く痛めつけるハリーといった個々での印象的なシーンがしっかりと並べられている点は、素直に良いと思う。それにしても売り物であるカーチェイスが盛り上がりに欠けるという点は、かなり致命的なダメージだと断言できる。誠に残念な結果だ。

ジェリー・ゴールドスミスによる音楽が作品のムードを巧く引き出していて良い。テーマ曲は、息子を亡くした上に妻に逃げられた中年男ハリーの哀愁を漂わせる。ラストのアクションシーンで使用される躍動感を感じさせる軽快なBGMは、サスペンスの雰囲気をしっかりと醸し出し、このアクションシーンをしっかりと盛り上げている。音楽に関しては高い水準を誇っている。

中年男ハリーの悲哀な末路が忘れられないB級カー・アクション作品だ。

【45点】

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2007年12月28日 (金)

リトルトウキョー殺人課 (日本未公開)

ドラッグのルートを拡大させるべくロサンゼルスの日系人街リトルトウキョーにヨシダ(ケイリー=ヒロユキ・タガワ)率いる日本の暴力団“鉄の爪”が進攻。市警のアジア特捜隊に所属する刑事ケナー(ドルフ・ラングレン)とジョニー(ブランドン・リー)はタッグを組んでヨシダを追う。

とにかく見せ場となるアクション描写が満載で存分に楽しめる。銃撃戦、ドルフ・ラングレンとブルース・リーの実子ブランドン・リーという肉体派B級アクションスターによる格闘シーン、カーチェイス、大爆破は迫力満点で観る者を飽きさせないように工夫が施されている。B級アクションを得意とするマーク・L・レスター監督はやはり見せ場作りに長けており、これぞ職人芸という感じだ。アクションだけでなく、女性の裸体がチラホラと観受けらたりとセクシーサービスもしっかりと取り入れられていることや単純明快なストーリーという部分を加えると本作はまさに娯楽映画の王道であることも頷ける。

アクション以外の大きな見所となるのがやはり“間違いすぎた日本の描写”である。まずは、リトルトウキョーの娯楽レジャー施設“盆栽クラブ”。聞いただけでも思わず鼻で笑ってみたり吹き出したりするほどのおバカで可笑しい名称は、忘れることができないほどの強いインパクトがある。そして、そこで行われているのはキックボクシング賭博、女相撲、刺身女体盛り。これらを観ていると実にツッコミを入れたい気持ちにさせてくれる。他にも逮捕された鉄の爪組員は、取調べの際に自ら首を骨折させて自害し、ティア・カレル扮するミナコは切腹しようとする前に妙な儀式を行っていたりととにかくクレイジーであり、コメディー作品を観ているような気にさせられる。間違っていない描き方は、エンコ(指)詰めのみである。

ドルフ・ラングレン扮するケナーは、日本育ちということで日本語を話しまくり、間違ってはいないもののこれがまた笑いを誘い出す。だが、鉄の爪組員の日本語は聞き取りにくいものが多く、ツッコミを入れたくなる。中でもケナーが黒い袴と陣羽織に“闘魂”の文字が刺繍された日の丸鉢巻を巻いて刀片手にヨシダと闘うラストは、クレイジーのレベルをより一層ヒートアップさせた。とにかく何から何まで強烈なインパクトを与えるトンデモナイB級娯楽アクション作品だ。

上映時間は70分強。それにこのような内容だからアクション映画ファンだけでなく暇すぎる方々やヘンな映画がお好きな方々にも最適だ。本作が劇場公開されなかった原因は、間違いすぎた日本の描き方という見解が多い。

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